【完結】小さな元大賢者の幸せ騎士団大作戦〜ひとりは寂しいからみんなで幸せ目指します〜

るあか

文字の大きさ
29 / 69
第二章 騎士団の結成

29話 風神の如く

しおりを挟む
⸺⸺聖騎士団訓練場⸺⸺

 大広間の奥に武舞台が設置されたシンプルな作りの部屋。
 奥の武舞台には誰もいなかったけど、広間のあちこちで金属のぶつかり合う音が響き合い、訓練の真っ最中のようだった。

「アレン、レオ? そちらの方々は……?」
 と、威厳たっぷりのイケオジ。
「ウォルター団長! はっ、こちらの方々はガーネット騎士団の方々です!」
 アレンは胸に拳を当て敬礼をしてそう答えた。団長!? と、みんなも同じことを思っていたようで、僕たちはアレンの真似をしてサッと敬礼した。

「ガーネット騎士団だと!? なんと、復活をするのか! それはめでたいな!」
 と、ウォルター団長。
 僕たちの身なりがこんなちんちくりんでもこの団長は一切バカにした目付きにならなかった。聖騎士団のトップはどうやら話の分かるお方のようだ。
「それで、今からレオとこちらのフウガ殿が練習試合を行います。武舞台を使用してもよろしいでしょうか?」
「それは面白い。丁度今は誰も使う予定はないからな、もちろん構わんよ」
 ウォルター団長がそう答えると、周りから「レオ部隊長と練習試合!?」「誰が? え、あの鬼族の子?」と続々と声が上がった。
 レオ部隊長……!? あれ、フウガ、大丈夫かな……。レオの肩書きにビビって急に不安になる僕。すると、グレンが僕の頭にポンと手を置いた。
「まぁ、見てなって。国の姫様の右腕だぞ?」
「ぐれちゃ……うん、そうだね」
 僕は隣でガクガク震えているレベッカをポンポンとなだめて、ウォルター団長の隣という特等席に着いた。

 武舞台はあっという間に団員らに囲まれて、さながら闘技場のようだ。
 フウガは双剣を、レオは刃の大きな斧を構えて武舞台に立ち、向かい合う。彼らの頭上には“HP”と書かれた緑色のメーターが浮かび上がっていた。すご、立体のゲームじゃん。
 アレンが審判を務めるようで、彼の「開始!」の合図で両者がその場から姿を消した。

「あれ、2人ともいなくなっちゃいました……!」
 レベッカがそう声を上げた途端、武舞台の中央でキンッという金属の激しくぶつかり合う音が響く。気付けば2人は斧と双剣でギリギリと競り合っていた。
「へぇ、あのツンツン野郎、なかなかやるな」
 と、グレン。ウォルター団長も「ほぅ……!」と目を丸くしていた。

 しばらくどちらのHPメーターも減らずに金属のぶつかり合う音だけが響き渡る。互角って事……?
 僕はなんだかわくわくしてきていて、周りの歓声に混じって「ふうちゃ、頑張れー!」とフウガを応援していた。

⸺⸺開始10分、拮抗きっこうしていた戦況が変わり始める。

「うおっ!」
 というレオの叫び声が聞こえたかと思うと、彼のHPが2割ほど削られる。フウガの双剣がレオの腕にクリーンヒットしていた。
「今のあの一撃でレオの右腕は斬り落とされた。勝負あったな」
 と、ウォルター団長。
 そこからフウガのまるで風神のような猛攻が始まり、斧を弾き飛ばされたレオはフウガにめった斬りにされていた。
 レオのHPメーターがあっという間にオレンジになり、赤になり、“戦闘不能”の文字が浮かび上がった。

「そこまで! 勝者、フウガ・ツユクサ!」
 アレンの一声で辺りが「わぁーっ!」歓喜に包まれる。僕も一緒になって「ふうちゃぁー!」と叫び、武舞台で涼しげに立っているフウガの胸に飛び込んだ。
「フィル様!」
 フウガは僕を軽々と受け止めてくれる。
「ふうちゃ、すごいね! 風神様だ!」
「はぅぁ、ありがたき幸せ……!」
 彼は僕を抱えたままヘナヘナと崩れ落ちた。あれ、最後かっこ悪い!

 崩れ落ちた先で、同じように武舞台にへたり込んでいたレオとフウガの視線が合った。
「俺の完敗だ。てめぇ、めちゃくちゃ強えじゃねぇか。悪かった、土下座でもなんでもする」
 と、レオ。そっか、この人だって聖騎士団の部隊長様。根っからの悪人じゃないんだ。
「いや、あんたも強かったよ。俺も、ついカッとなってしまって、すみませんでした。けど、フィル様をガキ呼ばわりしてバカにしたのは謝れ、土下座しろ!」
 ちょ、フウガ、流石にそれは……! そう口を挟もうとすると、レオはあぐらをかいたままではあったが、両手のひらを地面に付けて深く頭を下げた。
「悪かった、フィル様。この通りだ」
「い、いーよ。僕5歳だからガキって言われても仕方ないし。ちなみにれべちゃは20歳超えてる大人だよ」
 僕がそう言ってレベッカを指差すと、レオは「マジか!? れべちゃ様も悪かった」とレベッカにも頭を下げた。

 これで一件落着……と、思いきや、ゴゴゴゴゴ……とすさまじいオーラを放ったウォルター団長とスズランが武舞台へと上がってくる。
「レオ貴様……ガーネット卿のご子息に無礼を働いたのか……?」
「フウガ! 仮にも相手は王国の聖騎士様じゃぞ!」
「「も、申し訳ございませんでした!」」
 レオとフウガは秒で土下座をし、なぜか僕も逃げられない状態になって2人の間で正座をし、ウォルター団長とスズランのまさに鬼のような説教を延々と聞かされた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

