絶対呪ってやるからな!

こう

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71 どさくさに紛れてなにしてたの

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 モーリスに文句を言われたけど意見は変えないわよ。

 いつも部屋のどこかに居るはずの侍女が一人も居ない。なのに男三人が未婚の女性の寝室に居るのって問題でしょ。相手が私だからって手抜きしてるんじゃないわ!

「ごめんねメイジー。だけど現場をあまり人に見せるわけにはいかないから我慢してくれ」
「現場…?」
「呪いに対処する現場は、知識は、あまり知られないようにしているんだ」

 言いながら私の肩を押して寝台に横たわらせて、はだけた布団を首のあたりまでかけ直すスタン。落ち着いたところで、自分がやけに汗をかいていることに気付いた。髪が頬や額に貼り付くくらい汗をかいている。
 そのくっついた髪を、スタンが柔らな手付きで整えた。額から頬へ指が動き、最後に目元を拭って遠ざかる。

 …私、泣いていた?

「詳しい話はまたあとで。それよりも痛みはない?」
「え…あれ、ないわ…」

 そういえば痛くない。
 最後に強烈な痛みを残し、全身を苛んでいた痛みは消えていた。ギシギシうるさかった騒音も今は無い。頭痛はすぐに引かないけれど、さっきよりかなりマシ。

 …痛みはないけど、ちょっと身体が痺れて動きにくい。

「よかった」

 …本当に安心したようにスタンが笑うので、私はなんと言ったら良いのかわからなくなった。

 一体何が起きたのか聞きたくて仕方がないけど…スタンが詳しい話は後だと言ったら後になるから…。
 いや納得いかない話すぐ聞かせろ! 何が起きたのよ私に!

「スタン! 一体何が」

 問い質すため起き上がろうとする私の額に、スタンの手が置かれる。
 思ったより冷たい大きな手。額だけじゃなくて目元も隠れた。
 別に押さえ付けているわけじゃないのに、それだけで起き上がれない。

 あれ? もしかして思っているよりダメージがある?

「その前に身支度だ。汗を流そう。モーリス、湯の準備」
「指示出すからちょっと待て。エヴァ様にはお伝えするか?」
「心配していたから伝えてあげて」

 妹を思い遣る優しい声がする。スタンが手を置いたままだから、視界が暗い。でもって冷たい手が心地よくて振り払えない。布団が重くて腕が出せないってのもあるけど。このふわふわ布団こんなに重かったかしら。

「ロドニーは応接室から出ないこと。出たら捻るね」
「一番の功労者にその対応は酷い」

 不満そうなロドニー。そういえばこいつなんで居るの。
 功労者ってことは、ロドニーに助けられたってこと?

「必要以上に触っていたの、知っているからね」

 さっきまでエヴァを思って優しい声を出していたスタンの声がちょっとだけ低くなった。

「大変申し訳ありませんでした出来心です」

 こいつ手の平くるっくる。
 必要以上に触るって何に。誰に。
 …私?

「不埒な気配を察知。殴っていい?」
「後でね」
「大変申し訳ありません」

 よくわからないけど感謝しきれないことが分かったわ。
 いろんな意味で私に何をしたの、ロドニー。


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