死に損ないの春吹荘 

ちあ

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一章 ここが春吹荘

問題児組、確定ですか?

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 さて、やってまいりました、我がクラスC組。点数的に一番の落ちこぼれクラスでございます。まぁ、普通に進学校だから、全国的に見ると平均なんだけどね、点数。
 うちの学校は、クラスで集まって、始業式って流れらしい。クラスに入ると、黒板の座席表を確認して、各々席へ着く。そのあと、出席取って、席順に並んで体育館へ行くようだ。
 私の席はー、窓際から二番目、前から四番目。……せめて窓際が良かった……。二番目とかなんだよ、惜しいじゃんか……。まぁ、こーゆーもんだけどさ、席順なんてww
 周りから少し視線を感じつつも、私はカバンを席に置く。
 なぜみられているかって?それはねーーーわかんない。見知らぬ人説あるじゃん?でもさ、ソラ達とつるんで登校したから説も捨て切れないのよ、本人達がもう言っちゃってるからさ。
どっちだろーなぁー?
「はい、出席を取ります」
 担任らしき中年男性は、前へ立つ。
「私は、伊勢田いせだ。引き続き、C組の担任を行う。古文の教師だ」
 そういうと、点呼を取り出す。よろしくもなにもないのね、こいつ。……私、口悪いなぁww
「ん?陽崎?」
「え、はい」
 なぜに疑問系?あ、そっかー、転校生だから?
「お前、一年何組だ?」
「えと、諸事情により、今年からの編入ですが」
「……あぁ」
 訝しむような顔をしていた伊勢田だが、私の事情を理解したのか、納得した表情を浮かべる。
「あのちっぽけな荘に住んでるやつか」
 わぁお、新手の侮辱~。いや、さすがにさ、それ、小学生レベルよ?いや、まじ。あの、侮辱の仕方、下手すぎない?
 でも、この学園では『春吹荘』に住んでいる、というのが大きなマイナスポイントとなるらしい。みんなザワザワとなって、私に嫌らしい視線を投げかける。遠慮なしに。
 はぁ……。子供っていつまでもこうなのよね。異物は排除って考え方しかできないとか、ガキじゃん。まぁ、私もガキだけどさ。
 みんながヒソヒソ話だし、険悪ムードというか、居心地最低な状況になった時、一人の女子生徒が手を上げた。
「伊勢田先生、それは関係ないですよね。人の情報勝手に流すのは駄目ではないのですか?それに、点呼早く終わらせてください。ゆ、までこないと、仕事へ行けないのですが」
 どうやら名字が「ゆ」から始まるらしいその子は、この雰囲気に対して物申した。わぁお、大胆~。
 私、この状況、少しネガティブになっていいなら無心で乗り越えられるんだけど……まぁ、いいか。
「ゆ、百合野ゆりの……」
 あ、この黒髪ショートの紫目女子は百合野さんというのですか。なるほど、覚えとこ。唯一味方してくれたし。権力もあるっぽいな、ビビってるし、伊勢田先生。
「生徒会の仕事に行きたいのですが?」
 圧がやばいよぉ、この人。いや、あのーね、宵衣先輩とか、管理人さんとか、ユウよりマシだけど、圧強え……。
「ふ、藤!」
「はぁい」
 点呼は再開された。
 その後私たちは並んで体育館へ。周りからの無遠慮な視線の数は減ったものの、消えたわけではなく。ひそひそ声もいまだにする。まぁこれくらい日常茶飯事だけどね。
 


