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連載
132話 王女の懺悔
「これが、わたくしが5歳の頃に体験した記憶です……。お二人にも、ちゃんと見えましたでしょうか?」
映像が途切れて目を開くと、目の前のクリスティーナ王女は少し辛そうな表情でそう言った。彼女にとっても、思い出したくない過去のはずだ。
「にゃぁ……」
「うん、見えたよ……。大変だったね……。ずっと、誰にも言えなくて一人で抱えてきたんだね」
「はい……。わたくしの近衛であったマリアという女性は、あの出来事から少し後に結婚が決まって、他国へ嫁いでいったのです。あの時わたくしがローベルのことを話してしまっていたら、彼女にはそんな幸せな人生は待っていなかったかもしれません。そう思うと、新しく近衛となってくれたフィンにも言えずじまいだったのです」
「そっか……」
彼女はなんて心の優しい王女なのだろう。そう思うと、かわいそうで心がきゅっと締め付けられた。
ここで、くろすけが念話で口を挟む。
『……王女殿下、そのフィンというのは、どのような経緯で近衛に?』
「はい。ローベルはわたくしの機嫌を取りたかったのか、わたくしに次の近衛を選ばせてくれたのです。フィンは、実はクラウディス公爵のご令嬢のエミリア様からの紹介で、元々ラインツ王国の聖騎士様だったのですよ」
彼女は嬉しそうにそう語った。
「えっ、ラインツの聖騎士!?」
『なんと……!』
つまり、リオンみたいな立場の人ってことだ。だったら、フィンって人も、信用できるんじゃ……。いや、だからこそ、クリスティーナ王女は巻き込みたくなくて、話せなかったんだよね。
「はい、ですので、できればフィンは巻き込みたくなくて……。それに、とても誠実で真面目な方なので、ローベルの言うこともちゃんと聞いてしまうという、欠点もあります……」
彼女はここまで話すと、慌ててこう付け足した。
「あっ、ノエル様とくろすけちゃんにもお話してもいいのかはもちろん悩みましたよ。ですが、あなた方もわたくしに会おうとしてくださっていましたし、信託に出てきた人物ですし、その……」
僕は、思わずぷっと噴き出す。
「大丈夫だよ、話してくれてありがとう。ずっと独りぼっちで、辛かったよね……」
僕がそう言うと、彼女は堰を切ったように話し出す。
「……わ、わたくし……! わたくしのせいで……! わたくしがあの時ローベルを追いかけたりしなければ、ゼオルが死んでしまうことはなかったのに……! わたくしが、ゼオルの足を引っ張ってしまったせいで……うわぁぁぁん!」
クリスティーナ王女は両手で顔を覆ってわんわんと泣き出してしまった。それだけ一人で抱え込んで、追い詰められていたってことだ。
『王女殿下……! それは違いますぞ! 悪いのはローベル。あなた様のせいではありません!』
「そうだよ、くろすけの言う通りだよ。まだ5歳だったし、まさかあんなことになってるなんて思わないよ、普通」
「でも、でも……! ノエル様も見たでしょう、わたくしを守るために、ゼオルは……! ですから、わたくしは、ゼオルの意思を引き継いで、ローベルのしようとしていることを止めなければなりません! それが、わたくしがゼオルのためにしてあげられる、唯一の償いなのです……」
「王女様……」
僕は、わんわんと泣き続ける彼女の頭をポンポンと撫でた。
しばらくしてクリスティーナ王女が泣き止むと、くろすけが覚悟を決めたようにこう念を送ってきた。
『ノエルよ、ワシも殿下に共有してもらおうと思うのだ、ワシの過去を……』
「えっ、それって……!」
くろすけが、初めて僕以外の人に自分がゼオルであるということを明かすということだ。
「くろすけちゃんの過去、ですか……?」
『はい、先に伝えておきます。ゼオルは、あなた様のことを少しも悪く思ってはおりません。どうか、そのことを忘れずに、ワシの過去を見てくだされ』
「それは、どういう……いえ、まずは見てみましょう。ノエル様、お願いします」
そういうクリスティーナ王女に、僕はこくんとうなずいた。
そして、再び記憶の万華鏡を使い、今度はくろすけの過去をクリスティーナ王女へと投影した。
◇
投影後、彼女は目を真ん丸にしながら独り言を呟いていた。
「くろすけちゃんが、ゼオル……!? うそ、そんなことが、本当に……!?」
『……殿下、ご心配をおかけしてすみません。ワシは、黒猫に生まれ変わってはしまいましたが、この魂までもは消滅してはおりませぬ。どうか、ご安心ください。これからは、ワシと孫のノエルもあなた様の力になります』
クリスティーナ王女は、再び大粒の涙を流す。
「まさか、ゼオルとこうして再会できるなんて……。ありがとう、ゼオル……。ですが、これはわたくしのけじめとして、ちゃんと謝らせてください。ゼオル、わたくしのせいで、あなたの計画を台無しにしてしまい、命までも失わせてしまいました。本当にごめんなさい……」
『良いのです、殿下……。先ほども言いましたが、悪いのはローベルです。辛い役目を背負わせてしまい、申し訳ありません……』
「ゼオル、ゼオル……!」
クリスティーナ王女はしばらくくろすけを抱きしめていた。きっと、ゼオルという人間は、彼女にとってもおじいちゃんみたいな存在だったんだろうなと、僕は感じた。
こうしてまた再会できて良かった。心から、そう思う。
クリスティーナ王女は泣き止むと、立ち上がってタンスをガサゴソと漁る。
そして、一本の杖のような物を取り出した。
「ノエル様、この『大錬金術師のメイス』をお持ちください。かつて、ゼオルがお父様から賜ったものです」
