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第二章 騎士団の結成
29話 風神の如く
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⸺⸺聖騎士団訓練場⸺⸺
大広間の奥に武舞台が設置されたシンプルな作りの部屋。
奥の武舞台には誰もいなかったけど、広間のあちこちで金属のぶつかり合う音が響き合い、訓練の真っ最中のようだった。
「アレン、レオ? そちらの方々は……?」
と、威厳たっぷりのイケオジ。
「ウォルター団長! はっ、こちらの方々はガーネット騎士団の方々です!」
アレンは胸に拳を当て敬礼をしてそう答えた。団長!? と、みんなも同じことを思っていたようで、僕たちはアレンの真似をしてサッと敬礼した。
「ガーネット騎士団だと!? なんと、復活をするのか! それはめでたいな!」
と、ウォルター団長。
僕たちの身なりがこんなちんちくりんでもこの団長は一切バカにした目付きにならなかった。聖騎士団のトップはどうやら話の分かるお方のようだ。
「それで、今からレオとこちらのフウガ殿が練習試合を行います。武舞台を使用してもよろしいでしょうか?」
「それは面白い。丁度今は誰も使う予定はないからな、もちろん構わんよ」
ウォルター団長がそう答えると、周りから「レオ部隊長と練習試合!?」「誰が? え、あの鬼族の子?」と続々と声が上がった。
レオ部隊長……!? あれ、フウガ、大丈夫かな……。レオの肩書きにビビって急に不安になる僕。すると、グレンが僕の頭にポンと手を置いた。
「まぁ、見てなって。国の姫様の右腕だぞ?」
「ぐれちゃ……うん、そうだね」
僕は隣でガクガク震えているレベッカをポンポンとなだめて、ウォルター団長の隣という特等席に着いた。
武舞台はあっという間に団員らに囲まれて、さながら闘技場のようだ。
フウガは双剣を、レオは刃の大きな斧を構えて武舞台に立ち、向かい合う。彼らの頭上には“HP”と書かれた緑色のメーターが浮かび上がっていた。すご、立体のゲームじゃん。
アレンが審判を務めるようで、彼の「開始!」の合図で両者がその場から姿を消した。
「あれ、2人ともいなくなっちゃいました……!」
レベッカがそう声を上げた途端、武舞台の中央でキンッという金属の激しくぶつかり合う音が響く。気付けば2人は斧と双剣でギリギリと競り合っていた。
「へぇ、あのツンツン野郎、なかなかやるな」
と、グレン。ウォルター団長も「ほぅ……!」と目を丸くしていた。
しばらくどちらのHPメーターも減らずに金属のぶつかり合う音だけが響き渡る。互角って事……?
僕はなんだかわくわくしてきていて、周りの歓声に混じって「ふうちゃ、頑張れー!」とフウガを応援していた。
⸺⸺開始10分、拮抗していた戦況が変わり始める。
「うおっ!」
というレオの叫び声が聞こえたかと思うと、彼のHPが2割ほど削られる。フウガの双剣がレオの腕にクリーンヒットしていた。
「今のあの一撃でレオの右腕は斬り落とされた。勝負あったな」
と、ウォルター団長。
そこからフウガのまるで風神のような猛攻が始まり、斧を弾き飛ばされたレオはフウガにめった斬りにされていた。
レオのHPメーターがあっという間にオレンジになり、赤になり、“戦闘不能”の文字が浮かび上がった。
「そこまで! 勝者、フウガ・ツユクサ!」
アレンの一声で辺りが「わぁーっ!」歓喜に包まれる。僕も一緒になって「ふうちゃぁー!」と叫び、武舞台で涼しげに立っているフウガの胸に飛び込んだ。
「フィル様!」
フウガは僕を軽々と受け止めてくれる。
「ふうちゃ、すごいね! 風神様だ!」
「はぅぁ、ありがたき幸せ……!」
彼は僕を抱えたままヘナヘナと崩れ落ちた。あれ、最後かっこ悪い!