 体育館について、並ぶと、左から順にA組、B組、C組となっているようで、A組の右側列のユウとB組の左側列のソラが見事に隣り合っていた。なんという偶然、なんというミラクル!なんでこのコンビ……トホホ。まぁ、幾分かマシか。
 だって、さっき、私が体育館に入った時、ソラ、おもいっっきり手を振ろうとしたのを、ユウがとっさに神的に止めたからね。
 興奮冷めやらないまさに小学生的なソラを宥めつつ、変なことするなよと言いたげな視線を投げかけるユウ。……わかってますよーだ。
 悪いことしてないもん。さっき思いっきり先生のこと、経験談などを踏まえメンツ潰そうかとか頭よぎったけど、実行してないし。
 平気だもん。……私はなにをいばってるんだ?マジで。
「えー……今年は……」
 先生のながぁいお話を聞きつつ、私は校庭側にいる高等部の生徒から宵衣先輩と瞬先輩を探す。ちなみに、教師は校庭側の壁付近にいるのだが、灰咲先生だるっとしてて見つけやすかったです。ほんと、なんと楽な人なのか。
 てか、暇すぎて先輩探ししてる私も私だけどww
 あ。いた。瞬先輩は、ザ・上の空!って感じでぼーっとしてる。 それで、宵衣先輩はもう列から飛び出て、灰咲先生にちょっかい出してますね、はい。さすがです。その、自由なスキル私も欲しいよ、いっそのこと。
 やったら怒られるけどさ。やってみたいわ。けどね!
 学園長、校長の話が終わると、次は生徒会長様とやらのお話らしい。
 ついでに、言うとあの百合野さんって人は生徒会役員らしく、この始業式の準備がどうたら言っていたらしい。後々、察した人(もっと早く気がつければいいんだけどね、理解力ないの、私……。と言うか自分で言ってたね、百合野さん。私馬鹿すぎるわ)。
 生徒会長は、濃い紫(紫×黒的な色)の髪に、オレンジの瞳の少し変わった、オーラのある人だった。宵衣先輩とは、似ても似つかないような、そんな感じがした。なんとなく、ね。
「次は磯木いそき会長のお話です!」
「かわりました、生徒会会長の磯木 凌いそき りょうです。今年度、高校二年に僕はなりましたがーーー」
 長いやつや。まぁ、特に聞きたくもないし無視しよ……て。やば(語彙力)。
 周りの女子達の目が一斉にハートになり、男子も一部、ツンデレ女子かのような反応をとってますよ。チラチラみたり。いや、前で話してるんだから堂々と見ろよ、そこは。
 てか、二年ってことはさ、宵衣先輩と同い年。宵衣先輩、主席。宵衣先輩より立場下?!生徒会長、それで良いのか?!
 そんなこんななツッコミ満載の始業式はほとんどぼーっと過ごすかツッコミをして終わった(なに話してたか全く持って覚えてないわ。大事そーなことは後でみんなと一緒にユウに聞こう。みんなも聞くよね、多分、てか絶対。うん。そーしよう)。

