生存本能

生存本能

この命、余命幾ばくもないそうだ。そう告げられていた。
一層のこと、楽になろうと男は四十五口径の銃を額に当てている。
病気の進行は明白だった。
彼がやっている事はまさにロシアンルーレットである。
しかし、引き金を引いたが、弾は出なかった。
「そうか…まだ生きろと言うことか…」
彼は戦争の中でしか充足を得られない人生を歩んできた。
男は拳銃を下ろし、冷たい汗が額に滲むのを感じながら、虚無に包まれた部屋の中で一人、深い呼吸をついた。四十五口径の銃口を額に押し当てたとき、すべてが終わるはずだった。しかし、運命は彼に別の選択肢を与えたかのようだった。
男の人生は、戦場での血と鉄にまみれた日々に依存していた。平和では生きられない。死と隣り合わせの戦争こそが彼にとっての唯一の現実だった。だからこそ、病に倒れ、徐々に迫る死を受け入れるよりも、自ら命を絶つ方が彼にとって自然な選択肢だったのだ。
だが、今日引き金を引いた瞬間、彼はそれを超える何かを感じた。それは単なる生存本能なのか、それとも残り少ない命の中にまだ何か意味があるのかはわからない。
彼にはまだ何かやり残したことがあるかもしれない。そのために、残り少ない時間をどう使うべきか、男は再び考え始めた。