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正君

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avid

01.Four Clown

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 少女は天才と呼ばれていた。
 歌も上手く、躍りも上手く、何をさせても期待以上の成果を挙げる彼女を、皆は天才と呼んだ。
 彼女は、所属している劇団と交流の深い家のご子息と来年の春結婚する。
 彼女は、誰が見ても順風満帆な人生を送っていた。それは、彼女の人柄のお陰でもあったのだ。
 優しく謙虚で、誰に対しても対等に接し、高いドレスが汚れる事など気にもせず、膝をついて子犬を撫でるような子だった。
 許嫁も、許嫁の兄も、皆が皆、彼女の事が好きだった。
 謙虚で、しなやかで、繊細で、華奢で、女の子らしい彼女を、誰もが愛していた。

 そんなある日、彼女にさらに嬉しい知らせが届いた。
 それは、彼女が所属している劇団の次の演目で、彼女が主役を務めるという知らせだった。
 彼女は喜び、許嫁の彼と二人で喜びを分かち合った。

 彼女が演じるのは悲劇のヒロインだった。思いが報われず、最後には息絶えるという悲しい悲しい悲恋の物語だった。
 最初の稽古で彼女に訪れた試練は、失恋の痛みを言葉や歌ではなく体で表すことだった。彼女は自分の許嫁が自分から離れることを考えたが、涙一つも出なかった。
 彼女は考えた。彼女以上に劇団の人間も考えた。
 しかし、何十回、何百回もの稽古を繰り返したおかげか、彼女は生を感じさせないような、死を望んでいるかのような表情を作り上げることに成功したのだ。

 最初の御披露目日。彼女の家族や許嫁の家族も集まり、劇団史上一番の盛り上がりを見せる。
 沢山の人間が集まり、彼女の歌声を、彼女の表現を、彼女の悲恋を期待していた。
 少女が舞台に上がった。客の期待が集まる。
 少女が息を吸い込んだ。客も同じように息を吸い込んだ。
 少女が客席を見つめた。客は息を呑んだ。

「     」

 少女の歌声は、まるで、悪魔の叫び声のようであった。
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