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1 絶対絶命ゴーカート

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 すこし疑っているのか、ルーカスは確認するように言った。
「がんばったらね」
 念を押すように乙葉が言った。
 遊びたいとごねるのは、もはやルーカスのお約束のようになっているが、最近、その扱いにも慣れてきた気がして、乙葉はすこしうれしく思った。
 話しながら小屋に戻ると、京一と久遠の二人の掃除は、すでに終わっていたようだった。見ると、小屋の中は、どこもかしこもピカピカに輝いていて、ほこりひとつとして落ちていないように見えた。
 そのことに感動した乙葉は、
「わー、きれい」と、思わず声をもらした。
「本当。こんなにきれいにしてくれるなんて、思わなかった」
 おどろいた様子の柚子が言った。
「わーい! ピッカピカだー!」
 ルーカスはよろこびながら、空中を飛びまわっている。
 久遠は、そのみんなの反応を目にして、照れ笑いをすると、
「がんばりました」と言った。
 乙葉は、京一と久遠のいる方を向くと、
「二人とも、やるわね」と言った。
 久遠は相変わらず照れ笑いをしていたが、京一は無反応だった。
 そのあとルーカスは、きれいになった自分のベッドの上に飛び乗り、はしゃぎはじめた。
 それを見た京一は、途端に難しい顔をすると、
「ルーカス。このあとすぐに、ゴーカートにいくんだ。そうやって遊んでいる暇なんてないぞ」と言った。
「えっ? もういくの?」
 おどろきながら乙葉が言った。
「当然だ」
 京一が断言した。
 それを聞いた乙葉は、近くにあったテーブルの上に、つかれたように両ひじを置くと、
「なにもそんなに急がなくても。すこし休憩してからにしない?」と言った。
「なに言ってんだ。俺たちには時間がないんだぞ」
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