2 / 23
一学期
少女漫画は少女だけが読むものじゃない
しおりを挟む
今日も帰り道、隣を歩く緒方優羽はちょっと憤った様子で口を開く。
「少女漫画ってほんとに物申したいこと多い!」
どうやら少女漫画は物申したいことが多いらしい。そういえば彼女はアニメや漫画をこよなく愛すオタクだが、少女漫画だけはどうしても好きになれず犬猿してるらしい。俺も少女漫画は読まないけど、物申すとは。
「まず、多分舞台は東京が多いと思うんだけど、東京ってそんなに狭いのかってくらいすぐ会うよね。会いたいと思えば街中で会えるし、探そうと思えばすぐ見つけられる。本人同士が会えなくても助言してくれる友達とかに偶然会うじゃん。そんなわけあるかいってね。」
それはメインの二人が会えないと物語が進まないからではないだろうか。もしくは落ち込んでいる主人公を誰かが励まさないと話が展開しないからじゃないだろうか。
「あー、まあ東京なら会うんじゃない?」
「この辺みたいな田舎じゃあ、まずばったり会うなんて無理だし、そもそも落ち込んでる人みんながタイミングよく励ましてもらえる訳ないよね。」
「なんと言うか、ドライだな。」
だからこそ女子はキュンとするし、夢を見るものなんじゃないんだろうか。彼女はそういったキュンとする機能壊れてんのかな。
「言いたいことは他にもあるんだよ。少女漫画ってリアルならセクハラに当たること平気でするよね。出会った初日でキスしてくるとか、ありえないし、落ち込んでるからって抱きしめてくるのは本当に遠慮したい。」
「...分からなくはないけど、そこが少女漫画のキュンとするポイントじゃないの?」
少女漫画の醍醐味みたいなところもあるだろうし、こういうヒーローに惹かれるのが女子だろう。男でもキュンと来ることもあるそうだし、彼女はちょっと現実的すぎる。
「むー。現実的に考えすぎってこと?じゃあ少女漫画あるあるの、やたら自分勝手な奴が俺様キャラぶっかましてるのも、ヒーローに対してツンとした態度をとるヒロインに『面白れぇ女』って上から目線で言ってくるのも、ヒロイン何かあるとすぐ涙目になってネガティブに考えだすのも、現実的に考えすぎってこと?」
よくそんなに具体例が出てくるもんだ。というかそんなに具体例出てくるなら、結構な量の少女漫画読み込んでるだろ。好きになれないんじゃなかったのか。
「まあ、そうだね。あくまで二次元、フィクションだからこそ楽しんで読めるってもんじゃないの。」
俺の正論に不満丸出しで睨んでやがる。彼女は特別美人ってわけでもないけど、不細工ってわけでもない。むしろ飾らない素朴な可愛らしさが男子からはちょっと人気だったりする。今も会話の中で表情がコロコロ変わって、不満そうに睨んでる顔もかわいくないこともない。言動がアニメ関連じゃなくて普通に可愛らしいものなら、それこそ少女漫画のヒロイン並みにアオハルしててもおかしくないのに。
「じゃあこれはどう!?私が少女漫画で一番物申したいあるある!一回振ったくせに最終的にはくっつく謎システム!」
「というと?」
「ヒロインがヒーローを好きになって告白します。でもヒーローは事情やらなんやらで振ります。ヒロインも分かったと身を引き、なんやかんやで別の男と付き合ったりします。でもヒロインが別の男と仲良くしているのを見て嫉妬とかなんやらで強引な態度をとるヒーロー。なんやかんやでヒロインもやっぱりヒーローのことが好きってなって、付き合ってた男を振ってヒーローと結ばれる。」
詳し。細か。絶対固有の作品のストーリーだろこれ。しかも一巻から最終巻まで見てるかのようなストーリー展開だったぞ。少女漫画読まないんじゃなかったのか。
「しかもね、その二番目の男はヒロインの背中押したりする。意味が分からない。付き合ってる相手が自分以外の人のことが好きだからって別れることを了承してあげる上に背中まで押してくれるってどういうことよ。世の中そんな人間出来た男がいるのか。」
今サラッと全国の男を敵に回したような気がしなくもないけど、気持ちは分からなくもない。確かに俺も同じことやられたらこんな出来た対応とれるとは思わないな。
「まあ当て馬の所以ってやつなんだろうね。でもここで当て馬キャラの人気が高まったり、ヒロインを応援する声が上がるんじゃないの。少女漫画の一番の盛り上がりみたいなところもあるし。」
「...いっそ当て馬とヒーローがくっつけば丸く収まるのに...。」
ジャンル変わるだろうが。
「やっぱイライラしちゃう少女漫画よりBLだね。BLにすれば全然イライラしないもん。」
彼女はオタクでありつつ腐女子でもあるから、恋愛系の話をすれば大体BLの話に置き換えられる。アニメの話題は対応できるけど、腐男子でもゲイでもないただの男にBLの話を振るのはやめてほしいんだがな。とか思っていたらもう彼女と別れる交差点まで来ていた。
「お、もう交差点か。じゃあ、また明日ね。」
彼女が笑顔で手を振る。少女漫画に対する鬱憤を晴らせて機嫌がいいんだろう。おれも「じゃあね」と返事をして帰路につく。押していた自転車にまたがり、走り出した俺の表情は少しだけ緩んでいた。
「少女漫画ってほんとに物申したいこと多い!」
どうやら少女漫画は物申したいことが多いらしい。そういえば彼女はアニメや漫画をこよなく愛すオタクだが、少女漫画だけはどうしても好きになれず犬猿してるらしい。俺も少女漫画は読まないけど、物申すとは。
「まず、多分舞台は東京が多いと思うんだけど、東京ってそんなに狭いのかってくらいすぐ会うよね。会いたいと思えば街中で会えるし、探そうと思えばすぐ見つけられる。本人同士が会えなくても助言してくれる友達とかに偶然会うじゃん。そんなわけあるかいってね。」
それはメインの二人が会えないと物語が進まないからではないだろうか。もしくは落ち込んでいる主人公を誰かが励まさないと話が展開しないからじゃないだろうか。
