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EPISODE.4
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ローマンが部屋に入るのを見届けると、ユノは商隊が襲撃された現場へと向かう。舗装された道を歩きながら、神経を張り巡らせる。
ユノは魔人であるが故に魔獣等の魔力を敏感に感知する事が出来る。普段はそれを頼りにこの森で過ごし、ローマンの往来を保証していた。
目を瞑り意識を高めるユノ。閉じた瞼の裏には、暗闇の中に幾つもの光が指す。そこに魔獣達が居るのだろう。光は何度も蠢いている。
今いる場所からは少し離れてはいるが、それ程森の奥深くでは無い。急げば何かの痕跡は見つかるかもしれない。ユノは光射す方へとかけ出す。
この森は深く入り込むほど現実とは断絶される。木々に覆われ空は見えず、正午なのにも関わらずどんよりとした空気がこの森を支配する。まるで人の出入りを拒んでいるかのようなこの森は、魔人のユノにとっては都合のいい場所だった。しかし、時としてこの様な事件が起きる。それは大概何か良くない事が起きる前触れなのだ。
気づけば舗装された道は無くなり、辺りは完全に緑に支配される。草木をかき分け目的の場所に近づくユノだったが、ある事に気がつく。
あまりに辺りが静か過ぎる。
例え戦いが終わり生存者が居なくとも、魔獣の群れがこれ程静かに行動するだろうか。本能で動く獣がこれ程静かに獲物を捕食、または運び出す所をユノは見た事がない。
この状況にユノの頭に少しばかりだが不安がよぎる。確かに魔獣であろう魔力はそこにある。しかし、先程までしきりに動いていたその光は既にその場で立ち止まっている。
そもそも何故ローマンは商隊が襲われた事を知り得たのか。入口からハイデルンへと向かう為に森を抜ける正規ルートであれば、そもそもこんな奥地へと来ることは無い。謎が深まる程ユノは悪い方へ悪い方へと向かう。
そして、それは的中してしまう。
「来客にしては随分慌ただしいな」
森の闇を背に禍々しいオーラを纏う者がそこに立つ。それを生物と呼ぶにはあまりに狂暴的で、見たものを畏怖させるその佇まいにユノは見覚えがあった。
「何故だ!悪魔が何故こんな所にいるっ!!」
ユノの声は森中を駆け抜け、悪魔の周りの死体に集るカラス達は驚きで飛び立つ。
深く赤く透き通った目と目が対面する。その赤は同じ赤にも関わらず、写す感情は全く異なる別の物だった。
「悪魔…にしては若すぎる。魔人か。人喰い森に住まう魔人。成程、これは面白い。目的とは違うが面白い収穫だ」
黒のローブを纏い、フードから長い銀髪が垂れる。艶やかな悪魔の銀の髪は見たものを魅了するとさえ言われている。
「訳の分からない事を!質問に答えろ!!」
「答える義務もないが、この楽しい場を用意してくれたお礼に答えよう。私は呼ばれたのだ。そこに転がる半獣人を供物にな」
ユノは死体を横目で確認する。そこに転がる死体はどう見ても人間で、とてもしゃないが半獣人に見える要素はなかった。しかし、魔力感知を使うと確かにそこに魔力は感じ取れる。
「誰が呼び出した」
「質問の多いやつだ」
「答えろ」
「アラリケ・ユノ・ハイデンライヒ。お前を呪う懐かしい名前だろう」
ユノはその名前を聞き絶句し、膝から崩れ落ちる。
アラリケ・ユノ・ハイデンライヒ。その名はユノが魔人となった理由であり、かつてユノが殺した姉の名だった。
「最高の絶望だ。お前が他の餌だというのが悔しいよ。さて、時間だ。目的は達せられた。愉快な時間をありがとう。さらばだ」
悪魔の言葉は既にユノ耳には入っていない。虚ろな目でただ遠くを見つめている。悪魔が目の前で去る瞬間も既に認知出来ていない。それ程までの絶望がユノを襲っていた。
