妖精たちと出会った日

大森かおり

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3 洞窟のポワロウ

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 ナーラの目を、ぶれずにまっすぐ見つめながら、ポワロウが言い放った。
「そう、そうなのね……」
 ナーラが言うと、ポワロウは、別になんてことはないとでも言うように、
「そうさ」と、とてもあっさりしながら言った。
「それって、さみしくないの?」
 きっとさみしいに決まってると思いながらも、ナーラが尋ねた。
 ポワロウはうなりながら、すこし考えているそぶりを見せたあと、
「一人でいるのが、ってこと?」と言った。
「ええ、その通りよ」
 ナーラが言った。
「だって、誰かと話すことって、とても楽しいことだもの。それに、元気が出てくるものじゃない? それなのに、人とあまりかかわらないだなんて、えらくつらいことだわ」
 ナーラは、自分が一人だけで、誰とも話さない、なんて状況を想像しながら言った。
 ポワロウは、ナーラの言うことを聞いて、一瞬、ぽかんとしたあと、
「うん、そう思う時も、たまにあるよ」と言った。
「でも、この世界には、純粋な人が、あまりいないからね……」
 なにやら、かなしみやら落胆やらが、いろいろと混じり合った、複雑そうな顔をしながら、ポワロウが言った。
「そう……」
 ナーラは、ほかにそう答えるほかなかった。
「ところでポワロウは、この洞窟に、いつからいるの?」
 ふと思いついたことを、続けてナーラが尋ねた。
「昨日からいる」と、ポワロウ。
「まあ、昨日から? 昨日からずっと、ここで何をしていたの?」
 ナーラは不思議でたまらなくなり、つい前のめりになって言った。
「僕は、世界のいろんな、暗いところに光をあてる、なんてことをしてる。だから僕はここでも、光をあてていたところなんだ」
 ポワロウはそう言いながら、いまでも暗い洞窟の中に、自身のまばゆいほどの光を、広範囲に当てていた。
「へえ、それはつまり、、ってことでいいかしら?」
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