こぼれ話(人はこもごも)

びっと

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アイさん

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アイさんは、郁男のお母さんです。

郁男の口癖は
「かあちゃ~ん」
だった。

春吉さんとかけおち同然?に一緒になって、頼りない旦那の世話と8人の子供たちを育てた、素晴らしい母ちゃん。ただ、嫁たちからの評判はとても悪い。嫁たちが集まると、アイさんの悪口大会。物投げつけてきたりとか苛烈な人だったからね。


アイさんが郁男を産んだ年、長男のひろさんが死んだ。享年20才。
息子に先立たれるのすごく辛かったと思う。

小さい郁男は、夜に添い寝してくれるアイさんが、ひろにいさんを思い出してはシクシク泣いている姿をみていた。
幼い子ながらになにかムニャムニャ慰めの言葉をアイさんに毎晩言っていたらしい。


かけおち、と言いつつも戦中はアイさんの弟が実家から食料をよく運んでくれたり(恩人)、春吉さんの父が庭の離れに住んでたり(郁男めっちゃ恐がってた)、洋服屋の春吉さんの妹が当時は珍しいジーパンをくれたり、親戚付き合いはよくしてた。

なのに、郁男の兄弟全員「父さんと母さんはかけおちだった」と、なんか自慢げに言ってた記憶がある。
大恋愛を強調したいのか?話を盛る家系なのかな?

アイさんが死んで、春吉さんは離れられないように、同じ年に死んだ。
大恋愛だったんだろうな。
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