ユノは事切れた人形の様に前に倒れ込む。意識が遠のく中で暖かな温もりと、優しい声が耳に入る。
「今助けるからね」
その言葉と共にユノは眠りについた。
ユノは魔人であるが故に魔獣等の魔力を敏感に感知する事が出来る。普段はそれを頼りにこの森で過ごし、ローマンの往来を保証していた。
目を瞑り意識を高めるユノ。閉じた瞼の裏には、暗闇の中に幾つもの光が指す。そこに魔獣達が居るのだろう。光は何度も蠢いている。
今いる場所からは少し離れてはいるが、それ程森の奥深くでは無い。急げば何かの痕跡は見つかるかもしれない。ユノは光射す方へとかけ出す。
この森は深く入り込むほど現実とは断絶される。木々に覆われ空は見えず、正午なのにも関わらずどんよりとした空気がこの森を支配する。まるで人の出入りを拒んでいるかのようなこの森は、魔人のユノにとっては都合のいい場所だった。しかし、時としてこの様な事件が起きる。それは大概何か良くない事が起きる前触れなのだ。
気づけば舗装された道は無くなり、辺りは完全に緑に支配される。草木をかき分け目的の場所に近づくユノだったが、ある事に気がつく。
あまりに辺りが静か過ぎる。
例え戦いが終わり生存者が居なくとも、魔獣の群れがこれ程静かに行動するだろうか。本能で動く獣がこれ程静かに獲物を捕食、または運び出す所をユノは見た事がない。
この状況にユノの頭に少しばかりだが不安がよぎる。確かに魔獣であろう魔力はそこにある。しかし、先程までしきりに動いていたその光は既にその場で立ち止まっている。
そもそも何故ローマンは商隊が襲われた事を知り得たのか。入口からハイデルンへと向かう為に森を抜ける正規ルートであれば、そもそもこんな奥地へと来ることは無い。謎が深まる程ユノは悪い方へ悪い方へと向かう。
そして、それは的中してしまう。
「来客にしては随分慌ただしいな」
森の闇を背に禍々しいオーラを纏う者がそこに立つ。それを生物と呼ぶにはあまりに狂暴的で、見たものを畏怖させるその佇まいにユノは見覚えがあった。
「何故だ!悪魔が何故こんな所にいるっ!!」
ユノの声は森中を駆け抜け、悪魔の周りの死体に集るカラス達は驚きで飛び立つ。
深く赤く透き通った目と目が対面する。その赤は同じ赤にも関わらず、写す感情は全く異なる別の物だった。
「悪魔…にしては若すぎる。魔人か。人喰い森に住まう魔人。成程、これは面白い。目的とは違うが面白い収穫だ」
黒のローブを纏い、フードから長い銀髪が垂れる。艶やかな悪魔の銀の髪は見たものを魅了するとさえ言われている。
「訳の分からない事を!質問に答えろ!!」
「答える義務もないが、この楽しい場を用意してくれたお礼に答えよう。私は呼ばれたのだ。そこに転がる半獣人を供物にな」
ユノは死体を横目で確認する。そこに転がる死体はどう見ても人間で、とてもしゃないが半獣人に見える要素はなかった。しかし、魔力感知を使うと確かにそこに魔力は感じ取れる。
「誰が呼び出した」
「質問の多いやつだ」
「答えろ」
「アラリケ・ユノ・ハイデンライヒ。お前を呪う懐かしい名前だろう」
ユノはその名前を聞き絶句し、膝から崩れ落ちる。
アラリケ・ユノ・ハイデンライヒ。その名はユノが魔人となった理由であり、かつてユノが殺した姉の名だった。
「最高の絶望だ。お前が他の餌だというのが悔しいよ。さて、時間だ。目的は達せられた。愉快な時間をありがとう。さらばだ」
悪魔の言葉は既にユノ耳には入っていない。虚ろな目でただ遠くを見つめている。悪魔が目の前で去る瞬間も既に認知出来ていない。それ程までの絶望がユノを襲っていた。
ユノは事切れた人形の様に前に倒れ込む。意識が遠のく中で暖かな温もりと、優しい声が耳に入る。
「今助けるからね」
その言葉と共にユノは眠りについた。
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