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女子大生と居候達編(デュラハンと勇者)※コンドミニアム
勇者とそば前とアストリア・ロイヤルとお別れと
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「金糸雀殿、サキ。トーストが焼けたであるぞ!」
悪魔の侯爵デュラさんの朝は早い。コーヒーとトーストの準備をしてまだ眠そうな私とサキュバスのサキちゃんが目を擦りながら起きてくるのを笑って待っている。空気の入れ替えをして掃除の準備なんかを始めている。
お母さんか!
今日、デュラさんはサキちゃんに連れられてもとの世界に帰っていくわけだけど、今日は送別じゃなくて、もっと縁起のいい物を食べてもらおうと思ってる。
ここで問題です!
大晦日に食べる物といえば?
そば! はい、金糸雀さん正解です。えっ? お蕎麦でお酒? という事は日本酒で一杯? うん、それもいいわね。いろはさんに言って最高級の日本酒を持ってきてもらってもいいんだけど……
私はいつかデュラさんがいなくなる時に呑むお酒は決めてたの。お昼ご飯は私の特製チャーハン。
今日はお店が早く閉まるから当然早めに買い物を済ます。サキちゃんがお外に出られたらお買い物を一緒にしても楽しかったんだろうけど、扉から出ると元の世界に帰っちゃうから残念。
明日はお正月だけど一人のお正月なんて適当でいいわ。今日、最高の肴とお酒を飲んでもらってデュラさんには異世界でのいい思い出を作ってもらわなきゃ。
買うものは、簡単。かまぼこ、卵、蕎麦粉、お蕎麦。麺つゆ、以上!
あんまり遅い時間から始めたら二人にも悪いので夕方から私はお別れ会をする事にした。
「二人にはそば前で楽しんでもらおうと思います」
「そばまえでございますかぁ~」
「これまた聞いたことのない食べ物だ」
お蕎麦を待っている間にお酒を飲んで食べるおつまみだとかで、基本そばに使われる物しかないのよね。
まずは、
「いたわさです」
薄めに切ったかまぼこを山葵醬油で食べるおつまみね。そして本日のお酒は……兄貴の知り合いの誰かのボトルキープ! アストリア蒸溜社のアストリア・ロイヤル。かつてはお金持ちの象徴、今は値段が随分下がって4000円くらいのそこそこ高いボトル。
珍しい鳥居の形をしたボトルがお洒落よね。
「まずはアストリア・ロイヤルの水割りでお楽しみください」
ガチャリ。
あっ、そうだった……お酒飲み始めると誰か来るんだった。てっきりこの三人で呑むつもりだったから忘れた。
「ここはどこに来たりて?」
なんか、やる気のなさそうな女の子来たけど……えっ? デュラさんとサキュバスさんが絶望したみたいな顔をしている……
「精霊の声が聞こえたから面倒臭そうなので呼んでいる方向と真逆に向かえり、なんだかおもしろそうな所にでたりて候。勇者、不思議に思えり。魔物と人間が一緒、どういう事にて?」
可愛い声なのに全然、記憶に残らないような透明感のある声。彼女は一体? デュラさんが彼女の正体を明かしてくれる。
「……ゆ、勇者」
「デュラハン様ぁ、助けてくださいましー」
「えっと、いらっしゃい。家主の犬神金糸雀です」
じとっとした目で私とデュラさんとサキちゃんを見る勇者らしい女の子。彼女はゆっくりとその視線をいたわさとアストリア・ロイヤルに移す。
「それは食べ物なり?」
「えっと、いたわさと、ウィスキーだけど……一緒に食べます?」
「かたじけなし。いただけり!」
ということで急遽勇者ちゃんにもアストリア・ロイヤルの水割りを作ってあげ、警戒しているデュラさんとサキちゃんと共に、
「「「「乾杯!」」」」
アストリア・ロイヤルの香り、たまらない。なかなか手に入らない山崎にすごい近い味がするウィスキー。いまだにアストリア蒸溜社のフラッグシップだけあって裏切らないそのおいしさは、
