【完結】小さな元大賢者の幸せ騎士団大作戦〜ひとりは寂しいからみんなで幸せ目指します〜

るあか

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第四章 魔竜の生贄と悪事の鱗片

52話 古の賢者

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⸺⸺世界樹の根元⸺⸺

 世界樹をガジガジと噛んでいたニーズヘッグは、僕が近付いてくるのに気付くと『グアァァァッ』と威嚇の咆哮ほうこうを放った。
「受けて立つって? よーし、じゃぁ、僕も本気出しちゃうぞ」
 僕がそう言うと、ガーネットの騎士団のみんなはこぞって僕の後ろへと集まった。本気が見たいギャラリーらしい。

 ニーズヘッグから感じるのは、やっぱりカグツチと同じような“精霊”の気配。竜の精霊と言ったところか。つまり、本気を出しても死なないから大丈夫と言うことだ。
 魔障の量も妖精族に取り憑いていた量の比じゃない。レベッカの魔力を送るよりも一発殴って目を覚まさせるほうが簡単だ。

 問題はどの属性の古代魔法を使うか……。『火』は絶対だめだ、辺り一帯溶岩地帯になる。『水』も家が少し燃えてはいるが、アース山脈中にスコールを降らせるほどじゃない。
 『雷』……これも大嵐になるからだめ。『地』は山脈で使ったら渓谷が出来てしまいそう。『氷』……世界樹が凍って死んじゃう。『光』と『闇』は何が起こるか分からないからやめたほうが良い。
 『風』は世界樹がハゲる。

 残る属性は……『緑』属性。これは植物系の属性だ。もうこれしかない。上手くいけば世界樹の傷付いた幹も治るかも……!?

 僕が木の杖を構えるのと同時にニーズヘッグの吐き出した魔弾が飛んでくるが、フウガとライカがサッと僕の前へと躍り出て技を放って攻撃を相殺そうさいしてくれた。
「ナイス、フウライ!」
「お安い御用!」
「今度はちゃんと役に立った……!」
 2人共嬉しそう。カグツチの時は「意味なかった」ってしょげてたからね。
 攻撃を防がれて怒ったのか、ニーズヘッグは魔弾を連射する。しかしそれもスズランやグレンが防いでくれた。
「さんきゅー、2人共!」
「こやつの攻撃は我らに任せるのじゃぁ!」
「さっさとすげーの見せてくれよ、大将!」
「……了解!」

 僕は再度木の杖を構え、詠唱を始めた。
「木々に宿りし木霊こだまよ……」
 そう唱えた途端、世界樹の側にいたニーズヘッグの足元に巨大な魔法陣が秒で描かれる。よし、詠唱はもういいや。

「……以下省略。古代緑魔法……フォレスト!」
 ニーズヘッグの足元から太い木の幹がグングンと伸び、ニーズヘッグを飲み込んでいく。
 ニーズヘッグはその衝撃で気を失ったのか、幹に埋もれる竜の身体からはすぐに魔障が抜けていった。
 ギャラリーからは「すげー!」や「これがいにしえの賢者……!」などの声が次々に上がる。

⸺⸺しかし、木の幹の成長は止まらない。

 その木の幹は世界樹と融合し、世界樹自体もどんどんと成長をしていった。
 やっと成長が止まったと思った頃には、当初の世界樹に比べて幹の太さも全長も2倍くらいに成長してしまった新しい世界樹がそびえ立っていた。

 大きく成長して力を取り戻したのか、世界樹の葉からキラキラと光が降り注ぐ。これは結界と同じものだ。これでこのアース山脈も魔障の被害に怯えることはないだろう。

 ……で、ニーズヘッグは!?
 慌てて世界樹を見上げてニーズヘッグの姿を探すと、中間辺りにニーズヘッグの顔だけがポコンと出ているのを発見した。未だ気絶しているようだ。
 あれ、これヤバくない?

「ど、どーしよう!? ニーズヘッグが世界樹に埋まっちゃったよ! もうあれ助けるの無理じゃない!?」
 振り返ってあわあわと慌てる僕。そんな僕の焦り様を見て、アース種族の面々も我に返ったように急にざわつく。

 すると、ある竜人の女性がそのニーズヘッグの目の前までバサバサと飛んでいった。
 そんな彼女を見てシギュンが「フレイヤ姉さん!」と叫んだ。彼女がシギュンのお姉さんで生贄候補だった人か。
 一体何をするんだろう? まさか、不思議な力でニーズヘッグを助け出す……!?
 そんな淡い期待を込めて彼女を見守ると、彼女はニーズヘッグのご尊顔を思いっ切りビンタした。

⸺⸺パーンッ!⸺⸺

 と響き渡るビンタ音に全員目を真ん丸にする。しかしフレイヤはそんなみんなの反応など気にも留めず、パンパンと往復ビンタをしていた。

 すると、ニーズヘッグが目を覚ましたのである。
『も、もう起きた……もう、やめてくれ……』
 ニーズヘッグが絞り出すようにそう言うと、フレイヤは「あら、ニーズヘッグ様、ごめん遊ばせ」と笑って誤魔化していた。

「ニーズヘッグ様。私たちを助けてくれた古の賢者様がご心配なさっています。あなたは元々この世界樹の幹から生まれた存在。ここから抜け出せないなんて、そんな事ありませんよね?」
 と、フレイヤ。えっ、そうなの!?
『む? なんだか懐かしい感じがすると思ったら、我の身体はこんな事になっていたのか。心地良くてつい寝過ぎてしまったようだ。今すぐに出よう、フレイヤ、離れていなさい』
「はい!」
 フレイヤが言われた通りにその場から離れて僕たちの側へ降り立つと、ニーズヘッグの身体は幹をすり抜けるように普通に出てきて、僕たちは安心してその場にドサッと脱力した。
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