カルバート

角田智史

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 しずか 2

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 その日、山之内がラウンジに来る事は2人とも知っていた。
 話している中で突如としてしずかは言い出した。
 「ねえ、お店行こうよ!」
 「いやいやいや、無理だって。」
 しずかは弾けるような満面の笑顔だった。僕は何をどうやっても言い訳が立たないと思ったのだった。
 ただ、それはこの上なく面白い提案でもあった。
 「んー…、他で飲んでた体にして合流する…?」
 考え抜いた末に、ギリギリのラインで思いついたのが、これしかなかった。元々こちらに僕の同級生が住んでいて、それがお客さんである事は山之内も知っていた。商談も兼ねて同級生と飲んでいた、という体ならば、何とかうまくごまかせるのではないかと。
 「それでいいじゃん!!行こう行こう!!」
 しずかは子供のようにはしゃいで言った。結局、僕はその満面の笑顔に折れたのだった。しぶしぶわざとらしく山之内に連絡を取り、合流する事にした。元々指名している子の面目もあり、僕は完全に乗り気にはなれなかった。

 山之内と白々しく合流した僕は、準備していた嘘を、聞かれたら答えていった。行っていた店、一緒にいた相手。特に怪しまれる事もなく、僕らは店に入っていった。
 2人それぞれ指名しての4人テーブル。
 最近は山之内も愚痴をこぼしていた。
 「しずちゃんと二人でもあまり話さない」と。
 しずかが着替え終わり、4人揃った。
 どうでもいい会話。どうにもならない空気に包まれた。
 ただ、4人で喋りながら、僕はしずかとLINEを続けていた。

 しずかはスマホを見ては、ニヤニヤしたり、のけぞって笑いをこらえたりしていた。僕はひたすら山之内にばれないようにと、表情は変えずにスマホをいじっていた。それは見事にタイミングを見計らって。

 しずかはそれがこの上無く、楽しそうだった。

 翌日、僕のいないところで山之内は支社長へ報告していた。
 それは、「角田がお客さんと飲んでいて偉い」という方向性のものだった。
 支社長から
 「あそこの社長と飲んだっちゃ?」と聞かれ、
 「はあ…、まあそうですね。」
 と答えた。
 僕も支社長も、それが賞賛に値するのか否か、謎であった。
 山之内はその会話に聞き耳を立てながら、してやったりといった雰囲気を醸し出していた。

 そこでもまた、微妙な空気しか流れなかった。
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