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今日は、どこへ行こうかと考えながら仕事を終えて、家路を急ぐ。フェルに会うのは夢の中なのに、服は何にしようかと考えてしまう。
いつのまにか寝ていたらしい。いつもの湖のほとりに立っていた。フェルは、座って本を読んでいる。
「フェル、今日は町じゃなかったのね。」
「ああ。ルー、早かったな。」
「ねぇ、フェルの待ち人ってどんな人なの?」
「私が心から愛するひと。彼女は、私を置いてどこかへ行ってしまった。でもきっとまた会えるから待っている。」
「そうだったんだ。じゃあ私はお邪魔だね。」
「ルーといると待つのも楽しみになるから、いて欲しい。」
失恋確定なのに、いて欲しいなんて言われたら会うのをやめることなんかできない。 
「フェル、私じゃダメ?その人の代わりにならない?」
「ルーは、まだ小さい子だからかわいい妹みたいなもの。」
「私はもう子どもじゃない。17歳で働いてる大人よ。」
「私にはまだ初めて会った時とあまり変わってないようにみえる。まだ背も低い。」
「フェルと会ってからもう12年経つんだよ。」
「私にはまだ一月も経っていない。こんなに幼いのに働くとは大変だなと思っていた。」
「フェルには私は何歳に見えてるの?」
「最初5歳と言っていたではないか。」
夢の中だからなのか?フェルには私は5歳にしか見えてないとは、悲しすぎる。
「フェル、私は今17歳よ。そう思って見て欲しいです。」
フェルが1回瞳を閉じて、ゆっくりと開く。
「本当だ。ルーシェンになった。待っていたよ。おかえり」
フェルの待ち人は私⁈
しかもなぜ私の本名を知っているの?
「やっと私の元に帰って来てくれたんだね。」
「フェル、私が待ち人ってどういうことなの?」
「私はルーシェンが死んだと言われて居なくなってから、ここで長い長い時間ルーシェンを待っていた。ルーシェンが同じルーシェンという名前で同じ魂で帰って来てくれてうれしいよ。」
そう言われておぼろげながら、前世この人を愛し、先に逝ってしまったことを思い出した。
「フェリクス。私も会いたかったわ。」
抱きつくと優しく抱きしめてくれる。
「フェリクスは、どこにいるの?私と同じように生まれ変わっているの?」
「私はずっと湖で待っているよ。ルーシェンが本当に来るのを待っている。」
そこで目が覚めた。
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