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メメたん、何か出す
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「……コヒュー……コヒュー……」
動悸と呼吸がおかしいが、これでもマシになったんだ。メメたんの髪が、そっと俺氏の脳みそをいじってくれたおかげで。
「ご主人サマ! メメは楽しみデ楽しみデ、こんな気持ち初めてデス!」
それはそうだろう。俺氏も覚悟を決め、ついにペットショップへ向かっているんだから。
あの昇天してしまった日は本当に天に召されそうになり、とてもじゃないが動ける状態じゃなくなった。下半身だけは不死鳥のように何回も蘇ったが。
次の日にペットショップに行こうとしたが、玄関を出ようとするとパニック発作が起こってしまった。
メメたんは演技だと思ったみたいで不機嫌になったが、俺氏の脳を調べてメメたんが逆に困惑してしまっていた。俺氏には見えないじいちゃんとばあちゃんまで慌てて出て来たらしくて、焦らずに待つということになったらしい。
あんなに犬を飼いたかったメメたんが、あの女王様であるメメたんが、この数週間キレずに待ってくれていたんだ。
不思議なことに、朝市への出店には挙動不審になりながらも行けた。それが自信となり、荒療治のような感じになるが、今日行くことを決めたんだ。
繁華街に行くにはバスに乗らなきゃないが、そのバス停が朝市の近くにある。そこまでは問題なく行けた。だが、いざバスに乗ると、ほとんど乗客もいないのに、バスが家から離れるほどにパニック発作が出てきた。
これは想定内だったので、メメたんと打ち合わせて、俺氏に発作が起こったら脳をいじって、脳内麻薬を出すように頼んでおいた。これにはメメたんも引いていたが。
ただメメたんは、今日という日が来るのを楽しみにしすぎていたので、加減を間違ったのか動悸が酷い。おそらく目も瞳孔が開いてバッキバキなことだろう。
メメたんが隣でこんなにも楽しみにしているんだ。治してなんて言える空気じゃない。
────
「……コヒュー……コヒュー……」
平日なので思ったよりは人がいないが、数億年ぶりの繁華街に到着しても俺氏の呼吸は治らない。
そりゃそうだろう。俺氏のようなキモヲタが、天使のようなメメたんと立っているだけで、あちこちから不躾な視線を感じるんだから。
「……コヒュッ!?」
だけどメメたんの行動のおかげで俺氏が冷静になれた。もはや慣れっこになっているせいか、普通にツインテールを動かそうとしていたからだ。
「メ……メメたん!? それはダメ!」
一般人に気付かれないうちに、両手でツインテールを掴んだ。普段、俺氏の脳みそを弄ったり殴ったりする御髪だが、鷲掴みできたことに変な感動をしてしまう。
メメたんはすこぶる不機嫌そうな顔をしたけど、少し考えて「あぁ……」と納得したようだった。
「せっかく普通のヒトを観測する機会だったノニ……じゃあこっちにしマス。処理に時間がかかりマスが」
そう言ったメメたんは人差し指を空に向けると、その先から何かが出て来る。周りから見えないように、憧れの『壁ドン』をしている格好だが、そんなのにドキドキしている場合じゃない。俺氏も『普通のヒト』だけど、そんなツッコミを入れられる状況でもない。
メメたんの指先には黒い何かが集まりだして、コバエの半分くらいの大きさのものが一つ、また一つと飛んでいく。その数は無数レベルだ。
俺氏の心臓はドキドキを超えてバクバクしている。
「メメたん!? 何それ!?」
変な汗をかき始めた俺氏に、メメたんはいつものトーンで返事をしてくれた。
「ヒトでいう……血液デスかね?」
なぜ疑問形なのか分からないけど、メメたんの成分なんだろう。
ここで周囲に変化が現れ始めた。道行く人たちの一部が「痛っ!」と耳を押さえている。でもそれは一瞬の痛みのようで、すぐに何事もなかったかのように俺氏たちを通り過ぎて行く。
その人たちとメメたんを、卓球のラリーを見るように高速で代わる代わる見ていると、「死にはしまセン」と普通に呟いた。それが逆に怖い。
やがて小さな黒い何かが戻って来て、メメたんの指先に集まり始めた。目をガン開きにして見ていると、黒い何かはメメたんの爪の間に入って消えて行った。
一点を見つめたまま動かなくなったメメたんだが、経験上ここで騒いだりするとお仕置きが待っている。なのでメメたんが動き出すまで、おとなしく待つことにした。
「……へー……ホー! ……なるホド……ふふっ」
一言一言呟く度に、コロコロと表情が変わるメメたんがかわいい。特に最後の笑ったところなんて……と思っていると、俺氏の顔を見て、いつものゴミ虫を見るような目で溜め息を吐かれた。
「……本当にご主人サマはヒトなんデスかね……?」
溜め息どころか毒まで吐かれた。メメたん!? 俺氏は人間だよ!?