「あー、まあ東京なら会うんじゃない?」
「この辺みたいな田舎じゃあ、まずばったり会うなんて無理だし、そもそも落ち込んでる人みんながタイミングよく励ましてもらえる訳ないよね。」
「なんと言うか、ドライだな。」
だからこそ女子はキュンとするし、夢を見るものなんじゃないんだろうか。彼女はそういったキュンとする機能壊れてんのかな。
「言いたいことは他にもあるんだよ。少女漫画ってリアルならセクハラに当たること平気でするよね。出会った初日でキスしてくるとか、ありえないし、落ち込んでるからって抱きしめてくるのは本当に遠慮したい。」
「...分からなくはないけど、そこが少女漫画のキュンとするポイントじゃないの?」
少女漫画の醍醐味みたいなところもあるだろうし、こういうヒーローに惹かれるのが女子だろう。男でもキュンと来ることもあるそうだし、彼女はちょっと現実的すぎる。
「むー。現実的に考えすぎってこと?じゃあ少女漫画あるあるの、やたら自分勝手な奴が俺様キャラぶっかましてるのも、ヒーローに対してツンとした態度をとるヒロインに『面白れぇ女』って上から目線で言ってくるのも、ヒロイン何かあるとすぐ涙目になってネガティブに考えだすのも、現実的に考えすぎってこと?」
よくそんなに具体例が出てくるもんだ。というかそんなに具体例出てくるなら、結構な量の少女漫画読み込んでるだろ。好きになれないんじゃなかったのか。
「まあ、そうだね。あくまで二次元、フィクションだからこそ楽しんで読めるってもんじゃないの。」
俺の正論に不満丸出しで睨んでやがる。彼女は特別美人ってわけでもないけど、不細工ってわけでもない。むしろ飾らない素朴な可愛らしさが男子からはちょっと人気だったりする。今も会話の中で表情がコロコロ変わって、不満そうに睨んでる顔もかわいくないこともない。言動がアニメ関連じゃなくて普通に可愛らしいものなら、それこそ少女漫画のヒロイン並みにアオハルしててもおかしくないのに。
「じゃあこれはどう!?私が少女漫画で一番物申したいあるある!一回振ったくせに最終的にはくっつく謎システム!」
「というと?」
「ヒロインがヒーローを好きになって告白します。でもヒーローは事情やらなんやらで振ります。ヒロインも分かったと身を引き、なんやかんやで別の男と付き合ったりします。でもヒロインが別の男と仲良くしているのを見て嫉妬とかなんやらで強引な態度をとるヒーロー。なんやかんやでヒロインもやっぱりヒーローのことが好きってなって、付き合ってた男を振ってヒーローと結ばれる。」
詳し。細か。絶対固有の作品のストーリーだろこれ。しかも一巻から最終巻まで見てるかのようなストーリー展開だったぞ。少女漫画読まないんじゃなかったのか。
「しかもね、その二番目の男はヒロインの背中押したりする。意味が分からない。付き合ってる相手が自分以外の人のことが好きだからって別れることを了承してあげる上に背中まで押してくれるってどういうことよ。世の中そんな人間出来た男がいるのか。」
今サラッと全国の男を敵に回したような気がしなくもないけど、気持ちは分からなくもない。確かに俺も同じことやられたらこんな出来た対応とれるとは思わないな。
「まあ当て馬の所以ってやつなんだろうね。でもここで当て馬キャラの人気が高まったり、ヒロインを応援する声が上がるんじゃないの。少女漫画の一番の盛り上がりみたいなところもあるし。」
「...いっそ当て馬とヒーローがくっつけば丸く収まるのに...。」
ジャンル変わるだろうが。
「やっぱイライラしちゃう少女漫画よりBLだね。BLにすれば全然イライラしないもん。」
彼女はオタクでありつつ腐女子でもあるから、恋愛系の話をすれば大体BLの話に置き換えられる。アニメの話題は対応できるけど、腐男子でもゲイでもないただの男にBLの話を振るのはやめてほしいんだがな。とか思っていたらもう彼女と別れる交差点まで来ていた。
「お、もう交差点か。じゃあ、また明日ね。」
彼女が笑顔で手を振る。少女漫画に対する鬱憤を晴らせて機嫌がいいんだろう。おれも「じゃあね」と返事をして帰路につく。押していた自転車にまたがり、走り出した俺の表情は少しだけ緩んでいた。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
ト・カ・リ・ナ〜時を止めるアイテムを手にしたら気になる彼女と距離が近くなった件〜
遊馬友仁
青春
高校二年生の坂井夏生(さかいなつき)は、十七歳の誕生日に、亡くなった祖父からの贈り物だという不思議な木製のオカリナを譲り受ける。試しに自室で息を吹き込むと、周囲のヒトやモノがすべて動きを止めてしまった!
木製細工の能力に不安を感じながらも、夏生は、その能力の使い途を思いつく……。
「そうだ!教室の前の席に座っている、いつも、マスクを外さない小嶋夏海(こじまなつみ)の素顔を見てやろう」
そうして、自身のアイデアを実行に映した夏生であったがーーーーーー。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち
ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。
クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。
それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。
そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決!
その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる