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第四章 魔竜の生贄と悪事の鱗片
50話 世界樹へ
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⸺⸺アマツ山⸺⸺
整備されたアマツ山を北西へとぐんぐん進む。ここは魔物が全く出現しなくなったため、暗い夜道でも安全に進める。
⸺⸺その道中で。
「君、ライカちゃんだっけ? なんて可愛らしいのに俊敏な動き。良かったら俺と空の旅にでも……」
シギュンはデレデレしながらライカにまとわりついている。ライカは「ウザい……」と一言でバッサリ切り捨てていた。
しかしシギュンはめげずにスズランへと標的を変える。
「ほわ、そんなキツい一言もクールだ! スズラン姫様、そのナイスなバディ! 俺に預けてみませんか?」
もうそれナンパじゃなくてただのセクハラだよ。スズランはあっはっはと笑ってこう返した。
「身分だけを見て妾を先に落とそうとするのではなく、己の本能に従ってライカに先に声をかけたのは妾の中ではポイントが高いぞよ?」
それに対しライカは「ただウザいだけ……」とバッサリいった。
「はっ! 高得点ありがとうございます! で、では、事が片付き次第、俺と……」
「ふふふ、すまんのう。妾には夫の候補が2人もおる故、もうこれ以上候補はいらぬ」
そう笑顔で突き放すスズランに、シギュンの心は「ぐはぁっ!」と崩れ落ちていた。
そんなシギュンへグレンが「レベッカも小人族だから幼く見えるけど、もう立派なレディだぞ?」と耳打ちする。
「え、マジ!? レベッカちゃん、俺と……!」
「ひぃぃぃっ! 結構ですぅ!」
焦ったレベッカの振りかざした魔道メイスがシギュンの頬へ「ぐほぁっ!」とクリーンヒットする。
「ふぇぇっ!? ご、ごめんなさい……!」
そんなパンパンに腫れたシギュンの頬を見たニコラスが回復魔法で治してあげていた。
「ありがとう、ニコラスちゃん。君も美しい顔立ちだ……」
「僕は男ですっ!」
「ぶほぁっ!」
今度は魔法杖のビンタを食らうシギュン。
結局頬をパンパンに腫らしたまま放置されてしまっていたので、しゃーなし僕が彼の頬を回復しておいた。
「お姉さんが心配なの、必死に隠してるんでしょ。僕もみんなもシギュンさんのお姉さんや生贄の人たちが無事であることを心の底から祈ってる。早く世界樹のもとへ行って、ニーズヘッグを治してあげよう」
「フィル様……ありがとうございます。けど、俺は幼児の男の子はちょっと……」
「ちょ、やっぱ僕も杖で一発殴っておこうかな……」
僕が冗談でそう言った途端、フウガの鉄拳がシギュンの頬へクリーンヒットした。あーあ、シギュンだって冗談だっただろうに……。
⸺⸺
そんなおふざけを繰り返しながらアマツ山を越えてアース山脈へと入り、夜通し登山する。
アース山脈にはたくさんの魔物が蔓延っており、レベッカとニコラスを守るようにみんなで討伐。
シギュンは斧を振り回して戦っていたけれど、遠くの魔物に“火のブレス”をお見舞いした時には、僕の少年心が爆上がりした。
竜人族は力持ちでブレスが吐ける。鬼族とはまた違ったかっこよさだ。みんな違ってみんな良い。僕はこの世界に転生してから、そう実感している。
⸺⸺アース山脈、世界樹への道⸺⸺
向こうの方に大きな巨木が見えてきて、それにしがみつくようにこれまた大きくて真っ黒な翼竜が顔を覗かせていた。
あれが世界樹、あれがニーズヘッグ!