「これは、なんと美味い!」
「美味しいですぅ」
悪魔の二人は感嘆。
「ふぅ、きついお酒だけどグット! お代わりを所望せり」
勇者ちゃんも気に入ったらしく、私は水割りを入れる。いたわさをつつきながら勇者ちゃんが、
「それにしても何故魔物が?」
「勇者よ貴様と同じだ」
「同じ?」
かくかくしかじかデュラさんは勇者ちゃんに状況を説明。アストリア・ロイヤルの水割りを飲みながら、
「なるほど、それは苦労せり!。ここは別世界と思えり。そして金糸雀は別世界の住人。通りで不思議かつ素敵な服を着ていると勇者理解せり!」
三本ラインのジャージが素敵な服……この勇者ちゃん、すごい嫌な予感がする。
「あのね勇者ちゃん。ここではみんなで楽しくお酒を呑むところだから、デュラさんやサキちゃんを……」
「皆まで言うなし。勇者分かってり」
そう言って勇者ちゃんはソファーの上に寝っ転がる。すごいなこの子、人の家なのに既に自分の家みたいにくつろぎ始めている。
そんな驚きの中、私は蕎麦粉を練って練って、そばがきを作った。なんとか葉っぱの形に整形し、
「はい! こちらはアストリア・ロイヤルのハイボールでお楽しみくださいね!」
三人が珍しいプルプルした食べ物にお箸を伸ばす。そしてこちらも山葵醬油で食べてもらう。
どれ、私も、
うん、これの味が分かる様になると本当に酒飲みになったなって思うわよね。子供の頃は何が美味しいのか分からなかったけど、これだけお銚子三本はいける自信があるわ。
「うまし! なるほど、魔物の二人は今日ここを去れり、うん。勇者は別に魔物を滅ぼすつもりはなき。というか別に魔王を討伐することにも興味なし」
凄い事勇者ちゃんが言いながらハイボールを飲んでる。デュラさんとサキちゃんは勇者ちゃんの言葉に、
「ならば何故、我らとあのような死闘を繰り広げたか! 貴様に屠られた同胞数しれず!」
「そうですよぉ~、私達からすればぁ~、ホラーですぅ」
そりゃそうか、魔物達からすれば勇者と名前を聞くと震え上がるような存在なんでしょうね。平和の為とか、勇者ちゃんにも理由はあるんでしょうけど、
「魔王を討伐すれば一生遊んで暮らせる事を王様が約束してくれた。だからクソ面倒臭いけど重い腰を上げた。でももう面倒になってきた」
そんな時、ここに迷い込んだらしい。そばがきを食べ終えたみんなの為に私が卵を四つ使った大きなだしまき卵を作る。これには大根おろしとポン酢で食べてもらいましょう。
「グラスが空いたらアストリア・ロイヤルのトゥワイスアップで楽しんでくださいね!」
だしまき卵、三人に好評だけど、特に!
「これ、美味しいですぅ~! 金糸雀様ぁ~、レシピを教えてくださいましぃ~!」
「いいけど、二人の元の世界で作れるのかな……なんか代用出来そうな書き方にしておくね」
だしまき卵に感動しているのはサキちゃんだけでなく、勇者ちゃんは一心不乱に食べている。よほど美味しいんだろう。口の周りに卵をつけてるので拭いてあげると、私の手を掴んで、
「金糸雀。勇者は金糸雀と結婚してもいいと思った」
「はは、勇者ちゃん女の子でしょ、じゃあみんなそろそろシメのお蕎麦茹でますね?」
そう、デュラさん、との別れの時が近づいてくる。最後はアストリア・ロイヤルのオンザロックで締めよう。茹で上げた麺を水にさらして四人分もりそばを作ると、チュルチュルと食べ方を教え、さぁ、未知との遭遇、盛りそばを心ゆくまで楽しんでください。
「そばは、長く生きて寿命を全うし、家運も末永く続くようにとの願いから、そばを食べるようになったらしいです。デュラさん、お元気で」
時は常に有限で、無限という言葉はあってもそれは存在しない。いつまでもいつまでもこんな時間が続くのだと思っていた。
