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Story 3
復帰
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それから2日ほど経つと私の体調は回復し、もう元通りの生活をしてもいいとの許しが出た。
王宮での生活(病人だけど)は何不自由なく生活させてもらった。何より、まだ好きな人が一緒に暮らしていると思うと自然に胸が高鳴って、むしろ幸せだったくらい。
こんな風に思ってしまうのは、恋する乙女には普通のことなのか、私が気持ち悪いのか…
ロバート様も幼馴染も毎日お見舞いに来てくれて、退屈しなかった。みんなが忙しい合間を縫って私のために王宮に足を運んでくれて、本当に私は幸せ者だと実感した。なおさら早くこの恋を諦めて、もうこんなことで悩むのをやめようと思った。
「皇太子殿下、3日間ありがとうございました。両陛下にもそうお伝えください。」
「見送りが僕だけで申し訳ないね。どちらも公務が立て込んでいて…」
両陛下は今ご公務で大変忙しい日々を過ごしているらしい。それもそうだろう。彼らはこの帝国の皇帝と皇后なのだから。
欲を言えばお礼くらいはしたかったけれど、お仕事を邪魔してしまっては流石に迷惑をかけすぎだろうから、心の中でたくさんお礼を言っておくことにした。
「とんでもないです。皇太子殿下もお忙しいでしょうから、とても光栄でございます。」
ロバート様もお忙しいだろうにお見送りまでしていただけるなんて私はなんて幸せなんでしょう。
もうこれで十分。今日でもうこの方との恋は諦めると決めた。
そう私が心の中で決心した時だった。彼の手がそっと私の頬を掠める。
俯いた顔をあげられる。自然に私の瞳の中に光に照らされた漆黒の髪と、その端正な顔に埋められたサファイアの瞳が映る。
その刹那、私の胸の鼓動が止まったと錯覚するほど美しかった。
「殿下呼びはやめてって、言ったよね?」
殿下呼びに慣れてしまった私はずっと殿下と呼んでいた。昨日名前で呼んでほしいと言われたのに。
もう諦めると決めた時に限ってこの愛しい悪魔はそのサファイアの瞳でそっと微笑んだ。
私はそれにまた舞い上がってきっとこの悪魔の言うとおりにロバート様と呼んでしまうのだろう。
「はい、ロバート様…」
「よろしい。じゃあレティ、明日も学園でね」
そう言って私を馬車に乗せるとまた優しく微笑んで手を振る。
屋敷に帰るとみんな揃っていて私の快気祝いをしてくくれた。
「姉様!もう体は大丈夫なのですか?」
アルが私に抱きついてきたので私は彼と同じ目線になって抱きしめた。
彼の目元もまた少し充血している。顔をみるだけで私のことを心配してくれたんだと感じる。
「大丈夫よ。心配をかけてしまったわね。アルも今日はゆっくり休むのよ」
「僕は大丈夫です!」
笑顔になったアルの小さな頭を撫でてもう一度ありがとうと伝えた。
そのあるの後ろからセレスもまた同じような顔をして私に近づく。
「セレス、あなたも心配してくれたのね、ありがとう。」
「姉様、もう無理はしないでね」
セレスと殿下の踊りを見て倒れたとはとても言えない。
王宮で会ったときは話す気になれなかったけれど、今こうして会うと彼女に非はないのに本当に情けないことをしてしまったと反省する。
「本当にびっくりしたわ。セレスの言うとおり、もう無理はしないこと!いいわね?」
お母様にもお父様にも心配をかけてしまったので本当に自己管理をきちっとしようと心に決めた。
この日は家族での時間を楽しんで夜は更けていった。
王宮での生活(病人だけど)は何不自由なく生活させてもらった。何より、まだ好きな人が一緒に暮らしていると思うと自然に胸が高鳴って、むしろ幸せだったくらい。
こんな風に思ってしまうのは、恋する乙女には普通のことなのか、私が気持ち悪いのか…
ロバート様も幼馴染も毎日お見舞いに来てくれて、退屈しなかった。みんなが忙しい合間を縫って私のために王宮に足を運んでくれて、本当に私は幸せ者だと実感した。なおさら早くこの恋を諦めて、もうこんなことで悩むのをやめようと思った。
「皇太子殿下、3日間ありがとうございました。両陛下にもそうお伝えください。」
「見送りが僕だけで申し訳ないね。どちらも公務が立て込んでいて…」
両陛下は今ご公務で大変忙しい日々を過ごしているらしい。それもそうだろう。彼らはこの帝国の皇帝と皇后なのだから。
欲を言えばお礼くらいはしたかったけれど、お仕事を邪魔してしまっては流石に迷惑をかけすぎだろうから、心の中でたくさんお礼を言っておくことにした。
「とんでもないです。皇太子殿下もお忙しいでしょうから、とても光栄でございます。」
ロバート様もお忙しいだろうにお見送りまでしていただけるなんて私はなんて幸せなんでしょう。
もうこれで十分。今日でもうこの方との恋は諦めると決めた。
そう私が心の中で決心した時だった。彼の手がそっと私の頬を掠める。
俯いた顔をあげられる。自然に私の瞳の中に光に照らされた漆黒の髪と、その端正な顔に埋められたサファイアの瞳が映る。
その刹那、私の胸の鼓動が止まったと錯覚するほど美しかった。
「殿下呼びはやめてって、言ったよね?」
殿下呼びに慣れてしまった私はずっと殿下と呼んでいた。昨日名前で呼んでほしいと言われたのに。
もう諦めると決めた時に限ってこの愛しい悪魔はそのサファイアの瞳でそっと微笑んだ。
私はそれにまた舞い上がってきっとこの悪魔の言うとおりにロバート様と呼んでしまうのだろう。
「はい、ロバート様…」
「よろしい。じゃあレティ、明日も学園でね」
そう言って私を馬車に乗せるとまた優しく微笑んで手を振る。
屋敷に帰るとみんな揃っていて私の快気祝いをしてくくれた。
「姉様!もう体は大丈夫なのですか?」
アルが私に抱きついてきたので私は彼と同じ目線になって抱きしめた。
彼の目元もまた少し充血している。顔をみるだけで私のことを心配してくれたんだと感じる。
「大丈夫よ。心配をかけてしまったわね。アルも今日はゆっくり休むのよ」
「僕は大丈夫です!」
笑顔になったアルの小さな頭を撫でてもう一度ありがとうと伝えた。
そのあるの後ろからセレスもまた同じような顔をして私に近づく。
「セレス、あなたも心配してくれたのね、ありがとう。」
「姉様、もう無理はしないでね」
セレスと殿下の踊りを見て倒れたとはとても言えない。
王宮で会ったときは話す気になれなかったけれど、今こうして会うと彼女に非はないのに本当に情けないことをしてしまったと反省する。
「本当にびっくりしたわ。セレスの言うとおり、もう無理はしないこと!いいわね?」
お母様にもお父様にも心配をかけてしまったので本当に自己管理をきちっとしようと心に決めた。
この日は家族での時間を楽しんで夜は更けていった。
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