Mediocre Magic

猫町氷柱

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第1章過去編

第1話 聖なる森

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 聖なる森は四大精霊の1人であるグノームが統治しているとされている。自然のエネルギーを司り、大地に栄養を供給し、大地を創造したとされている。
ここに生える植物はすべて魔法の力で生み出されている。
 そのせいか木の実などにも多少の魔力が宿り、配合によっては傷や病の迅速な回復につなげることが出来る。
 そして目的の蒼魔草は森の奥地に生え、月の光に蒼く輝くことからそう名付けられている。中々、険しい高地にあるため通常はあまり取りに行くことはないがその効用足るや申し分ない。旅人の中にはこれをすり潰し粉上にすることで薬とし常備している者もいると文献には書かれていた。
 ロレッタとロザはランタンを片手に夜の森を進んでいく。やはり昼間と比べると鬱蒼としていてどこか雰囲気がでているように見えた。
 それを察してかロザが
 
「もしかしてびびっているの。ロレッタらしくないよ」

「だ、大丈夫。ちょっといつもと雰囲気が違うから馴染まないだけ」

その時、突如森の茂みの中からカラスが飛び立った。激しい羽切り音が響き気づけばロザの腰にしがみついてしまっていた。

「ちょっと、本当に大丈夫なの?」
ロザは全く動じずクールな表情を浮かべている。

「ロレッタって意外と臆病なのね。まあ、そんなところが可愛らしいんだけど。ほら、とっとと行くよ」

「ああ、ちょっと待って!!」

 ロザはランタン片手に森の奥に向かってスタスタ進んで行く。途中道を蔦が覆っている箇所があったがロザの得意な炎魔法で難なく燃やし先を急ぐ。

 その後ろを警戒しながら進むロレッタ。彼女は魔法が使えない。魔力がからっきしないのだ。どれだけ修練を積んでも身につかないことに憤りを感じていた。親は偉大な白魔道士だったと聞かされた事もあったが年端もいかない内に病気でしんでしまったからあまり家族との思い出は数少ない。でも温かい家庭だった記憶はなんとなく残っている。

 懐かしい記憶を呼び戻そうとぼうっとしながら歩いていると突如止まったロザの背中に顔をぶつけた。
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