食材もなくなり、残ったアストリア・ロイヤルはサキちゃんに渡して向こうでみんなで飲んでほしいと伝えた。サキちゃんに頭を抱えられたデュラさん、
別れの時が来た。
「金糸雀殿。我は悪魔。人間を殺し、滅ぼす事を命じられてきた」
「仕事だろうけど、ほどほどにね」
「そう、そこである。金糸雀殿は止めはせぬ、何かを常に分かったかのような金糸雀殿を見て、我もまた人を滅ぼす事への疑問を考えていた。我がこうなってしまったのもヤキが回ったのか、それとも……ここに来たのは何か宿命なのかも知れぬな。共に盃を持って人間と歩めるのやもしれぬ……と」
「うん。そうかもね」
「もはや我らに言葉は要らぬであろう。金糸雀殿。世話になった! 我はこの恩決して忘れぬ」
そう、デュラさんは涙を流したのだ。首だけのデュラさんが、ちょっとシュールで少しおかしかった。
会釈し、サキちゃんが扉を開けて去っていく。
「デュラさん!」
思わず呼んだ名前、バタムと閉じられた扉、もう二人は扉を開けてもそこにはいない。
私はいつの日かと恐れていたのかも知れない。悪魔だろうがなんだろうが、デュラさんは私の最高の飲み友だった。ぐっ、泣いちゃダメだ。
にしても……
「勇者ちゃんはいつまでいるのかな? 二人帰っちゃったけど......」
「ここは居心地がよき。しばらく滞在せり!」
ソファーの上で仰向けでそう言う勇者ちゃん、ふと思い出したように飛び起きると、彼女はとても愛らしく笑った。オレンジの髪をおさげにして腰に短剣。太陽のような美少女。そしてニート予備軍。
「えっ? 今なんて?」
「自己紹介がまだだった。ミカン・オレンジーヌ。ミカンでよき。そして宿賃代わりに、今金糸雀が欲しいものを私が勇者の力で呼び寄せり! カモン、ミラクルゲート!」
勇者ちゃんことミカンちゃんは何もない所に手を伸ばすと何かを掴んだ。私が欲しいもの。高級シャンパン? 高級日本酒? 高級ウィスキーの三十年? 何何? 何がもらえるの!
「……ぬっ、ここは? 金糸雀殿の家? 我は先ほど魔王城で魔王様に言い訳中……」
あっ……そういう? そういうの?
「お、おかえりデュラさん。来年もよろしくお願いします」
「フハハハハハ! 何故かは分からぬが再び合間見える事になろうとはな! 金糸雀殿。そして勇者よ! 再び厄介になろう!」
こうして、私はどうやら首だけのデュラハンと、ブーツを脱ぎ散らかして自分のコーナーを作ってしまった怠惰な勇者ちゃんことミカンちゃんと来年を迎えそうです。
「とりあえず、飲みましょうか? デュラさん、ミカンちゃん」
悪魔の侯爵デュラさんの朝は早い。コーヒーとトーストの準備をしてまだ眠そうな私とサキュバスのサキちゃんが目を擦りながら起きてくるのを笑って待っている。空気の入れ替えをして掃除の準備なんかを始めている。
お母さんか!
今日、デュラさんはサキちゃんに連れられてもとの世界に帰っていくわけだけど、今日は送別じゃなくて、もっと縁起のいい物を食べてもらおうと思ってる。
ここで問題です!
大晦日に食べる物といえば?
そば! はい、金糸雀さん正解です。えっ? お蕎麦でお酒? という事は日本酒で一杯? うん、それもいいわね。いろはさんに言って最高級の日本酒を持ってきてもらってもいいんだけど……
私はいつかデュラさんがいなくなる時に呑むお酒は決めてたの。お昼ご飯は私の特製チャーハン。
今日はお店が早く閉まるから当然早めに買い物を済ます。サキちゃんがお外に出られたらお買い物を一緒にしても楽しかったんだろうけど、扉から出ると元の世界に帰っちゃうから残念。
明日はお正月だけど一人のお正月なんて適当でいいわ。今日、最高の肴とお酒を飲んでもらってデュラさんには異世界でのいい思い出を作ってもらわなきゃ。
買うものは、簡単。かまぼこ、卵、蕎麦粉、お蕎麦。麺つゆ、以上!
