ミソフォニアで苦しい話

世万江生紬

文字の大きさ
1 / 20

2022年4月1日

しおりを挟む
 今までにも、何かがおかしいと感じることはありました。私がおかしい?私が変なの?なんで?人間、何故か理由が分からないものに恐怖や不安を感じると聞いたことがありましたが、この時の私はまさにそれだったと思います。

 私の名前は西野優と言います。本名ではありませんが、ここではそういう名前にします。大学4年生になったばかりの21歳です。私は2022年4月1日に「ミソフォニア」という診断をされました。この日から、私が感じてきた不安や不満を記し、同じようにミソフォニアで苦しんでいる人に、助けてあげることは出来ないかもしれなくても同じように苦しんでいる人もいる、だから一人じゃない、ということが少しでも伝わればいいなと思っています。

 何かがおかしいと気づいたきっかけは弟の鼻の音でしょうか。弟は昔、鼻を骨折したとかでよく鼻でプルルンッみたいな音を鳴らしていました。私はそれがずっと不快で、口に出して弟に「やめて」と言っていました。しかし弟がやめることは無く、両親からも「別に気にならないよ?気にし過ぎじゃない?」と言われました。初めは私も気にしすぎだと思っていました。でも一年以上も続けば、さすがの私も嫌気がさします。弟にも少しきつく当たるようになっていました。

「ちょっと!もういい加減にして!うるさいんだよその鼻の音!」

「しょーが無いじゃんやめられないんだから!優姉ちゃんがおかしいんじゃないの!?精神科行け精神科!」

この時の私は弟の言葉にシンプルに傷ついていました。「精神科へ行け」という言葉は、本心から心配してかけたものならまだしも、この流れでのものなら「お前は頭がおかしい」と言われているように感じたのです。
ですが三月のこと、私は必要以上に色々な音が不快に聞こえることを自覚しました。今まで何となく生活の中でイライラと感じていたものが、音によるものだったのです。弟の鼻の音はもちろんのこと、食事中の咀嚼音、家族の咳やくしゃみ、バリバリと音のするお菓子の封を開ける音、そう言った何気ない音を不快に感じていたのでした。初めはそれを自覚したところで、家族にやめてというわけにもいかず、たまに漏らしてしまっても「気にし過ぎ」と分かってもらえず、とにかく自分の気持ちに共感してもらえず辛かったです。しかしあまりにも「気にしすぎ」の範疇を超えていると思った私は、さすがに何かあるのかもしれない、と感じ、まずYahoo知恵袋で相談してみることにしました。結果お返事を書いてくれた方の中に、「ミソフォニア」かもしれないと書いてくれた方がいました。聞いたこともない病名ですし、とりあえず調べました。すると、そこに書いてあることはまさに私の感じている症状そのものが書かれていました。

『ミソフォニアとは、特定の音に対して逃避願望や攻撃的衝動の伴う強い否定的な反応(嫌悪、怒り、憎しみなど)を示す障害です。ミソフォニアの症状を抱える人にとって、その音は決して容易に我慢できるようなものでは無く、何度も音が繰り返されればその場から逃げ出したくなります。
トリガーとなる音の例「鼻すすり」「咀嚼音」「咳払い」「咳」「くしゃみ」「歯磨きの音」「タイピングの音」
これらの音は「人が日常的に発する音」や「反復的な音」という特徴があります。そのため、ミソフォニアは日常生活に著しい影響を与えます。』
日本ミソフォニア協会(https://misophonia.support/miso)

これだ、と思いました。そしてこのミソフォニア、診断するなら精神科や心療内科とのことだったので、初めて行く精神科クリニックでドキドキしながら診察されると、そこでは「軽度の不安障害」と診断されました。私は目の前が真っ暗になった気分でした。せめてミソフォニアだと診断されれば、私はそういう病気なのだと開き直ることも出来たかもしれません。家族に相談も、協力を仰ぐことも。ですが私の言った精神科クリニックでは、「普段ストレスを感じることはあるか」「友達と遊んでいて楽しいか」「学校生活を満喫しているか」などの色んな質問に答えた後、異常はないけど強いて言うなら軽度の不安障害かな、と言われました。ですが私も、ネットで調べた確証があってここに来たのです。否定されるならまだしも、それに触れられないのはおかしい、と声を上げます。

「あの、私ネットですけど色々調べて、ミソフォニアなんじゃないかと思ってるんですけど...。」

「?二ソ?ミソ、フォニア?んん~...?」

その時、先生の反応に違和感を覚えました。そして診察も終わりクリニックを出た私はすぐにもう一度ミソフォニアについて調べました。すると、

『「音の憎しみ」を意味するミソフォニアという言葉は2001年に生まれました。日本ではまだあまり認知されていません。』

と言った文面が多く出てきました。そこで、もしかしたらこの精神クリニックの先生はまだこの病気を認知してなかったんじゃ?と思いました。お医者さんを疑うのか、とも思いましたが、この時の私はとにかく自分の納得のいく結果を出したかったのだと思います。それほどまでに辛かったのだと。そして別の心療内科の先生に相談すると、「ミソフォニア」だと診断されました。私は、病気だと診断されているにも関わらず、感じた正直な感情は「良かった」でした。今まで何度音が不快だと言っても「気にしすぎ」としか言われず、分かってもらえないことを辛いと感じていましたが、これからはミソフォニアだから音が不快だということが出来ます。家族ももう気にしすぎとは言わないだろう、そう思っていました。
しかしこれから、また別の苦しみが待っているとは、この時の私はまだ思っていませんでした。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

真面目な女性教師が眼鏡を掛けて誘惑してきた

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
仲良くしていた女性達が俺にだけ見せてくれた最も可愛い瞬間のほっこり実話です

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

『大人の恋の歩き方』

設楽理沙
現代文学
初回連載2018年3月1日~2018年6月29日 ――――――― 予定外に家に帰ると同棲している相手が見知らぬ女性(おんな)と 合体しているところを見てしまい~の、web上で"Help Meィィ~"と 号泣する主人公。そんな彼女を混乱の中から助け出してくれたのは ☆---誰ぁれ?----★ そして 主人公を翻弄したCoolな同棲相手の 予想外に波乱万丈なその後は? *☆*――*☆*――*☆*――*☆*    ☆.。.:*Have Fun!.。.:*☆

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

感想欄を閉じます

有栖多于佳
エッセイ・ノンフィクション
感想欄に悪口を書く人がいるので、閉じる決意が出来ましたと言う話です。

処理中です...