私は悪役令嬢のはずだけどお兄様の小姑役だけ全うしたい。

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雪祭りは、キャンベル王国で1番大きなイベントだ。
開放された王宮の庭に雪像が作られて、ランタンが飾られ自由に散策が出来るし、どこの家でもご馳走を食べる。王宮では各国の大使や王族を招待してパーティーも開かれる。


今年はそこに次期国王のアーノルド王子と婚約者でグレンスティッドから輿入れするエミルフェシア・ギルフォード公爵令嬢の結婚披露パーティーが重なったからと例年以上に多くの来賓や貴族が参加している。

パーティーに先んじて神殿で結婚の儀が行われた。
神官長が立ち合い、神殿で誓いを行い婚姻証書にサインすれば、終わりなので、あっけなく終了し晴れて夫婦となる。

夜になり披露パーティーが始まった。
国王夫妻のすぐ横に用意された席にアーノルドと並んで座る私のドレスは、ゆったりとしたお腹を締め付けないものだが、切り替えとフリルをふんだんに使い、可愛らしい印象でマタニティに見えないものにしてもらった。
最近、つわりも落ち着いてなんでも美味しくて、つい食べ過ぎてしまうので、妊婦だからか太ったのか微妙なのが問題となのよね。

少しは運動したいのだけど、いま横にいる過保護大王が危ないからとなかなか自由にさせてくれないのが、悩みどころだったりする。

今日もドレスに合わせたヒールが高すぎるとクレームが入り、ほとんどぺったんこな靴に変えられた。ドレスの下にヒールのない靴って普通ないし、そこまで高くなかったから大丈夫だったのになぁ。おかげでアーノルドとの身長差は20センチ以上あって、やたらバランス悪いし、

「ダンスはどうするの？」

と聞けば、

「なし！」

と即答された。完全に妊婦だとバレると思う。

それでも、アーノルドが留学中なので普段は遠距離状態だから、帰ってきた時の過保護を許しちゃう私も甘いのかもしれない。
冬休みが終われば、1ヶ月ほどの授業の後、試験とお兄様の卒業式なので、もうすぐ一緒に暮らせるんだなと思えば、なんとなく口元も緩んでしまう。

「どうかした？」
「えっと…あと少しで留学終わるから一緒にいられるなと思ったの。」
「エイミー、かわいい。」

真顔で言われ、顔が真っ赤になる。

「殿下。御結婚おめでとうございます。」
「大使殿、貴国からの祝いの品ありがたく受け取らせていただく。今日は、楽しんでいってくれ。」

挨拶に来る各国の招待客の相手をしているとドレスを着た1人の年配女性が、近づいてきた。

「殿下、妃殿下。本日はご招待いただき、ありがとうございます。エミルフェシア妃殿下のお父上ギルフォード公爵領トゥエンテ商会会長、サリーア・トゥエンテでございます。御結婚おめでとうございます。」

にっこり笑う会長にアーノルドの方をみる。

「過日は色々と世話になった。あれについては他言無用だが、妃の出身地で働く女性を支援する商会の援助は今後していきたいと思っているので、いつでも王宮に妃を訪ねてくれるといい。」
「会長…」
「招待状いただいた時はまさかと思いましたが、こうしてお二方にお祝いを申し上げることが出来て本当に嬉しく思います。今後ともよろしくお願いいたします。」

堅苦しい挨拶をしながら、私にウインクしてくれる会長に会えて嬉しかった。

「アーノルド、ありがとう。」
「何が？」

大っぴらに言えないから、わざと揶揄うような顔をするけれど、ちゃんと考えてくれているアーノルドに感謝しかない。

こうして雪祭り兼結婚披露パーティーは盛況のうちに幕を閉じた。