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正君

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avid

13.Z染色体

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 遠くの町。
 川から上がった4人の人間達は好き勝手に騒いでから、落ち着き、近くにあったベンチに腰かけた。

「疲れた」
 悪魔の言葉を聞き声を出して笑う許嫁の兄。
「ちょっと遊びすぎたね」
 悪魔の長い髪を撫でる兄。照れ臭そうに俯く悪魔。

 その姿を見ていた女はこう呟く。
「ねえダーリン」
「うん?」
「器量もあって、頭も良くて、優しくて、穏やかで、何だって出来る私が、どうして、あんなに寂れて、貴方の家の援助が無ければ成り立たない弱小劇団に入ったと思う?」
 許嫁の肩へ頭を預ける彼女。
「あなたがいたから」
「…ずっと、俺の事、好きでいてくれたの?」
 許嫁の彼は、彼女の髪を撫でた。
「勿論、貴方が信じてくれている限り」
「ありがとう、心の底から、君を愛しているよ」
「…私も、貴方を、心の底から愛してる」
 桃色に染まる少女の頬。長年想い合っていた二人は、そこで、やっと、本当の自分達を分かち合えたような気がした。
 それを見つめる長身の悪魔と許嫁の兄。
 悪魔は兄の横顔を見つめた。視線に気付き優しく悪魔へ微笑みかける兄。
 彼らもまた、今、この瞬間、初めて本当の自分を分かち合っていた。

 その時、少女の足元に子犬が近付いた。
 少女の靴を嗅ぎ、少女の事を見つめる子犬。

「……」

 少女はその子犬を見つめ、ベンチから立ち上がり、優しく、子犬の小さな頭を撫でた。
「かわいこちゃん、君はどこからきたの?」
 子犬を優しく見つめる少女、心地良さそうに瞳を閉じる子犬
 土で汚れる膝。そんなのお構い無しに少女は子犬を撫でた。
 少女は、何一つも変化してなどいなかったのだ。

 4人の消息は今も不明だが、少女の話は今この現在でも語り継がれている。
 全ての人間を成長させる、最高の先生として。
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