上 下
119 / 244
3 隠し部屋

40

しおりを挟む
「うわあ、すごい」
「ね? 言ったとおりでしょ?」
 得々とルーカスが言った。
 大量の金貨にルビー、サファイアにダイヤモンド。ネックレス、指輪、王冠……その他諸々。宝の山だ。
 目がまわりそうなほどたくさんあって、乙葉は一瞬、気を失いそうになった。しかし、目を覚ますために、一度自分で自分の両頬を叩き、すぐに正気を取り戻した。
「剣はどこ?」
 言いながら、乙葉はすばやく剣を探した。
「あ! そこに剣がある!」
 室内の中央付近に、その剣はあった。どうやら、ほかの財宝にまぎれながら、とてもわかりづらい場所に、刺さっているようだった。
「よく見つけたね」
 感心した様子で、ルーカスが言った。
「うん、でも、これ全部本物? 偽物じゃないの?」
 目を細めながら、乙葉が尋ねた。
「正確なことは僕にはわからないけど、多分本物だよ」
 曖昧にルーカスが答えた。
「多分って」
 ルーカスのいつもの適当な返事に、乙葉は呆れながら言った。
「あはは、本物ならほしいと思った?」
 ルーカスは、挑発的な顔をして言った。
「でも残念でした。下のガラスから中身を取り出すには、持ち主の顔認証が必要なんだよ。だから、僕たちで開けるのは、絶対に不可能だ。だからここにある財宝は、永遠に眠ったままだよ」
「顔認証……」
 乙葉は呟きながら考えた。
「一体誰が、この宝の山の持ち主なの?」
 部屋に入れば、目立つ場所に、剣が飾ってあって、すぐに触ることができると思い込んでいた乙葉は、予想外のことが起こり、落胆と混乱の最中にいた。
しおりを挟む

処理中です...