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3 隠し部屋

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 京一を、とおりすぎてしまったことに気づいた、大柄な少年は、すぐに方向転換した。そして、またもや京一に向かって、先ほどとおなじ姿勢のまま、勢いよく突っ込んでいった。
「うおおおお!」
 顔を真っ赤にしながら、大柄な少年が、雄叫びを上げた。
 しかしこんな状況でも、京一は変わらず、落ち着き払っている。
 すこし遠くにいた柚子と陽菜は、そんな二人を、はらはらしながら見ていた。
「京一くん、がんばって!」
 柚子が声をかけた。
「お兄さーん! がんばれー!」
 おなじく陽菜も、京一を応援した。
 もしかしたら、二人の声は、京一には聞こえていないかもしれない。なぜなら京一は、大柄な少年をまっすぐ見据えて、なにやら集中しているように見えるからだ。
 その姿と言ったら、まるで剣道の試合を見ているかのようだった。
 京一は突っ込んでくる大柄な少年を、ふたたび軽やかにかわした。大柄な少年は、何度もかわされることで、とうとう怒りが頂点に達したようだった。
「お前! 逃げてばっかりいないで、堂々と正面から戦えよ!」
 息を荒げながら、額に大量の汗をかいて、大柄な少年が言った。
「そうだそうだ!」
 ひょろ長い少年が加勢した。
 しかし、言われた京一は、無言でいる。
 大柄な少年は、そんな京一を見て舌打ちすると、馬のように、地面を前掻きして、
「ようし、そっちが攻めてこない気なら、俺が本気を出して、次が最後にしてやるぜ」と、ニヤリと笑いながら言った。
「覚悟しろ!」
 その言葉を合図に、大柄な少年は、京一がいるところへと、猛スピードで向かっていった。そんな二人の戦いは、柚子たちのところまで熱気が伝わってくるくらい、白熱していた。
 それまで、かわすくらいでなにもしないでいた京一は、時がきたというように、ようやく動き出した。なにをするのかと、柚子はハラハラしながら、京一の動向を見た。するとなんと、京一は、片手に持っていた傘を両手で持ち、かまえはじめたではないか。
 
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