あんまり遅い時間から始めたら二人にも悪いので夕方から私はお別れ会をする事にした。
「二人にはそば前で楽しんでもらおうと思います」
「そばまえでございますかぁ~」
「これまた聞いたことのない食べ物だ」
お蕎麦を待っている間にお酒を飲んで食べるおつまみだとかで、基本そばに使われる物しかないのよね。
まずは、
「いたわさです」
薄めに切ったかまぼこを山葵醬油で食べるおつまみね。そして本日のお酒は……兄貴の知り合いの誰かのボトルキープ! アストリア蒸溜社のアストリア・ロイヤル。かつてはお金持ちの象徴、今は値段が随分下がって4000円くらいのそこそこ高いボトル。
珍しい鳥居の形をしたボトルがお洒落よね。
「まずはアストリア・ロイヤルの水割りでお楽しみください」
ガチャリ。
あっ、そうだった……お酒飲み始めると誰か来るんだった。てっきりこの三人で呑むつもりだったから忘れた。
「ここはどこに来たりて?」
なんか、やる気のなさそうな女の子来たけど……えっ? デュラさんとサキュバスさんが絶望したみたいな顔をしている……
「精霊の声が聞こえたから面倒臭そうなので呼んでいる方向と真逆に向かえり、なんだかおもしろそうな所にでたりて候。勇者、不思議に思えり。魔物と人間が一緒、どういう事にて?」
可愛い声なのに全然、記憶に残らないような透明感のある声。彼女は一体? デュラさんが彼女の正体を明かしてくれる。
「……ゆ、勇者」
「デュラハン様ぁ、助けてくださいましー」
「えっと、いらっしゃい。家主の犬神金糸雀です」
じとっとした目で私とデュラさんとサキちゃんを見る勇者らしい女の子。彼女はゆっくりとその視線をいたわさとアストリア・ロイヤルに移す。
「それは食べ物なり?」
「えっと、いたわさと、ウィスキーだけど……一緒に食べます?」
「かたじけなし。いただけり!」
ということで急遽勇者ちゃんにもアストリア・ロイヤルの水割りを作ってあげ、警戒しているデュラさんとサキちゃんと共に、
「「「「乾杯!」」」」
アストリア・ロイヤルの香り、たまらない。なかなか手に入らない山崎にすごい近い味がするウィスキー。いまだにアストリア蒸溜社のフラッグシップだけあって裏切らないそのおいしさは、
「これは、なんと美味い!」
「美味しいですぅ」
悪魔の二人は感嘆。
「ふぅ、きついお酒だけどグット! お代わりを所望せり」
勇者ちゃんも気に入ったらしく、私は水割りを入れる。いたわさをつつきながら勇者ちゃんが、
「それにしても何故魔物が?」
「勇者よ貴様と同じだ」
「同じ?」
かくかくしかじかデュラさんは勇者ちゃんに状況を説明。アストリア・ロイヤルの水割りを飲みながら、
「なるほど、それは苦労せり!。ここは別世界と思えり。そして金糸雀は別世界の住人。通りで不思議かつ素敵な服を着ていると勇者理解せり!」
三本ラインのジャージが素敵な服……この勇者ちゃん、すごい嫌な予感がする。
「あのね勇者ちゃん。ここではみんなで楽しくお酒を呑むところだから、デュラさんやサキちゃんを……」
「皆まで言うなし。勇者分かってり」
そう言って勇者ちゃんはソファーの上に寝っ転がる。すごいなこの子、人の家なのに既に自分の家みたいにくつろぎ始めている。
そんな驚きの中、私は蕎麦粉を練って練って、そばがきを作った。なんとか葉っぱの形に整形し、
「はい! こちらはアストリア・ロイヤルのハイボールでお楽しみくださいね!」
三人が珍しいプルプルした食べ物にお箸を伸ばす。そしてこちらも山葵醬油で食べてもらう。
どれ、私も、
うん、これの味が分かる様になると本当に酒飲みになったなって思うわよね。子供の頃は何が美味しいのか分からなかったけど、これだけお銚子三本はいける自信があるわ。
「うまし! なるほど、魔物の二人は今日ここを去れり、うん。勇者は別に魔物を滅ぼすつもりはなき。というか別に魔王を討伐することにも興味なし」
凄い事勇者ちゃんが言いながらハイボールを飲んでる。デュラさんとサキちゃんは勇者ちゃんの言葉に、
「ならば何故、我らとあのような死闘を繰り広げたか! 貴様に屠られた同胞数しれず!」
「そうですよぉ~、私達からすればぁ~、ホラーですぅ」
そりゃそうか、魔物達からすれば勇者と名前を聞くと震え上がるような存在なんでしょうね。平和の為とか、勇者ちゃんにも理由はあるんでしょうけど、
「魔王を討伐すれば一生遊んで暮らせる事を王様が約束してくれた。だからクソ面倒臭いけど重い腰を上げた。でももう面倒になってきた」
そんな時、ここに迷い込んだらしい。そばがきを食べ終えたみんなの為に私が卵を四つ使った大きなだしまき卵を作る。これには大根おろしとポン酢で食べてもらいましょう。
「グラスが空いたらアストリア・ロイヤルのトゥワイスアップで楽しんでくださいね!」
だしまき卵、三人に好評だけど、特に!
