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3 隠し部屋

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「どうしてもゆずらない気か?」
 にらみながら、大柄な少年が言った。
「もちろんよ!」
 きっぱりと柚子が言った。
 大柄な少年は左手を腰に、右手を額に当てて、大げさに、やれやれとでもいうような態度を示したかと思うと、
「じゃあ仕方ない」と言い、今度はえらそうに腕を組んだ。
「女と言っても、俺は容赦しないぞ!」
「ねえ、柚子ちゃん、私はもういいよ。別の遊具で遊ぼう」
 後ろにいる陽菜が、なにやら危険を感じたのか、不安そうに言った。
「だめ!」
 両手を腰に当てて、憤慨ふんがいしながら柚子が言った。
「だって、私たちがさきだったんだから、順番でしょ?」
「うん、まあ、それはそうかもしれないけど……」
 陽菜は柚子の気迫に負け、それ以上なにも言えないでいるようだった。
「やっちまおうぜ!」
 ひょろ長い少年が、我慢できなくなったようにそう言った。
「ああ、そうだな」
 大柄な少年は意地悪く笑い、ひょろ長い少年に同意した。
「俺らに逆らうとどうなるか、こいつらにたっぷりと教えてやるぜ!」
 指をポキポキと鳴らしながら、だんだんと、大柄な少年は柚子に近づいてくる。
 そんな中、柚子は怯むことなく、大柄な少年を威嚇いかくした。
「やれるもんなら、やってみなさいよ!」
「柚子ちゃん、やばいよ」
 陽菜は、柚子の手を引っ張った。
「早く逃げよう」
「逃げない!」
 柚子はけたたましい声を上げた。
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