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74 正しく話を聞く姿勢
しおりを挟む乙女の事情で半泣きになったエヴァをなんとか宥め、長風呂をするわけにもいかずお風呂から上がった。
その後、身体を気遣ってかゆったりしたワンピースに着替えさせられたわけだけど、何故か侍女達の態度がいつもより丁寧だった。
病み上がりだと思われているのかしら。確かに近い体調だけど、気持ち的には回復しているからそこまで気遣われるのもおかしな気分。
「本当ならこのまま暫くお休みした方が良いと思うのだけど…お兄様が説明するというのならお話を聞いた方がいいでしょう。応接室までついていきましょうか?」
「大丈夫よ。エヴァは目元を冷やして」
「そうですか…身体に異変を感じたらすぐいってくださいね。我慢しないでくださいね」
「ええ」
エヴァはとても気にしてくれていたけれど、応接室にはロドニーがいるからエヴァを連れて行けないわ。こんな泣きつかれてお風呂上がりの普段より色気がアップしているエヴァをロドニーに会わせてはいけない。
私が病み上がりだとエヴァは気遣っていたけれど、お風呂に入ったおかげで心身共にすっきりしたわ。あんなに痛かったのが嘘みたい。
…落ち着いたから、私もなんとなく、激痛の原因はわかっている。わかっているからこそ、すぐスタンに事情が聞きたい。
私は真っ直ぐ応接室へと向かった。つもりだったけど。
侍女に先導されたのは私が休んでいる客室で、あれよあれよと寝台に逆戻りした私は背中にクッションを敷いて上体を起こしながら寝台の横で寛ぐスタンの話を聞くことになっていた。
「まだ疲れているだろうからそのまま聞いてね」
「ねえちょっと、私もう元気なんだけど!?」
「気持ちがそうでも身体はまだ疲れているよ。大丈夫、ほら扉は開いているしロドニーはここに居ないから」
未婚の男女が密室にいるのはよくない。しかし部屋の扉を開けた状態ならセーフだと淑女教育で習った。
だからって私が寝台に居るのは駄目じゃない!? せめて私もソファに座らせなさいよ!
あとロドニーがいないって免罪符になる? なんなら殴るためにも居て欲しかったわ。
ちなみにロドニーはいないけどモーリスはいる。スタンの背後に控えている。
ご存じだと思うけど、そいつむっつりなのよ。ある意味ロドニーより寝室に居ちゃ駄目な奴よ。
文句を続けようとしたけど、スタンがさっきのエヴァとそっくりな表情をしているのに気付いて口をつぐんだ。
…私を心配して、眉を下げて口元に力を込めた、ちょっと情けない表情が、そっくり。
(兄妹…!)
なんだこいつらかわいいな。
そう思ってしまったらもう反論できなかった。
だけど私はエヴァに負けたのだ。スタンではない。エヴァに負けたのだ…!
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