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出血大サービス

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「さぁ、契約に乾杯しよう!!」

王太子が大きく手を挙げると、みな同じようにグラスを掲げた。

「「「乾杯」」」

私たち兄、妹にはジュースを入れてくれた。
この世界にきて初めてのジュース。
本当に美味しかった。

運ばれた料理には、それに合わせてカトラリーが一緒に運ばれてくる。
最初からセットしないのはソロバン家の事を思ってくれてだろう。
スープもカップで出してくれた。

王太子殿下は、昔から城を抜け出して王都を探索するのが大好きで、
その相棒たちがカイン伯や、ブライアンさん。
なぜか年齢が違うキンドリー様も悪友として参加してたらしい。
庶民の食堂を何度も利用していた。
だから、気にせず食事をしてくれ………
と、優しく声を掛けてくれる。

食事が進んでいくと、
それまで、あまり話さなかったカイン伯が両親に話しかけ始めた。

「あなたの子供たちは、とても優秀ですね。
領主代行として、誇らしい。
あなた方家族のおかげで、領地にも恩恵が与えられた。
これから援助は惜しまないよ。困ったら言ってきてくれ」

ここにいる人たちは、身分を嵩にきない。
こんな人たちが本当にいるんだろうか?

恐縮している両親にカイン伯は続けた。

「ブライアンから聞いたが、アリアを売る。というのは本当かね?」

一気に青くなり震えだす両親たち

「彼女は、君たちでは手に負えないのは、
今回の事でよくわかっている。
今まで守れただけでも、大したもんだ。
どうだろう、私の養女にもらえないだろうか??
俺が買った形にして、
金は出しても良いが………
それは、やめた方がお互いに良いと思うんだ。
売った。と知れると、君たちの元へ訪ねる事も出来なくなる。
……俺やアルトバイン家が、あとは引き受けるよ」

優しく労わるように声を掛けてくれる。
青くなっていた両親の顔から大粒の涙が流れ落ちてきた。

「養女になった後は、そこにいるキンドリー・ハイドの下で魔術を習わせようと思う。
彼は賢者と言われていて、王宮の筆頭魔導士だ。
神様のお告げ??……で、この森の女性と出会うためにきていたんだけど、
どうやら、それがアリアみたいなんだよね」

今度は、わけがわからない事を言い出した。

「キンドリーが直接に引き取っても良いけど、彼や魔法がイヤになったら
俺かブライアンのところに逃げてくれば良いよ。
その為には、俺の養女になるのが一番良いと思うんだよ」

えっ、それって私の家出先予定の2つじゃない!!
家出しなくてもよくなる??

お願い父さん、母さん頷いて!!
入る予定だったお金は、私が必ず働いて返しますから!!

食事会場の静まり返った。

「………お願いします………」

小さな声で涙ながらに母さんが返事してくれた。

そして、売り払う事になった状況を話してくれた。

「この子が3歳の時、私の食堂に一緒に連れて行きました。
それまでは、息子が見てくれていたのですが、
2人とも風邪をひいてしまっていて………
家の中でも、器量が良いことはハイチとも話していたんです。
でも、連れて行ったとたんに、
店のご主人や、客から変な視線が娘に集まって……
次の日に店に行くと、ご主人から『おかみさんには内緒で売ってくれ』と言われ……
前の日に来てた人は、雇い主まで連れてきて売ってくれ……
って、私の娘を何だと思っているんだって、最初は怒ったんです。
でも、話をなかなか聞いてくれなくて。
このままだと、悪いことが起きそうで………
だから、言ったんです。
あと、3,4年は最低でも待ってくれ!!って、
そうしたら、ご主人は自分よりもお金持ちに売るんだろうと思って。
諦めてくれて………
外に、この子を出したら、きっと同じような事が起きるだろう。
だから、家の中でだけ育てようと思ったんです。
そうしているうちに、魔法を使えるようになってて………
もう、私たちでは守り切れない。
だから、お金持ちに売って、大事にしてもらおうと……」

つかえながらも話してくれた。

私、愛されていたんだ。

兄たちも両親の気持ちは知っていたのだろう……

静まり返った部屋の中に、嗚咽だけが響き渡る。

「うん。わかった。君たちの対応は正しいと思うよ」

こんどは、王太子殿下が肯定してくれた。

「で、どうなんだいアリア。
今の話をきいて、カインの養女になるかい??
なるんなら、私が認可を下ろす。そうすれば、君を守る事が出来るよ。
町中に君を戻すのは心配だから、このまま屋敷にいて、
家族にも何時でも会えるようにしてあげるよ」

スゴイ!!私の全ての希望が備わっている。

身の安全、家族との面会……さっきキンドリー様の弟子にもしてもらえる。
って、言ってたから魔法の勉強も出来る

「はい。ぜひ、お願いします。
両親だけじゃなく、兄妹の面会も許可していただければ嬉しいです」

王太子殿下とカイン伯が満面の笑顔で返事をしてくれた。

立ち上がり父と母に抱きつく。

兄たちも私を一緒に抱き合った

……リンデンは机に伏して寝てる。うん。かわいい

「じゃ、カイン、手続きをしよう。アーサーもいるし契約書はすぐに作れるはずだ」

即断即決
素敵です!!

私は家出をすることもなく。
安全安心な場所を手に入れた。
魔法だって勉強できる。


これで、一件落着。
神様ありがとう!!

最初に妄想した
お金、器量、魔法、運、身体強化、前世の記憶

全て叶えてくれてたのね。
貧乏な家で記録が戻った時に、
ちょっと【ケチ】って思って、ごめんなさい
出血大サービス

与えてもらった2度目の命
頑張って、楽しみます!!

もう一度言わせて
ありがと~




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