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2 不審人物

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「言われてみれば、たしかにそうだ」
「きっとここで誰かが食べて、床に捨てたんだわ」
 乙葉は、そうにちがいないという顔をした。
「どうしたの?」
 声を聞きつけたのか、乙葉と京一の元に、さきほどまで厨房にいた、ルーカスと柚子がやってきた。
「それ、お菓子の箱じゃない」
 乙葉の手にしているゴミを見ながら、柚子が言った。
「ここに落ちていたらしい」
 冷静に京一が言った。
「え! そうなんだ」
 ルーカスがおどろいて言った。
「私たちの食料なのに……」
 くやしい思いを噛みしめながら、乙葉が言った。
 乙葉たちのその様子を見て、すぐに状況をさっした柚子は、
「わかった、そういうことね」と言った。
「なんの断りもなしに、勝手に人のものを盗んで食べるなんて……まったく、人間の風上にも置けない人たちだわ」
 柚子は呆れと怒りが混ざったような声でそう言った。
 その柚子の考えに同感した乙葉は、
「本当にそうね」と言った。
「よし、もうここは十分探して、いないことがわかったし、別の場所を探すか」
 その場にいる全員が、暗い気持ちになりかけているのをさっした京一が、切り替えるように言った。
 そして、四人はカフェから出た。
 外はまだ、完全に暗くなったわけではなく、上を見上げると、空の様子が、赤と青がきれいに混ざり合って、鮮やかなグラデーションになっていた。
 どうやら犯人を探し始めてから、ずいぶんと時間がたってしまっていたようだ。これからどんどん日が落ちて、バーサークが突如出てくるのも、時間の問題だ。
「ねえ、四人で固まって探すのもなんだし、また、二組にわかれて探さない?」
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