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2 不審人物

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 苛立っているルーカスが言った。
「わかった、いくから」
 心残りがあったが、乙葉は仕方なく、その場をはなれた。
 別に、ルーカスと探すことに、不満があるわけではない。ルーカスは、普段はやんちゃな子供だけれど、いざという時、たとえばバーサークがきても、助けてくれる頼りになる存在だ。だから、犯人を見つけて、万が一襲いかかられたとしても、ルーカスと一緒なら、なんの心配もいらない。それに、京一と一緒に探したいだなんて、そんなことは、すこしも思っていなかった。
 でも、京一が、柚子と二人きりでなにかをするのが、いまになってどうしてか、とても気になった。
 今日だって、おなじようなことがすこし前にあった。京一と柚子がゴーカートで、一緒に探しにいこうとしていた時だ。その時は、それほど気にならなかったのに、どうしていまは、こんなに気になるんだろう。
 柚子の方が乙葉より、か弱いと言われたから? それとも、あの二人が、すこしいい雰囲気だと思ったから?
 結局、考えてもはっきりとした答えは出なかった。けれど、深く考えるのはいやだったため、乙葉はルーカスと共に、犯人探しに専念することにした。

                 ♢♢♢
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