崩れ落ちた先で、同じように武舞台にへたり込んでいたレオとフウガの視線が合った。
「俺の完敗だ。てめぇ、めちゃくちゃ強えじゃねぇか。悪かった、土下座でもなんでもする」
と、レオ。そっか、この人だって聖騎士団の部隊長様。根っからの悪人じゃないんだ。
「いや、あんたも強かったよ。俺も、ついカッとなってしまって、すみませんでした。けど、フィル様をガキ呼ばわりしてバカにしたのは謝れ、土下座しろ!」
ちょ、フウガ、流石にそれは……! そう口を挟もうとすると、レオはあぐらをかいたままではあったが、両手のひらを地面に付けて深く頭を下げた。
「悪かった、フィル様。この通りだ」
「い、いーよ。僕5歳だからガキって言われても仕方ないし。ちなみにれべちゃは20歳超えてる大人だよ」
僕がそう言ってレベッカを指差すと、レオは「マジか!? れべちゃ様も悪かった」とレベッカにも頭を下げた。
これで一件落着……と、思いきや、ゴゴゴゴゴ……とすさまじいオーラを放ったウォルター団長とスズランが武舞台へと上がってくる。
「レオ貴様……ガーネット卿のご子息に無礼を働いたのか……?」
「フウガ! 仮にも相手は王国の聖騎士様じゃぞ!」
「「も、申し訳ございませんでした!」」
レオとフウガは秒で土下座をし、なぜか僕も逃げられない状態になって2人の間で正座をし、ウォルター団長とスズランのまさに鬼のような説教を延々と聞かされた。
大広間の奥に武舞台が設置されたシンプルな作りの部屋。
奥の武舞台には誰もいなかったけど、広間のあちこちで金属のぶつかり合う音が響き合い、訓練の真っ最中のようだった。
「アレン、レオ? そちらの方々は……?」
と、威厳たっぷりのイケオジ。
「ウォルター団長! はっ、こちらの方々はガーネット騎士団の方々です!」
アレンは胸に拳を当て敬礼をしてそう答えた。団長!? と、みんなも同じことを思っていたようで、僕たちはアレンの真似をしてサッと敬礼した。
「ガーネット騎士団だと!? なんと、復活をするのか! それはめでたいな!」
と、ウォルター団長。
僕たちの身なりがこんなちんちくりんでもこの団長は一切バカにした目付きにならなかった。聖騎士団のトップはどうやら話の分かるお方のようだ。
「それで、今からレオとこちらのフウガ殿が練習試合を行います。武舞台を使用してもよろしいでしょうか?」
「それは面白い。丁度今は誰も使う予定はないからな、もちろん構わんよ」
ウォルター団長がそう答えると、周りから「レオ部隊長と練習試合!?」「誰が? え、あの鬼族の子?」と続々と声が上がった。
レオ部隊長……!? あれ、フウガ、大丈夫かな……。レオの肩書きにビビって急に不安になる僕。すると、グレンが僕の頭にポンと手を置いた。
「まぁ、見てなって。国の姫様の右腕だぞ?」
「ぐれちゃ……うん、そうだね」
僕は隣でガクガク震えているレベッカをポンポンとなだめて、ウォルター団長の隣という特等席に着いた。
武舞台はあっという間に団員らに囲まれて、さながら闘技場のようだ。
フウガは双剣を、レオは刃の大きな斧を構えて武舞台に立ち、向かい合う。彼らの頭上には“HP”と書かれた緑色のメーターが浮かび上がっていた。すご、立体のゲームじゃん。
アレンが審判を務めるようで、彼の「開始!」の合図で両者がその場から姿を消した。
「あれ、2人ともいなくなっちゃいました……!」
レベッカがそう声を上げた途端、武舞台の中央でキンッという金属の激しくぶつかり合う音が響く。気付けば2人は斧と双剣でギリギリと競り合っていた。
「へぇ、あのツンツン野郎、なかなかやるな」
と、グレン。ウォルター団長も「ほぅ……!」と目を丸くしていた。
しばらくどちらのHPメーターも減らずに金属のぶつかり合う音だけが響き渡る。互角って事……?
僕はなんだかわくわくしてきていて、周りの歓声に混じって「ふうちゃ、頑張れー!」とフウガを応援していた。
⸺⸺開始10分、拮抗していた戦況が変わり始める。
「うおっ!」
というレオの叫び声が聞こえたかと思うと、彼のHPが2割ほど削られる。フウガの双剣がレオの腕にクリーンヒットしていた。
「今のあの一撃でレオの右腕は斬り落とされた。勝負あったな」
と、ウォルター団長。
そこからフウガのまるで風神のような猛攻が始まり、斧を弾き飛ばされたレオはフウガにめった斬りにされていた。
レオのHPメーターがあっという間にオレンジになり、赤になり、“戦闘不能”の文字が浮かび上がった。
「そこまで! 勝者、フウガ・ツユクサ!」
アレンの一声で辺りが「わぁーっ!」歓喜に包まれる。僕も一緒になって「ふうちゃぁー!」と叫び、武舞台で涼しげに立っているフウガの胸に飛び込んだ。
「フィル様!」
フウガは僕を軽々と受け止めてくれる。
「ふうちゃ、すごいね! 風神様だ!」
「はぅぁ、ありがたき幸せ……!」
彼は僕を抱えたままヘナヘナと崩れ落ちた。あれ、最後かっこ悪い!
崩れ落ちた先で、同じように武舞台にへたり込んでいたレオとフウガの視線が合った。
「俺の完敗だ。てめぇ、めちゃくちゃ強えじゃねぇか。悪かった、土下座でもなんでもする」
と、レオ。そっか、この人だって聖騎士団の部隊長様。根っからの悪人じゃないんだ。
「いや、あんたも強かったよ。俺も、ついカッとなってしまって、すみませんでした。けど、フィル様をガキ呼ばわりしてバカにしたのは謝れ、土下座しろ!」
ちょ、フウガ、流石にそれは……! そう口を挟もうとすると、レオはあぐらをかいたままではあったが、両手のひらを地面に付けて深く頭を下げた。
「悪かった、フィル様。この通りだ」
「い、いーよ。僕5歳だからガキって言われても仕方ないし。ちなみにれべちゃは20歳超えてる大人だよ」
僕がそう言ってレベッカを指差すと、レオは「マジか!? れべちゃ様も悪かった」とレベッカにも頭を下げた。
これで一件落着……と、思いきや、ゴゴゴゴゴ……とすさまじいオーラを放ったウォルター団長とスズランが武舞台へと上がってくる。
「レオ貴様……ガーネット卿のご子息に無礼を働いたのか……?」
「フウガ! 仮にも相手は王国の聖騎士様じゃぞ!」
「「も、申し訳ございませんでした!」」
レオとフウガは秒で土下座をし、なぜか僕も逃げられない状態になって2人の間で正座をし、ウォルター団長とスズランのまさに鬼のような説教を延々と聞かされた。
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