妖精たちと出会った日

大森かおり

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1 ほかほかのパンプキンパイはいかが?

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 おばあちゃんはどうやらその時、いんげん豆やえんどう豆と言った、緑と白の豆が、たくさん入った、丸い木のボウルが置かれているテーブルの、真ん前にある椅子に座って、一粒ずつ、丁寧に、さやから豆を取り出している最中のようだった。
 あれれ? これはもしかすると、今晩の夕飯かもしれない、と、キコリは、テーブルの上を見てさっした。
 それからキコリは、再び、キコリを見ていたおばあちゃんに目をやった。するとおばあちゃんは、びっくりして目を丸くして、作業をしていた手を止めていたようだった。
「あらあら、どうしたんだい。そんなに慌てて」
 おばあちゃんが、キコリに向かって、あきれた様子で言った。
 キコリは一瞬、喉まで出かかっていた言葉を言おうとして、口を開いたのだけど、突然、気が変わって口をつぐんだ。
 そしてそのあとすぐ、
「ああ、うーんと……なんでもない!」と、声を張り上げた。
 おばあちゃんは、そんなキコリの様子を見て、わけがわからないというように、
「まあ」と言って、肩をすくめた。
 キコリは、本当はおばあちゃんに会いたくてたまらなかったのだと思いながらも、そんなこと照れて言えるわけがなく、それがなぜなのか答えを誤魔化しながら、ゆっくりと、椅子に座っているおばあちゃんの元へと歩いた。
 おばあちゃんは、キコリが家へ帰ってきたことによって、持っていた豆を皿に乗せ、かけていた赤いメガネをずらした。次に、頬を真っ赤にして、いまだに息を切らしているキコリが、自分の元へくるのを待った。
 まもなくしてキコリは、おばあちゃんの近くにいくなり、床にひざをつくと、おばあちゃんのひざにもたれかかった。
「ねえおばあちゃん。あのね、いまキコリ、お腹がペコペコなの」
 床にひざをついたままのキコリが、甘えた声で言った。
「だから、なにか食べたいなあ」
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