もう少しだ、そう思ったのも束の間、竜人族の男が僕たちの方へとふっ飛ばされ、地面に叩きつけられた。
「ニルファ!? どうした、何があった!?」
と、シギュン。ニルファと呼ばれた男はよろよろと身体を起こし、こう返した。
「シギュン……!? お前、どこいってたんだよ。大変だ、生贄の儀が早まっちまって3種族が世界樹へと集まったんだが……妖精族の奴らまでニーズヘッグみたいに狂っちまって、生贄の儀どころじゃなくなってんだ。同胞の中にも自分の身体に違和感を覚えてる奴もいる。もう、“アースの種族”はおしまいかもしれねぇ……」
「何だって!?」
と、一同。
そんなニルファをニコラスが治療する。
「あれ、あんたは正気の妖精だな……ありがとよ、身体が随分と楽になった」
ニコラスは「どういたしまして」と返す。
「急ごう、世界樹へ!」
日が昇り始める中、僕たちは世界樹へと急いだ。
整備されたアマツ山を北西へとぐんぐん進む。ここは魔物が全く出現しなくなったため、暗い夜道でも安全に進める。
⸺⸺その道中で。
「君、ライカちゃんだっけ? なんて可愛らしいのに俊敏な動き。良かったら俺と空の旅にでも……」
シギュンはデレデレしながらライカにまとわりついている。ライカは「ウザい……」と一言でバッサリ切り捨てていた。
しかしシギュンはめげずにスズランへと標的を変える。
「ほわ、そんなキツい一言もクールだ! スズラン姫様、そのナイスなバディ! 俺に預けてみませんか?」
もうそれナンパじゃなくてただのセクハラだよ。スズランはあっはっはと笑ってこう返した。
「身分だけを見て妾を先に落とそうとするのではなく、己の本能に従ってライカに先に声をかけたのは妾の中ではポイントが高いぞよ?」
それに対しライカは「ただウザいだけ……」とバッサリいった。
「はっ! 高得点ありがとうございます! で、では、事が片付き次第、俺と……」
「ふふふ、すまんのう。妾には夫の候補が2人もおる故、もうこれ以上候補はいらぬ」
そう笑顔で突き放すスズランに、シギュンの心は「ぐはぁっ!」と崩れ落ちていた。
そんなシギュンへグレンが「レベッカも小人族だから幼く見えるけど、もう立派なレディだぞ?」と耳打ちする。
「え、マジ!? レベッカちゃん、俺と……!」
「ひぃぃぃっ! 結構ですぅ!」
焦ったレベッカの振りかざした魔道メイスがシギュンの頬へ「ぐほぁっ!」とクリーンヒットする。
「ふぇぇっ!? ご、ごめんなさい……!」
そんなパンパンに腫れたシギュンの頬を見たニコラスが回復魔法で治してあげていた。
「ありがとう、ニコラスちゃん。君も美しい顔立ちだ……」
「僕は男ですっ!」
「ぶほぁっ!」
今度は魔法杖のビンタを食らうシギュン。
結局頬をパンパンに腫らしたまま放置されてしまっていたので、しゃーなし僕が彼の頬を回復しておいた。
「お姉さんが心配なの、必死に隠してるんでしょ。僕もみんなもシギュンさんのお姉さんや生贄の人たちが無事であることを心の底から祈ってる。早く世界樹のもとへ行って、ニーズヘッグを治してあげよう」
「フィル様……ありがとうございます。けど、俺は幼児の男の子はちょっと……」
「ちょ、やっぱ僕も杖で一発殴っておこうかな……」
僕が冗談でそう言った途端、フウガの鉄拳がシギュンの頬へクリーンヒットした。あーあ、シギュンだって冗談だっただろうに……。
⸺⸺
そんなおふざけを繰り返しながらアマツ山を越えてアース山脈へと入り、夜通し登山する。
アース山脈にはたくさんの魔物が蔓延っており、レベッカとニコラスを守るようにみんなで討伐。
シギュンは斧を振り回して戦っていたけれど、遠くの魔物に“火のブレス”をお見舞いした時には、僕の少年心が爆上がりした。
竜人族は力持ちでブレスが吐ける。鬼族とはまた違ったかっこよさだ。みんな違ってみんな良い。僕はこの世界に転生してから、そう実感している。
⸺⸺アース山脈、世界樹への道⸺⸺
向こうの方に大きな巨木が見えてきて、それにしがみつくようにこれまた大きくて真っ黒な翼竜が顔を覗かせていた。
あれが世界樹、あれがニーズヘッグ!
もう少しだ、そう思ったのも束の間、竜人族の男が僕たちの方へとふっ飛ばされ、地面に叩きつけられた。
「ニルファ!? どうした、何があった!?」
と、シギュン。ニルファと呼ばれた男はよろよろと身体を起こし、こう返した。
「シギュン……!? お前、どこいってたんだよ。大変だ、生贄の儀が早まっちまって3種族が世界樹へと集まったんだが……妖精族の奴らまでニーズヘッグみたいに狂っちまって、生贄の儀どころじゃなくなってんだ。同胞の中にも自分の身体に違和感を覚えてる奴もいる。もう、“アースの種族”はおしまいかもしれねぇ……」
「何だって!?」
と、一同。
そんなニルファをニコラスが治療する。
「あれ、あんたは正気の妖精だな……ありがとよ、身体が随分と楽になった」
ニコラスは「どういたしまして」と返す。
「急ごう、世界樹へ!」
日が昇り始める中、僕たちは世界樹へと急いだ。
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