転生貴族の移動領地~家族から見捨てられた三子の俺、万能な【スライド】スキルで最強領地とともに旅をする~

名無し
ファンタジー
とある男爵の三子として転生した主人公スラン。美しい海辺の辺境で暮らしていたが、海賊やモンスターを寄せ付けなかった頼りの父が倒れ、意識不明に陥ってしまう。兄姉もまた、スランの得たスキル【スライド】が外れと見るや、彼を見捨ててライバル貴族に寝返る。だが、そこから【スライド】スキルの真価を知ったスランの逆襲が始まるのであった。

【完結】発明家アレンの異世界工房 ~元・商品開発部員の知識で村おこし始めました~

シマセイ
ファンタジー
過労死した元商品開発部員の田中浩介は、女神の計らいで異世界の少年アレンに転生。 前世の知識と物作りの才能を活かし、村の道具を次々と改良。 その発明は村の生活を豊かにし、アレンは周囲の信頼と期待を集め始める。

詠唱? それ、気合を入れるためのおまじないですよね? ~勘違い貴族の規格外魔法譚~

Gaku
ファンタジー
「次の人生は、自由に走り回れる丈夫な体が欲しい」 病室で短い生涯を終えた僕、ガクの切実な願いは、神様のちょっとした(?)サービスで、とんでもなく盛大な形で叶えられた。 気がつけば、そこは剣と魔法が息づく異世界。貴族の三男として、念願の健康な体と、ついでに規格外の魔力を手に入れていた! これでようやく、平和で自堕落なスローライフが送れる――はずだった。 だが、僕には一つ、致命的な欠点があった。それは、この世界の魔法に関する常識が、綺麗さっぱりゼロだったこと。 皆が必死に唱える「詠唱」を、僕は「気合を入れるためのおまじない」だと勘違い。僕の魔法理論は、いつだって「体内のエネルギーを、ぐわーっと集めて、どーん!」。 その結果、 うっかり放った火の玉で、屋敷の壁に風穴を開けてしまう。 慌てて土魔法で修復すれば、なぜか元の壁より遥かに豪華絢爛な『匠の壁』が爆誕し、屋敷の新たな観光名所に。 「友達が欲しいな」と軽い気持ちで召喚魔法を使えば、天変地異の末に伝説の魔獣フェンリル(ただし、手のひらサイズの超絶可愛い子犬)を呼び出してしまう始末。 僕はただ、健康な体でのんびり暮らしたいだけなのに! 行く先々で無自覚に「やりすぎ」てしまい、気づけば周囲からは「無詠唱の暴君」「歩く災害」など、実に不名誉なあだ名で呼ばれるようになっていた……。 そんな僕が、ついに魔法学園へ入学! 当然のように入学試験では的を“消滅”させて試験官を絶句させ、「関わってはいけないヤバい奴」として輝かしい孤立生活をスタート! しかし、そんな規格外な僕に興味を持つ、二人の変わり者が現れた。 魔法の真理を探求する理論オタクの「レオ」と、強者との戦いを求める猪突猛進な武闘派女子の「アンナ」。 この二人との出会いが、モノクロだった僕の世界を、一気に鮮やかな色に変えていく――! 勘違いと無自覚チートで、知らず知らずのうちに世界を震撼させる! 腹筋崩壊のドタバタコメディを軸に、個性的な仲間たちとの友情、そして、世界の謎に迫る大冒険が、今、始まる!

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

ガチャで領地改革! 没落辺境を職人召喚で立て直す若き領主

雪奈 水無月
ファンタジー
魔物大侵攻《モンスター・テンペスト》で父を失い、十五歳で領主となったロイド。 荒れ果てた辺境領を支えたのは、幼馴染のメイド・リーナと執事セバス、そして領民たちだった。 十八歳になったある日、女神アウレリアから“祝福”が降り、 ロイドの中で《スキル職人ガチャ》が覚醒する。 ガチャから現れるのは、防衛・経済・流通・娯楽など、 領地再建に不可欠な各分野のエキスパートたち。 魔物被害、経済不安、流通の断絶── 没落寸前の領地に、ようやく希望の光が差し込む。 新たな仲間と共に、若き領主ロイドの“辺境再生”が始まる。

追放令嬢、辺境王国で無双して王宮を揺るがす

yukataka
ファンタジー
王国随一の名門ハーランド公爵家の令嬢エリシアは、第一王子の婚約者でありながら、王宮の陰謀により突然追放される。濡れ衣を着せられ、全てを奪われた彼女は極寒の辺境国家ノルディアへと流される。しかしエリシアには秘密があった――前世の記憶と現代日本の経営知識を持つ転生者だったのだ。荒廃した辺境で、彼女は持ち前の戦略眼と人心掌握術で奇跡の復興を成し遂げる。やがて彼女の手腕は王国全土を震撼させ、自らを追放した者たちに復讐の刃を向ける。だが辺境王ルシアンとの運命的な出会いが、彼女の心に新たな感情を芽生えさせていく。これは、理不尽に奪われた女性が、知略と情熱で世界を変える物語――。

異世界転生ファミリー

くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?! 辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。 アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。 アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。 長男のナイトはクールで賢い美少年。 ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。 何の不思議もない家族と思われたが…… 彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

処理中です...