「えっ!?」
映像が途切れて目を開くと、目の前のクリスティーナ王女は少し辛そうな表情でそう言った。彼女にとっても、思い出したくない過去のはずだ。
「にゃぁ……」
「うん、見えたよ……。大変だったね……。ずっと、誰にも言えなくて一人で抱えてきたんだね」
「はい……。わたくしの近衛であったマリアという女性は、あの出来事から少し後に結婚が決まって、他国へ嫁いでいったのです。あの時わたくしがローベルのことを話してしまっていたら、彼女にはそんな幸せな人生は待っていなかったかもしれません。そう思うと、新しく近衛となってくれたフィンにも言えずじまいだったのです」
「そっか……」
彼女はなんて心の優しい王女なのだろう。そう思うと、かわいそうで心がきゅっと締め付けられた。
ここで、くろすけが念話で口を挟む。
『……王女殿下、そのフィンというのは、どのような経緯で近衛に?』
「はい。ローベルはわたくしの機嫌を取りたかったのか、わたくしに次の近衛を選ばせてくれたのです。フィンは、実はクラウディス公爵のご令嬢のエミリア様からの紹介で、元々ラインツ王国の聖騎士様だったのですよ」
彼女は嬉しそうにそう語った。
「えっ、ラインツの聖騎士!?」
『なんと……!』
つまり、リオンみたいな立場の人ってことだ。だったら、フィンって人も、信用できるんじゃ……。いや、だからこそ、クリスティーナ王女は巻き込みたくなくて、話せなかったんだよね。
「はい、ですので、できればフィンは巻き込みたくなくて……。それに、とても誠実で真面目な方なので、ローベルの言うこともちゃんと聞いてしまうという、欠点もあります……」
彼女はここまで話すと、慌ててこう付け足した。
「あっ、ノエル様とくろすけちゃんにもお話してもいいのかはもちろん悩みましたよ。ですが、あなた方もわたくしに会おうとしてくださっていましたし、信託に出てきた人物ですし、その……」
僕は、思わずぷっと噴き出す。
「大丈夫だよ、話してくれてありがとう。ずっと独りぼっちで、辛かったよね……」
僕がそう言うと、彼女は堰を切ったように話し出す。
「……わ、わたくし……! わたくしのせいで……! わたくしがあの時ローベルを追いかけたりしなければ、ゼオルが死んでしまうことはなかったのに……! わたくしが、ゼオルの足を引っ張ってしまったせいで……うわぁぁぁん!」
クリスティーナ王女は両手で顔を覆ってわんわんと泣き出してしまった。それだけ一人で抱え込んで、追い詰められていたってことだ。
『王女殿下……! それは違いますぞ! 悪いのはローベル。あなた様のせいではありません!』
「そうだよ、くろすけの言う通りだよ。まだ5歳だったし、まさかあんなことになってるなんて思わないよ、普通」
「でも、でも……! ノエル様も見たでしょう、わたくしを守るために、ゼオルは……! ですから、わたくしは、ゼオルの意思を引き継いで、ローベルのしようとしていることを止めなければなりません! それが、わたくしがゼオルのためにしてあげられる、唯一の償いなのです……」
「王女様……」
僕は、わんわんと泣き続ける彼女の頭をポンポンと撫でた。
しばらくしてクリスティーナ王女が泣き止むと、くろすけが覚悟を決めたようにこう念を送ってきた。
『ノエルよ、ワシも殿下に共有してもらおうと思うのだ、ワシの過去を……』
「えっ、それって……!」
くろすけが、初めて僕以外の人に自分がゼオルであるということを明かすということだ。
「くろすけちゃんの過去、ですか……?」
『はい、先に伝えておきます。ゼオルは、あなた様のことを少しも悪く思ってはおりません。どうか、そのことを忘れずに、ワシの過去を見てくだされ』
「それは、どういう……いえ、まずは見てみましょう。ノエル様、お願いします」
そういうクリスティーナ王女に、僕はこくんとうなずいた。
そして、再び記憶の万華鏡を使い、今度はくろすけの過去をクリスティーナ王女へと投影した。
◇
投影後、彼女は目を真ん丸にしながら独り言を呟いていた。
「くろすけちゃんが、ゼオル……!? うそ、そんなことが、本当に……!?」
『……殿下、ご心配をおかけしてすみません。ワシは、黒猫に生まれ変わってはしまいましたが、この魂までもは消滅してはおりませぬ。どうか、ご安心ください。これからは、ワシと孫のノエルもあなた様の力になります』
クリスティーナ王女は、再び大粒の涙を流す。
「まさか、ゼオルとこうして再会できるなんて……。ありがとう、ゼオル……。ですが、これはわたくしのけじめとして、ちゃんと謝らせてください。ゼオル、わたくしのせいで、あなたの計画を台無しにしてしまい、命までも失わせてしまいました。本当にごめんなさい……」
『良いのです、殿下……。先ほども言いましたが、悪いのはローベルです。辛い役目を背負わせてしまい、申し訳ありません……』
「ゼオル、ゼオル……!」
クリスティーナ王女はしばらくくろすけを抱きしめていた。きっと、ゼオルという人間は、彼女にとってもおじいちゃんみたいな存在だったんだろうなと、僕は感じた。
こうしてまた再会できて良かった。心から、そう思う。
クリスティーナ王女は泣き止むと、立ち上がってタンスをガサゴソと漁る。
そして、一本の杖のような物を取り出した。
「ノエル様、この『大錬金術師のメイス』をお持ちください。かつて、ゼオルがお父様から賜ったものです」
「えっ!?」
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