箱入りの魔法使い

しゅん

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陥落

小人

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「リッカ君、私は今すぐここを出ようと思う」

「え、なんで急に」

それはクロさんの様態が少しづつ安定し、特にすることも無く、暇なある日のこと。

こんなことしてる場合じゃないと僕は本心では思っているのだ、だがクロさんもこの有様、誰かが近くにいなければならない。

「王から呼び出しだ、クロが目を覚ましたら城に来いと伝えておいてくれ」

そう言ってミスノルフさんは外へ出ていった。

「忙しい人だな」

あの人、だいぶ焦っていたな。

多分相当急用なんだろう、だったら尚更僕はこんなことをしていていいのだろうか。

今のうちにカイブに聞いておけることは聞いておこう。そう例えばこの世界についてとか──

「──あれ」

突然目の前の景色が変わった。

見覚えのある景色だ。

照らす日光、揺れる木々、白い地面。

ここ、カールさんのとこの雪山だ。

「なんで!?いつの間に!?」

前と同じだ、知らぬ間にここにいる。

「くそっ!」

腫瘍で翼を作って──!

「待ってください」

呼び止められた、鈍く、重い声だ。

人の形をしていないは僕に話しかけてきた。

「君、上から来たでしょう、それにその顔、ちょうど良かった、話をしましょう」

「すまないが、今そんな気分でも場合でもないんだ」

全速力で空に飛ぶ。

それに追いつく速度では飛んできた。

「!」

「まぁ落ち着いてください、あなたにも有益な話のはずですよ」

「一体何が!?」

「あなたの事、そして、魔王についてです」

は改めて見れば魔族の1人のような容姿をしていた。

「魔王...」
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