箱入りの魔法使い

しゅん

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陥落

さよなら

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なんだあの武器は。

魔力を動力源としない今まで見た事ない武器だ。

しかし今見たところ鉄の鉛を高速で飛ばす武器と見た。

これでも王側近護衛団の一人、反射神経には自信がある。

王側近護衛団の中でも1番下っ端の俺が下の援護に行けって言うんだから、ここでいいとこ見せとかないとな。

黒い集団は何か行動をしている。

武器の何かを取り外して、新しいものを取り付けた。
そしてそれをまた構え出した。

また大きな音が鳴った。

しかし騎士たちのように容易くは当たらない。

大量に向かってくる鉛、その一つ一つをしっかりと避けていく。触れただけでも危なそうだ。

しかしこのままでは避けるだけでこちらが疲れる一方。

ナツは動かないようだし、と考えをめぐらせている時にチャンスは来た。

また武器の取り外しだ。

まさかあれは弾込めか、魔力を使わないなら鉛にも制限はある。

なら今のうちに。

「固有魔法、踊る大家族ダンサー!」

ポケットから何体かの内の一体の人形を取りだしそれに魔力を込める。

瞬く間にそれは大きくなり黒い集団を蹴散らした。

「こいつにゃどんな物理攻撃でも傷一つ付かねぇさ」

「おや、終わったかい?」

ナツのそのあっさりとした態度に少し頭にきた俺は人形でナツを踏み潰そうとした。

「デリート」

「!?」

人形の足がみるみると消えていく。

「魔法すらまとも効かない人形だぞ!?」

舌打ちをすると残りの人形も全て出した。

「クロにゃ悪いがここで終わらせてもらう、踊る町奉行ダンサーパレード!」

大小様々の人形が剣やナイフ、魔法をかまえ踊るようにナツに攻撃を仕掛ける。

この人形を侮ってはならない。

人間では無いので、常識外れの方向からの攻撃、死角からの攻撃、人数有利による攻撃、全てを兼ね備えているこの魔法を突破できる者はいない!

「はぁ」

それはため息、ナツがついたものだろうか。

なぜこの状況でそんなことが出来るのか。

「最高詠唱魔法、遥かなる天体の闇アルマ·カオス

それは禁忌とも呼ばれている魔法。

使用には人間およそ十人で二時間程度の詠唱が必要で、宇宙にある魔力を吸い寄せその膨大な質量を闇に乗せて放つ最強魔法。

使用者たちにも命の危険があるので禁忌とされていたが、今ナツはそんな素振りを一切見せず見事な一撃だった。

そんな俺の死体など残るはずも無く、悲しく俺の腕一本がこの地球に取り残されたのだ。
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