でんでんむしが好きな君

ひらどー

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興味をかきたてる紹介

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 現在、このエッセイの連載の他に、ブログの運営もしている。小説の書き方を中心にまとめたものだ。自分の読んだ本の紹介記事もこちらに掲載している。これがなかなか難しい。
 最近気づいたのだが、私は何かを紹介しようとすると、余計なことまで言ってしまうきらいがある。感じたことを全て書こうとするので、全体を見ると何を言おうとしているのかが分かりにくい。結果、その記事を読んでいる人は、紹介された本に興味を持つどころか、その記事から興味を失ってしまう。本の良さを人に伝える以前の話だ。自分のする紹介はどうにも面白くない。これに気づけたのは夫のおかげだ。
 夫は私と違い、文章はあまり読まない。インドアが好きな私とは反対で、アウトドアな趣味が多い人だ。バイクや車、キャンプにバーベキューといったものを好む。本屋に行くと、ミリタリー関係の雑誌の辺りにいることが多いが、たまに高尚な科学雑誌を開いているから驚かされる。空想よりも現実が好きなのだそうだ。対して私は、空想の世界が大好きだ。
 共通の趣味がないような夫婦だが、映画鑑賞だけは一致している。交際のきっかけもこれだった。結婚後のいまも一緒に映画を観る。映画の好みが似ているのだ。あくまで似ているだけだ。私の観てきた映画の全てを彼も観たことがあるわけではないし、彼が観たことのある映画の中には私の知らないタイトルもある。映画を借りる前はその映画を観たことのある方が、内容を紹介する。紹介された側が面白そうだと判断したときのみ借りるというのが暗黙のルールだ。夫は、その紹介が絶妙に上手い。
 名前は知っていたが、興味がなくて手を出さなかった映画が何本かある。その映画の内容を夫が説明してくれる。すると、不思議と興味を掻き立てられるようになる。そして視聴してみると確かに面白い。これが夫のすごいところだ。
 こう言ってはなんだが、夫の語彙は私より少ない。夫がなんとなく使っていた誤った日本語を私が訂正することもしばしばだ。その少ない語彙を活かす力が強い。真似しようと努めているがどうにも上手くいかない。コツを聞いてみたが、無意識のうちにやっているようで具体的な助言はもらえなかった。内容を完結にまとめ、余計なことを言わないようにしている、ような気がする。
 夫のようないい紹介ができるよう、記事を何度も書き直している。少しでも興味をそそれるような文章を書けていたら嬉しい。
 私も夫も、もうすぐ三十路だ。百歳までは生きるつもりなので、あと七十年は一緒にいる予定だ。あと十年もあれば、生きている内にどうにか彼の素晴らしい技術を会得することができる、かもしれない。
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