死にたがりの双子を引き取りました。

世万江生紬

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双子と家族のはじまり

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 双子と表面的には家族でいると約束してから二週間、双子の死にたがりの頻度は減ったように思う。でも無くなったわけじゃなくて、今でもちょくちょく自殺を止めている。朝シーツで首を吊る、昼俺の仕事中飛び降りる、夜風呂で手首を切る、これを止めるのがもはやルーティンだ。ルーティン化してるから成功することもないんだが、不思議な話これがあるから俺と双子のコミュニケーションになってる。

「零、お風呂沸いた。」

陽人が風呂の準備が出来たと報告してくる。これもこの二週間で変わったこと。双子は全部俺の世話になるのが癪だと言って家事の手伝いをするようになった。風呂の準備、部屋の掃除、飯の用意、正直助かってるのは助かってるんだが、同時に死にたがりも発動するので止めるのに結局仕事が増えるなんてこともある。

「零、スマホ鳴ってます。いいんですか?」

月人が俺のスマホを持ってくる。そういえば双子の俺の呼び方も変わった。ちょっと前までは「ねえ」とか「あの」とかで呼んできてたから、強制的に零って名前で呼ばせるようにした。そのおかげなのかちょっとだけ双子と距離が近づいたように思う。俺のふざけた態度に陽人はキャンキャンと怒ることが増えたし、同時に笑顔も見える様になった。陽人が笑えば月人も笑うから、月人の笑顔も増えた。月人は相変わらず敬語のままだけれども。

「月人、スマホサンキュ。でも大した用事じゃねぇから無視でおっけー。」

「相変わらず軽いですね...。なんか女遊びしてるチャラ男みたいですよ。」

「めざといな、昔そんな感じだったわ。でも今はそんなことどうでも良くて、陽人月人、買い物行くぞ。」

「「買い物?」」



 「うわあー疲れた!」

 帰ってきた瞬間陽人が大きな声を上げる。まだ玄関の扉閉めてないからやめてほしいんだがな。

「重いです...陽人早くどいて、荷物が置けない。」

今日買ってきたものは双子の中学入学のための備品とか制服とか諸々。一日で全部済まそうと横着したらすごい量になってしまった。すごい額にも。世の双子を育てる親って大変なんだな、ほんと。

「なんで今日一気に買おうと思ったんですか。無茶がすぎますよ。」

「すまんすまん、俺の仕事も色々あるから一日で済ませたかったんだよ、実際何とかなったし。そんなことよりさ!せっかくだし制服、着てみろよ。写真撮ってやる。」

「えぇ、めんどくさいな...。」

ぶちぶち文句を言う陽人を無理やり着替えさせ双子を隣に立たせる。瓜二つの双子が同じ制服を着ていると本当に見分けが付かない。やばいな、これ入れ替わりごっことかされたらマジで答えられないと思う。

「零ってさ。」

「ん?」

陽人が少し真面目な口調で俺に話しかける。俺は二人の写真を撮っていたスマホを降ろし陽人の顔を見る。

「こういう家族っぽいこと、やりたがるよね。」

「...ま、な。俺の実際の家族とは出来なかったし。出来なかったから新しく出来た家族とはやっとこう的な。」

こういう話はちょっと喋りづらい。俺自身が何とも思ってなくても聞いた側は辛そうな顔をするから。でも双子は少し驚いた顔をしていた。

「なんか意外。実際の家族とだってこういうのしたがらないやつ多いんだよ。零飄々とした態度のくせにこういうの好きとか、ちょっと笑える。」

「なんというか、キャラ崩壊って感じです。零のようなタイプの人は『そういうのいいから』とかって突っぱねるそうですから。」

「...そうかい。さ!写真も撮ったし着替えろ。飯にしよーぜー。もう今から作るのめんどいから宅配にしようかなー。」

「えっ!じゃあボクピザ食べたい。チーズいっぱいのやつ。」

「オレもそれがいいです。」


 一緒に暮らす双子は死にたがりで、見張って止めないと自殺する。それでも引き取った日に比べたら笑って怒ってわがままも言う。俺のことを信じてないし、心の底ではどう思ってるのか知らないけど、表面的にでも家族でいてくれる。そして何より俺と一緒にいてくれる。俺にはそれで十分、今のままでも幸せだと思う。
 でも俺と双子はこれからもっと家族になっていく。
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