Mediocre Magic

猫町氷柱

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第2章 始まりの地

第2話 死霊の還る場所レディベト 鍵奪還編

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 扉の目の前まで行くと改めて立派な扉だと感じた。瑠璃色に輝く扉、一点の汚れもない綺麗なその姿に手入れが行き届いていることが窺えた。
 鍵穴はどこにもなく取っ手もないこの扉をどうやって開けようか途方に暮れとりあえず手を翳してみると扉が光り、内側に開閉した。
 ど、どうして開いたんだろうとびっくりしたが開いたことにこれで前に進めると嬉しさがこみ上げてきた。
「ほほう。ここを開けるとは何年ぶりじゃろうか」
部屋の中から女性の声が中から聞こえてきた。ロレッタはこんな地下に人がいたことに驚きお辞儀をしながら中に向けて歩み出した。
「あなたは?こんなところで何をしてるんですか?」
「儂はアーデンシュレイン城の鍵番じゃよ。ここでずっと守ってたんじゃが。退屈でな。そろそろ誰か来ないかと思っていたところじゃよ。魔力がなく、誠実な者にしかここを開くことは出来ぬ。つまりお主は良い心の持ち主ということじゃ」
 そういう仕掛けが施されていたのか……アシュトトさんが私に託したのはそういう理由が……
「何を頬けておる。鍵を取りに来たのじゃろう?そこに掛けてあるから持っていくと良い」
 案外あっさりしているなと思いながら彼女が指を指す方を見ると銀色の鍵が掛かっていた。
「こんな素性の分からない私に簡単に錠前を渡していいんですか?」
「さっきも言ったじゃろう。お主は悪しき者ではないことが証明されている。それにそろそろリンネ様の呪いを解いてくれないと儂も生活が苦しゅうてな。いつまでも鍵を守っていても暇だしのぅ」
女性は退屈そうに欠伸を漏らした。
「ありがとうございます。もしよければ一緒に行きませんか?リンネさんのことはお聞きしました。呪いのことも……私はその呪いを解きに行くんです。少しでも内情に詳しい方は1人でも多いと助かるんです」
「ここから連れ出してくれるのか?お主は優しい子じゃな。嬉しいが儂はここに縛り付けられている身、ここから出ることは叶わないのじゃ。儂の願いは唯一つリンネ様を救ってくれたら万々歳じゃ。それさえ叶えば儂は万々歳じゃ」
ロレッタは残念そうに俯きながらも自分の使命を改めて実感した。
「そうですか……分かりました。必ずやリンネさんを救ってきます。最後にあなたのお名前をお聞かせ下さい」
「そうじゃな……アルカノア、これが儂の名じゃ」
アルカノアはニコッと微笑んだ。ロレッタはその名を刻み、鍵を受けとった。
そして、一礼し急いでアシュトトの元に戻るのだった。
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