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4 財宝強盗

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「いてえ」
 倒れたあとに、銀司がうめいた。
 そこへルーカスがやってきて、銀司の顔面を、容赦ようしゃなく引っ掻きまくった。
「おい、やめろ! やめろって!」
 銀司が必死でそう叫んでも、ルーカスはやめることなく、引っ掻きつづけた。
 その時、四郎は足を止めて、後ろで静かに銀司とルーカスを見ていた。そしてなにを思ったのか、銀司がやられている隙に、突然、出口に向かって、抜き足差し足で歩き出した。
「あなたも、逃がさないわよ」
 逃げ出す四郎の前に立ちはだかった、乙葉が言った。
 四郎は苦い顔をして、乙葉を見た。
 そのあと、乙葉は四郎の股間に向かって、思いきり足で蹴り上げた。
「ひっ!」
 蹴られた四郎が、思わずうめいた。
 そして苦しげな顔をしながら、蹴られた股間を手で押さえ、そのまま銀司とおなじように、前から地面に倒れた。
 倒れたところで、念には念をというように、内田が四郎の背中に向かって、ドスン、と胸を張りながら座り込んで、逃げないようにさせた。
「僕の体重に、耐えられるかな?」
 ためすように内田が言った。
 その様子を、小屋の中で見ていた男は、
「銀司、四郎……」と、呆気にとられるように呟くと、ガックリとうなだれた。
 男はもう勝ち目がないと思ったのか、そのまま、なにもすることなく、ただじっとしていた。
 その様子を見た京一は、
「どうやら、俺たちの勝ちみたいだな」と、したり顔で言った。
 それから京一と久遠の二人で、三人の男を縄できつく縛り、逃げられないようにした。
 そして一連の事件を明らかにするために、全員は小屋の中に集まり、三人の縛られた男を相手に、尋問することにした。
 足をケガしている久遠は、壁際の椅子に座り、ひざに手を置いて、犯人を落ち着きながら、見据えていた。となりにいる京一は、壁に背をつけて楽にしながら立っている。さらに反対側の椅子に座っているのは内田で、まだ見慣れない小屋を、めずらしそうに見まわしていた。その上では、ルーカスがぷかぷかと浮きながら、みんなを見下ろしている。
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