俺とアーサー王

しゅん

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11.5日目「騎士王のさよなら その2」

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「お前、キャメロットに帰ったんじゃないのかよ」
朝早くに起きて、まるで覚悟を決めたかのように布団をしまって、勝手に消えて、
「あんな窮屈で暑っ苦しい所をわざわざ私は好んで行かないぞ」
本当にこいつ騎士かよ。
「···で、アーサーを連れ戻すだっけ、無理だな、確定で首チョンパだ」
「アーサー王はここに帰りたい、おまえもその気なら私がどうにかする」
「お前みたいなガキに何が出来る?騎士達を目の前にして腰抜けるのがオチだ」
「私も立派な騎士だ」

今思えばアイツは俺に危害が加わらないように上手くやっていたのかもしれない。アイツは俺の為に自分を犠牲にした。俺は1度でもアイツに何かしたか?
···うん、結構してるな。
だが、これは金でも権利でもどうにもならない事だ。もし許されるなら···
「何か策あんの?」
「もちろんだ!」
さぁ、レッツゴー!

キャメロットへは、純粋な子しか入れないらしい。
「お前は穢れに穢れたゴミみたいなやつだからこれ付けたら入れるぞ」
「お前もかなりドロドロだがな」
俺が咄嗟にツッコむ。
ランスロットちゃんが渡してきたのはただの目隠し。
てか言い過ぎだろ、俺まだ童貞だし、穢れてるつもりないんだが?
俺は渡された目隠しを巻くと、ランスロットちゃんが俺の手をとって右へ左へと曲がっていく。やがて静かな場所に辿り着いた。
「もう外していいぞ」
「うおっ···」
俺たちは何故か夕方の山の中にいた。そして、俺の目の前にはまるで中世をイメージさせるような城がそびえ立っており、その周りには異世界にありそうな石造りの民家のような物が見渡しても数え切れないほどあった。
「こんな所に···こんな物が···しかも夜だったのに···で、アーサーはあの中か」
「凄いなお前、1発で見つけるとか」
さすが俺。
「んで、策って何だ?教えてくれ、俺は何すればいい?」
「まぁ落ち着け、いいかよく聞け、お前は──」

どうしてこうなった。
俺は今、城の地下牢にいた。
──さっきの事。
「お前はチカンで捕まれ」
「···は?」
一瞬、時間が止まったのかと錯覚するように風が止んだ。
「ほらこれ着て、よし、行ってこいチカン野郎」
ランスロットちゃんがリュックサックから出したのはここキャメロットでの服装なのだろう白いシャツに肩掛けのようなものを出した。
「というか、勝手に進めんな、何だって?チカン?俺が?ヤダね?まずなんでチカンなんてしなきゃならんのだ」
俺が断固拒否すると、案外正当な理由が帰ってきた。
「お前のような庶民は普通城なんか入れないぞ、だから地下牢まで送ってもらって、中で合流しよう」
クソっ、まさかの前科をここで作る羽目になるとは。

その後、俺が吟味した最高の女の人の胸を大変美味しく頂きました。

「はぁ、窮屈だなー、ランスロットちゃん早く来てー」
「お前、次そんな大声で言ったらこのまま処刑させてもらうからな」
牢の外にはランスロットちゃんがいる。
「あれっ?看守は?」
俺をここにぶち込んだムキムキの無法者みたいな奴がいたはずだが···?
「寝させた」
寝させた···って事は──
俺はこれからあまりランスロットちゃんを怒らせないようにしようと思った。

「で、城に入れたはいいけど、これからどうすんの?」
山の中で聞いたのはここまでのプラン。ここからのプランを聞いておかねば。
「ここにいる、阿呆共を解放する」
阿呆共?ってまさか──
「反乱開始だ!」
ランスロットちゃんが牢獄に入っている一人一人に鍵を投げ渡している。そして、ゾロゾロ出てきた犯罪者に大きな声で言った。
「お前ら!好きなだけ暴れていいぞ!お前らを捕まえた上のチンカス共を引っぱたいてやれ!」
「「「おおっ!」」」
犯罪者達が雄叫びをあげ、上へと繋がる階段へ歩き始める。
やだ!この子怖い!



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