 はたまたやってまいりました、我がクラスC組の教室でございます。
「自己紹介をしていく」
 一人一人が立ち上がり、名前、誕生月、好きな教科、好きなこと、苦手な教科、目標、一言。それを言って、座っていく。これは席順。多分、席は、成績なのか、点数なのか、はたまた何か法則があるのか。私には全くわかりません。
 窓際の一番前から始まり、廊下側まで横で行って、廊下側から窓側……てのを繰り返して、次は横の百合野さんの番。
「私は、百合野 朱音ゆりの あかね。得意科目は算数。好きなことは、一人で物静かに過ごすこと。苦手な科目は強いて言うのなら音楽。今年は、しっかりと計画を立て、去年以上の成績を残し、実力をつけられるようにしたい。 同じクラスの仲間として、一応よろしく」
 一応よろしく、ねぇ。あれ、助け舟じゃないのかもしれないけど、救われた。この子、どーゆー子なんだろ。気になるなぁ♪(おっと、ソラ化が進んでしまったようだ……)
 私は百合野さんが座ったのをみて、立ち上がる。
「私は陽崎 紅羽ひさき くれはです。得意なのはあえて言うなら国語?好きなことは、友達とワイワイやることで、苦手な科目は……勉強が大抵苦手だけど、あえて言うなら理科です。この年は勉強頑張りたいです。 えーと、転校生なんでわけわかんないし、なんで色々駄目なのかとか教えてもらえると幸いです」
 私はそう言って席に座る。
 怖いなぁこれ。え、まずいこと言ったかな?まぁいっか⭐︎(ソラ化が深刻になってゆく~)
 その後も順調に自己紹介は終わり、荷物を配られ、好きにしていい時間となる。片付けて早々に帰る子もいれば、お喋りしてる子もいる。
「ねぇ、陽崎さん?」
 そう言って茶髪の女の子が近づいてくる。お、いわゆる牽制かな?なにもしてないと思うんだけど。私の思い違いかな?
「なんで、荘なんかに入ってんの?」
 まわりも待ってましたと言わんばかりの顔で私の方を見る。気になってんなら自分から聞けばいーのに。
「寮に部屋がないからって、荘に入れって学校に言われた。んで、わかりましたって言って入っただけだよ」
 みんなは唖然茫然、がっくぜーん。
 問題児だからじゃないの。空きがないからなの。マジで。これは、マジ。
「じゃ、じゃあ、変な子とかではない?」
「え?どゆこと? あそこ、なんて言われてんの?」
「変人の巣窟とか、問題児集団とか、常識外れとか、イレギュラーとか、不真面目とか」
 あぁ。わかりみが深いのだがww
 確かにあそこの人たち変というかさ、個性的だよね。わかるよ、すっごく。ソラとか宵衣先輩系統もいれば、灰咲先生のようなクズもいて、瞬先輩みたいな上から目線の独りよがりマイペースもいたら、管理人さんみたいなのらりくらり美人も、ユウのような女子以上の女子力のまじめ堅物もいる。
うん変だよね!!(私が言っていいものなのかわかんないけどww)
「じゃ陽崎さんは違うのね?なんの関わりもないのね?」
 うーん、ユウに俺らとの関係いったらハブられるとは言われたけど、嘘ついてまで友達欲しくないし、ハブられたほうがバレた時に殺されるよりマシなのですが。
「おぉーい♪」
 はい、ナイスタイミング~。さすがです、ソラくん!もう説明の手間省けるわ、ありがと。
 ……と思ったら、
「えぇ!」
 思わず大声を出してしまった。宵衣先輩やん。
 振り向いてドアにいたのは、カバンを肩にかけて、扉に寄り掛かった宵衣先輩その人であった。
 みんなも高校二年の問題児がなぜここにいると目を見張る。
「クーちゃぁん♪ 帰ろーぜ」
「いや、あの……」
 ソラたちと約束あるけど……宵衣先輩も鍵持ってんのか。
「アイス奢ってやる」
「え、マジですか?いきます」
 食い気味だな、私。自分でも分かってるよ、もちのろん。でも、食欲には勝てない!
「センセーが♪」
 誰の奢りでもいいけど、いく!私の反応に、周りの生徒は唖然。
「陽崎さんもそーゆー人?」
「そーゆー人って、変人じゃないけど、奢ってもらえるものはもらわないと。 というか……慣れるしかないんだよね、もう」
 周りにその瞬間引かれたのが何と無くわかった。悲しいっ。
「くれーーー帝先輩?」
「あれぇ、ネコ先輩だぁ」
 続いてあの幼なじみ問題児組がやってまいりました。さぁカオス。私はなにをするかって?決まってんじゃん。
「ユウ、ソラ。灰咲先生持ちでアイス奢ってくれるって」
 私は、サッと立ち上がって、カバンを持ち、出口にそそくさと向かう。
「マジで?いく!」
「……飯、カロリー少なくしよ」
 軽~く、主婦発言やめぇ、ユウ。ま、ユウらしいけど。

 何故だろう、この日から、百合野さん以外が私に自ら近寄ることはなくなった。挨拶をすれば返してくれる。でも、なんだか線引きをされているかのような、そんな気持ちになったのは、まだ知らない。


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