箱入りの魔法使い

しゅん

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ジュリ

星と君

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「スナイパーは根性で何とかなる。持久戦は得意なんだ」

まだ歩けるほどの傷で済んだリッカ。

攻撃の糸口が掴めず近づけずにいる。

今ナルナルは引き金を引いてない。だが銃声はした。

この木の上のどこかにまだ分身がいるのだ。

それはつまり──

「分身に制限はないのか」

「正解」

なら既にリッカは飛んで火に入る夏の虫であり、身動きひとつ取れないのである。

「動かないの?別にいいけど、もう遅いよ」

遅い?何が?

また銃声が鳴った。

それはハルさんのいるところだ。

「君たちは私のスナイパーを甘く見すぎた。この子はね、なんだって貫通出来ちゃうの。まさかただの防御魔法如きで私のスナイパーが防げると思ってたの?」

ナルナルの言うことが本当ならば、ハルさんは──。

「お前!」

一歩、足を動かした。

それは合図だった。

四方八方からの集中砲火。木の上から、陰から遠くの崖から。

避けれるはずもなく、体は穴ぼこになった。

───

やりたいことがあった。

タイタリクの事だ。

今まで使わないことで何が起こるか知る必要があった。

そして今答えが分かるのだ。

死の間際こそ、それが必要だった。

───

「はいおしまいー、じゃあ次──って、え?え?」

リッカの穴だらけの死体は穴からか謎の液体が溢れ始め、それは死体を包んでいった。

液体から開放されて出てきたのはタイタリク。

肉体を持ったタイタリクの姿だ。

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