「これ、美味しいですぅ~! 金糸雀様ぁ~、レシピを教えてくださいましぃ~!」
「いいけど、二人の元の世界で作れるのかな……なんか代用出来そうな書き方にしておくね」
だしまき卵に感動しているのはサキちゃんだけでなく、勇者ちゃんは一心不乱に食べている。よほど美味しいんだろう。口の周りに卵をつけてるので拭いてあげると、私の手を掴んで、
「金糸雀。勇者は金糸雀と結婚してもいいと思った」
「はは、勇者ちゃん女の子でしょ、じゃあみんなそろそろシメのお蕎麦茹でますね?」
そう、デュラさん、との別れの時が近づいてくる。最後はアストリア・ロイヤルのオンザロックで締めよう。茹で上げた麺を水にさらして四人分もりそばを作ると、チュルチュルと食べ方を教え、さぁ、未知との遭遇、盛りそばを心ゆくまで楽しんでください。
「そばは、長く生きて寿命を全うし、家運も末永く続くようにとの願いから、そばを食べるようになったらしいです。デュラさん、お元気で」
時は常に有限で、無限という言葉はあってもそれは存在しない。いつまでもいつまでもこんな時間が続くのだと思っていた。
食材もなくなり、残ったアストリア・ロイヤルはサキちゃんに渡して向こうでみんなで飲んでほしいと伝えた。サキちゃんに頭を抱えられたデュラさん、
別れの時が来た。
「金糸雀殿。我は悪魔。人間を殺し、滅ぼす事を命じられてきた」
「仕事だろうけど、ほどほどにね」
「そう、そこである。金糸雀殿は止めはせぬ、何かを常に分かったかのような金糸雀殿を見て、我もまた人を滅ぼす事への疑問を考えていた。我がこうなってしまったのもヤキが回ったのか、それとも……ここに来たのは何か宿命なのかも知れぬな。共に盃を持って人間と歩めるのやもしれぬ……と」
「うん。そうかもね」
「もはや我らに言葉は要らぬであろう。金糸雀殿。世話になった! 我はこの恩決して忘れぬ」
そう、デュラさんは涙を流したのだ。首だけのデュラさんが、ちょっとシュールで少しおかしかった。
会釈し、サキちゃんが扉を開けて去っていく。
「デュラさん!」
思わず呼んだ名前、バタムと閉じられた扉、もう二人は扉を開けてもそこにはいない。
私はいつの日かと恐れていたのかも知れない。悪魔だろうがなんだろうが、デュラさんは私の最高の飲み友だった。ぐっ、泣いちゃダメだ。
にしても……
「勇者ちゃんはいつまでいるのかな? 二人帰っちゃったけど......」
「ここは居心地がよき。しばらく滞在せり!」
ソファーの上で仰向けでそう言う勇者ちゃん、ふと思い出したように飛び起きると、彼女はとても愛らしく笑った。オレンジの髪をおさげにして腰に短剣。太陽のような美少女。そしてニート予備軍。
「えっ? 今なんて?」
「自己紹介がまだだった。ミカン・オレンジーヌ。ミカンでよき。そして宿賃代わりに、今金糸雀が欲しいものを私が勇者の力で呼び寄せり! カモン、ミラクルゲート!」
勇者ちゃんことミカンちゃんは何もない所に手を伸ばすと何かを掴んだ。私が欲しいもの。高級シャンパン? 高級日本酒? 高級ウィスキーの三十年? 何何? 何がもらえるの!
「……ぬっ、ここは? 金糸雀殿の家? 我は先ほど魔王城で魔王様に言い訳中……」
あっ……そういう? そういうの?
「お、おかえりデュラさん。来年もよろしくお願いします」
「フハハハハハ! 何故かは分からぬが再び合間見える事になろうとはな! 金糸雀殿。そして勇者よ! 再び厄介になろう!」
こうして、私はどうやら首だけのデュラハンと、ブーツを脱ぎ散らかして自分のコーナーを作ってしまった怠惰な勇者ちゃんことミカンちゃんと来年を迎えそうです。
「とりあえず、飲みましょうか? デュラさん、ミカンちゃん」
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