箱入りの魔法使い

しゅん

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転入生

それでも違う

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メソッドは急速にウラマと距離をとる。

痛みがある、顔にだ。

ベチョっと空から降ってきたのは人の肌。

多分、俺の頬の肉だろう。

右目が上手く固定されない、支える肉ごと千切られたのだろう。

もしもの時のために右目を瞑るが、隙間からこぼれ落ちそうだ。

「まったく人が変わったようだな、それにお前、2年のウラマとか言ったか」

ウラマは仮面が外れ、その下の顔は俺の頬をちぎった返り血で濡らされ笑っている。

動画で見たあの冷静さは今や無いように見える。

まるで喜劇のようだ。

「ハハッ、もうお前は退場だ」

ウラマが片腕を向けて構えてくる。

その時、腹の中から違和感を感じた。

全てのあばら骨が外に出ようとしている。

さすがにマズいと思い、急速に離れるが一足遅く、あばら骨が3本外に、2本は折れて体に突き刺さっている。

「グハッ!」

「強がりも終わりか?」

メソッドは何を思ったか静かに目を閉じた。

───

「あれ、煙?」

ナツさんが場所の脇から覗いて言った。

確かに学校の方から黒煙がたっている。

「何かあったかも、ナツさん僕行ってきます」

僕は腫瘍を翼に変え、高速で向かおうとした。

「待てリッカ君」

それと同時に馬車も止まった。

道の先に誰かいるのだ。

マフラーをしてこちらを睨んでいる。

「なぁそこの君、今急いで──」

その言葉の最中にナツさんの首が飛ばされた。

「ナツさん!」

僕は魔法剣を構えて立ち向かった。

この魔法剣は魔法によって作れる剣だ。
腫瘍は危険なので使えるようにしたのである。

ナツさんは首から血を流し、即死である。

「ここでお前を殺す」

こいつの固有魔法は見たところ『錬金』だ。

地面のコンクリートが規則的に削れてるのが見てわかる。

だが放射する凶器は大して速くない、すぐ終わらせる。

今も相手は大量の凶器を生成している。

魔法剣のいいところは魔法そのものを切れるところにある。

飛んでくる凶器を切り落とし、隙を見て魔法を剣に乗せて飛ばす。

しかしそれをすぐさま錬金で防ぐ。

この場に媒体がある限り相手に攻撃は入れられない。

だが守りきれないスピードで削ればいい。

あれから少しづつだけどナツさんと練習したのだ。

「装備、両足」

両足だけに腫瘍の鎧を纏わせる。

これによりスピードを格段に上げる。

「ナツさん、待っててください」





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