箱入りの魔法使い

しゅん

文字の大きさ
上 下
141 / 193
ジュリ

これは君の物語

しおりを挟む
バルトロス、嫌な名前だ。

生まれは本当に普通の平凡な家。父親はしっかり働いてるし、母は家事と俺の世話をしっかりしてくれた。

誕生日には手作りのペンダントをくれた。

何もかもか普通で完璧だった。

東の勇者と北の勇者さえ現れなければ。

彼らの戦いは地形を変え、多くの命を奪った。

俺の親もその中に入っている。

何が勇者だ、彼らは自分の使命が終わったから、後は自分の事しか考えてない。

結局、生き残ったのは俺と同じ町に住んでいた知らないおじさん。

おじさんはそんな俺を一生懸命育ててくれた。

おじさんが言うには、妻を娶れず、一人暮らしをしていたが孫はずっと欲しかったとか。

本当に実の孫のように育ててくれた。

心の傷はだんだん癒えていった。

ある日、街に出かけた時だった。

市場でおじさんが買い物をしてる時、鞄が転がってきたのでそれを拾いあげて中身を覗いて見た。

生臭い、血と肉の匂い。

「ここに妻を殺したヤツがいるぞ!」

男の声、それは俺たちに向けられた言葉。

おじさんはそれに気づいたと同時に俺を抱えて走り出した。
その時に唯一の形見であるペンダントを落とした。

俺たちは迫害された。居場所をなくしたんだ。

旅をしていたが、その途中におじさんが過労死した。

一人で何も出来なかった。

そこにナツが現れた。

「お前があと少し早かったら、おじさんは死ななかった」

「そうか」

「もうやめてくれ、何も俺から奪わないでくれ...」

「どこの街から来たんだ?」

俺は迫害された街の方に指さした。

「そうか」

ナツは俺の目の前に半分のパンを置いてどこかへ行った。

次の日、ひたすら歩いていると、またナツが現れた。

「君は嫌いな奴とかいないのかい?」

「...全員」

ジャラとナツが手に出したのは俺のペンダント。

「君、俺と一緒に世界を変えてみないか?」

それが俺の始まり、バルトロスという弱虫だった名前。
しおりを挟む

処理中です...