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3 隠し部屋

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 おどろいて乙葉はルーカスを見た。
「うん、そうだよ」
 こともなげにルーカスが言った。
「その剣、一度見てみたいわ」
 もはや見る以外の選択肢はないと思い、乙葉はルーカスにねだった。
「いいよ、見せてあげる」
 快くそう言うと、ルーカスは本棚の前から飛び去った。
 乙葉はすぐに後ろを振り向いてルーカスを探した。しかし不思議なことに、さきほどまでおなじ部屋の中にいたルーカスの姿は、どこにも見当たらなくなっていた。
「あれ?」
 一体どこへいったのかと、乙葉は困惑しながらまわりを見た。
「ルーカスー、どこー?」
 すると、どこからかルーカスの声が聞こえた。
「ここだよー! 乙葉」
 声のする方を見ると、ピアノの奥にある、右側の壁の扉前で、ルーカスが両手を挙げて、上下に浮かんでいる姿が目に入った。
「ここ、ここ!」
 ルーカスは自分の居場所をアピールするように、声を上げている。どうやら、ルーカスはピアノの影に隠れて見えなくなっていたようだ。
「まあ、そんなところにいたのね」
 安心しながら乙葉が言った。
「いまいくから待ってて」
 その言葉通り、乙葉は手に持っていた本を元の場所にもどすと、歩いてルーカスの元までいき、すでに開いている扉の前で立ち止まった。
「やっときたね」
 待ちくたびれたように、ルーカスが言った。
「だって、ルーカスの姿が見えなかったんだもの」
 乙葉はすぐに弁解した。
「ねえ、それよりここ、さっきの遊び場じゃないの?」
「そうだけど?」
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