君が変わったあの日から。

朱雨

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昔の話

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「おい、デブ!」



「おい、トントン!」




僕は昔、虐められていた。
体型と頭の悪さ、運動神経が壊滅に悪かった僕を男子の中でいじめない方が可笑しい話だ。




「おい、トントン!
お前の教科書見当たらねーぞ!忘れてんだろ!早く職員室言って報告してこい!」




この子は宮戸みやとくん。
僕を虐めている主犯格の宮戸くんは成績優秀、顔面偏差値高めでなんと言っても足が速いことで凄くモテる。

とにかくモテる男子は男子からも女子からも好かれる。



そんな彼に虐げられ嫌われる僕の事をクラスの皆も一緒に嫌う。




「そ、それは宮戸くんが隠して…」


「はぁ!?俺が隠すわけねーじゃん!早く行ってこいよ!」



うぅ…。

僕は泣き虫だから、怒鳴られたりするとすぐに泣く。
だからこの場で泣くことなんて珍しくも何ともなかった。




「あ、宮戸。またトン泣いたよ。」



「こいつまじうるさいんだけど。誰か黙らせろよ。」





宮戸くんの取り巻き2人が僕の腕を押さえつけ、身動きの取れないようにする。

また始まった。



「や、辞めてよぉ…宮戸くん、ごめんなさいぃ…ごめんなさい……。」



僕は意地のない声で泣きながら宮戸くんにそう訴える。


宮戸くんは辞めてくれない。

どう足掻いたって宮戸くんは止めてくれない。





宮戸くんの拳が、足が僕の体に当たる度僕は号泣し許しを乞う。




「宮戸ぐん、ごべんなざいぃ…!ゆるじて!ゆるじてぇぇ……!」



「うるせー豚野郎!」



笑いながら僕を虐める彼の顔を僕は一生忘れないと思う。

悪意のある人間がどれほど凶悪か、狂気に満ちた人間の顔を僕は一生忘れられないと思う。




「センセー!こっちです!泣き声が聞こえるんです!!!」




大きな声でそう先生を呼ぶ声が廊下から聞こえた。
そう聞こえた瞬間、宮戸くんを含めクラス全員が硬直した。

暫し沈黙が過ぎ焦るかのように宮戸くんは僕に脅しを掛ける。




「おい、トントン。いいか?先生に言ってみろ。もっと痛い目にあうからな。」



言われなくても言わないつもりだ。
こんなこと、親にでも知られたら一生顔向けできない。


僕が必死に頷くと宮戸くんは安心したのかふっとため息をついた。




「おい、誰だ?泣いてるやつ。」




担任の先生がドアから顔を出した瞬間、クラス中に少しの緊張が走る。




「歩ですよ。歩が教科書忘れたみたいで泣いてるんですよ。」


宮戸くんは一瞬で優等生の顔に取り替えた。
…僕は宮戸くんのそういう所が嫌いだ。




「あー、歩か。」


先生は僕の肩に軽くてを置き哀れそうな目でこちらを除く。



「歩、いいか?これで教科書忘れ何回目だ?」



…全部僕のせいじゃないのにな。



「コラ、また泣き出しそうになってるぞ。歩そんなに怒られるのが嫌なら忘れなきゃいいだろ?
毎日、家に帰った後に明日の準備をしなさい。そしたら忘れなくなるから。」




…いつもそうしてます。
先生も、僕を分かってくれないんだ。


僕はここにいる全員が敵に思えて怖くて震え、また泣き出した。



「あー…歩。もう今日は勘弁してやるから。ほら泣き止め。」



僕の、僕のせいじゃないのに…!!




僕は先生の手を振り払い教室を飛び出した。
行く宛てなんてどこにも無いし向かう先も何も決めずに飛び出した。



先生も宮戸くんもクラスの奴らもみんなみんな、死んじまえ!



「僕は悪くない…!!」



「わっ!!」



渡り廊下の隅でそう叫ぶと後ろから可愛らしい声が聞こえた。

人、居たんだ。



僕は叫んだことを聞かれたと思うと凄く恥ずかしくなって後ろを振り向けなかった。
できるなら知らない顔をしてこのまま歩き続けたい。




「いたた…。」


「あの、ごめんなさい。大丈夫ですか?」



僕は腹を括り女の子に手を差し伸べた。
女の子は僕の手を握り返し、立ち上がった。




彼女は、綺麗だった。



小学生のはずなのにクラスメイトの女子や高学年の女子にもこんなに可愛い子は居ない。
そう断言出来るほどに彼女は綺麗だった。

透き通るような白い肌、クリっと開いた大きな目。


僕が彼女に見とれていると彼女は不思議な顔をこちらに向けて居ることに気づいた。


あっ!



「あの、ご、ごめんなさい!
あっ…さっきコケてたけど怪我とか、大丈夫…?」



「うん、大丈夫。そっちこそ色々と大変そうだけど大丈夫?」



え?



「だって目腫れてるし、鼻声出し、さっき虐められてたし。」



僕の顔がカァッと赤くなるのが分かった。
み、見られてたんだ…!



僕が凄く恥ずかしがっていると女の子は笑い始めた。




「な、何笑ってるんだよ。」



「いや、うん。ふふ、貴方ちょっと可笑しいのね。
私にお礼とかないの?」


彼女は未だニヤケ面のまま僕にそう尋ねた。
お礼?何故お礼をしなきゃいけないんだ?

さっきのことはちゃんと謝っただろ。




「えっ、私の声覚えがない?」


覚え?


「んんっ、あーあー。」


彼女はスーっと息を吸い込み大きな声で叫び出した。


「センセー!こっちです!泣き声が聞こえるんです!!!」




あっ。



「君、あの時の!」



「逃げるわよ!!」


えっ!


彼女は僕の手を握り、走り出した。



「な、なんでだよ!」



「なんでって、あんな大声だしたら気づかれるに決まってるじゃないのよ。」



さも当然そうにそう述べるけど、大声は別に出さなくったって良かったじゃないか。



「君が勝手に大声だしたんじゃないか。」


「あら、別に貴方だけ置いていっても良かったよ?」


僕を巻き込むなよっ!



「後、君じゃないわ。私ミナ。神戸美奈こうべみなだから。そう呼んで!」



ミナちゃん。
僕はその名前を心の奥底な刻んだ。絶対忘れないぞ…。



「貴方は?あなたの名前は?」


僕?

「僕は、た、高田遥たかだはるか。」


「そう、遥ね。これからよろしく!」


ミナちゃんは笑顔で僕に手を差し伸べた。



僕らの始まりはここからだった。


この時、僕がミナの手を取らなければ全ての事が丸く納まったのに。
だけど多分、僕は2回目も3回目もきっと君の手を取ってしまう。



僕は君を好きだから。
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