「こんナニ考え方に違いがアルなんて」
確かに俺氏はダメな子! でも、生まれとか環境で考え方は変わるものなんだ。現に俺氏はメメたんのことしか考えられない。
そんな風に真剣に考えていたのに「早く行きまショウ」と、いつもの塩対応をされてしまった。
今日はメメたんのために勇気を出して、汚名返上、名誉挽回をすると決めているんだ。頑張れ俺氏。負けるな俺氏。
動悸と呼吸がおかしいが、これでもマシになったんだ。メメたんの髪が、そっと俺氏の脳みそをいじってくれたおかげで。
「ご主人サマ! メメは楽しみデ楽しみデ、こんな気持ち初めてデス!」
それはそうだろう。俺氏も覚悟を決め、ついにペットショップへ向かっているんだから。
あの昇天してしまった日は本当に天に召されそうになり、とてもじゃないが動ける状態じゃなくなった。下半身だけは不死鳥のように何回も蘇ったが。
次の日にペットショップに行こうとしたが、玄関を出ようとするとパニック発作が起こってしまった。
メメたんは演技だと思ったみたいで不機嫌になったが、俺氏の脳を調べてメメたんが逆に困惑してしまっていた。俺氏には見えないじいちゃんとばあちゃんまで慌てて出て来たらしくて、焦らずに待つということになったらしい。
あんなに犬を飼いたかったメメたんが、あの女王様であるメメたんが、この数週間キレずに待ってくれていたんだ。
不思議なことに、朝市への出店には挙動不審になりながらも行けた。それが自信となり、荒療治のような感じになるが、今日行くことを決めたんだ。
繁華街に行くにはバスに乗らなきゃないが、そのバス停が朝市の近くにある。そこまでは問題なく行けた。だが、いざバスに乗ると、ほとんど乗客もいないのに、バスが家から離れるほどにパニック発作が出てきた。
これは想定内だったので、メメたんと打ち合わせて、俺氏に発作が起こったら脳をいじって、脳内麻薬を出すように頼んでおいた。これにはメメたんも引いていたが。
ただメメたんは、今日という日が来るのを楽しみにしすぎていたので、加減を間違ったのか動悸が酷い。おそらく目も瞳孔が開いてバッキバキなことだろう。
メメたんが隣でこんなにも楽しみにしているんだ。治してなんて言える空気じゃない。
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「……コヒュー……コヒュー……」
平日なので思ったよりは人がいないが、数億年ぶりの繁華街に到着しても俺氏の呼吸は治らない。
そりゃそうだろう。俺氏のようなキモヲタが、天使のようなメメたんと立っているだけで、あちこちから不躾な視線を感じるんだから。
「……コヒュッ!?」
だけどメメたんの行動のおかげで俺氏が冷静になれた。もはや慣れっこになっているせいか、普通にツインテールを動かそうとしていたからだ。
「メ……メメたん!? それはダメ!」
一般人に気付かれないうちに、両手でツインテールを掴んだ。普段、俺氏の脳みそを弄ったり殴ったりする御髪だが、鷲掴みできたことに変な感動をしてしまう。
メメたんはすこぶる不機嫌そうな顔をしたけど、少し考えて「あぁ……」と納得したようだった。
「せっかく普通のヒトを観測する機会だったノニ……じゃあこっちにしマス。処理に時間がかかりマスが」
そう言ったメメたんは人差し指を空に向けると、その先から何かが出て来る。周りから見えないように、憧れの『壁ドン』をしている格好だが、そんなのにドキドキしている場合じゃない。俺氏も『普通のヒト』だけど、そんなツッコミを入れられる状況でもない。
メメたんの指先には黒い何かが集まりだして、コバエの半分くらいの大きさのものが一つ、また一つと飛んでいく。その数は無数レベルだ。
俺氏の心臓はドキドキを超えてバクバクしている。
「メメたん!? 何それ!?」
変な汗をかき始めた俺氏に、メメたんはいつものトーンで返事をしてくれた。
「ヒトでいう……血液デスかね?」
なぜ疑問形なのか分からないけど、メメたんの成分なんだろう。
ここで周囲に変化が現れ始めた。道行く人たちの一部が「痛っ!」と耳を押さえている。でもそれは一瞬の痛みのようで、すぐに何事もなかったかのように俺氏たちを通り過ぎて行く。
その人たちとメメたんを、卓球のラリーを見るように高速で代わる代わる見ていると、「死にはしまセン」と普通に呟いた。それが逆に怖い。
やがて小さな黒い何かが戻って来て、メメたんの指先に集まり始めた。目をガン開きにして見ていると、黒い何かはメメたんの爪の間に入って消えて行った。
一点を見つめたまま動かなくなったメメたんだが、経験上ここで騒いだりするとお仕置きが待っている。なのでメメたんが動き出すまで、おとなしく待つことにした。
「……へー……ホー! ……なるホド……ふふっ」
一言一言呟く度に、コロコロと表情が変わるメメたんがかわいい。特に最後の笑ったところなんて……と思っていると、俺氏の顔を見て、いつものゴミ虫を見るような目で溜め息を吐かれた。
「……本当にご主人サマはヒトなんデスかね……?」
溜め息どころか毒まで吐かれた。メメたん!? 俺氏は人間だよ!?
「こんナニ考え方に違いがアルなんて」
確かに俺氏はダメな子! でも、生まれとか環境で考え方は変わるものなんだ。現に俺氏はメメたんのことしか考えられない。
そんな風に真剣に考えていたのに「早く行きまショウ」と、いつもの塩対応をされてしまった。
今日はメメたんのために勇気を出して、汚名返上、名誉挽回をすると決めているんだ。頑張れ俺氏。負けるな俺氏。
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