孤児院を追放された精霊魔法使い~虹色魔力で自由気ままに冒険者として成り上がります~

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洗礼の日

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「アルス、教会に巡礼に行く用意をしなさい」

 10歳になるこの日、朝食を終えた僕に院長がそう言いつけてきた、ちなみに院長とはこの孤児院の院長である、みんな院長と呼んでいるため本当の名前は誰も知らないし、そもそもこの村の名前さえも教えられていない、村の人に聞いてもはぐらかされるだけなのだ。

「はい院長、すぐに用意します」

 10歳になり院長に呼ばれて教会に向かった先輩たちはそのまま自立して町を出て行くのだと聞いている、きっと僕も今日がその日なのだと思う。
 準備を終えると院長も孤児院の入口で待っていた。

「来たか、アルスよ分かっていると思うがこれから教会に向かう、教会の司祭様の言うことを必ず・・聞くのだぞ」

 そのまま初めて乗せられた外の見えない馬車に揺られつつしばらく揺られていると馬車が止まった、尻が……痛い。

「司祭様これがアルスです、宜しくお願いします」
「ほう……これが今日のですか」

 なんだ? ……人を物みたいに。

「では行ってきなさいアルス、くれぐれも約束は守るのだぞ」
「はい院長、行ってきます」

 そういうと司祭が教会に入るよう促してくるのでその通りに教会に入ると扉がパタンと閉じられた。

「この奥の洗礼の間は必ず一人で入るように『虫』一匹『精霊』一匹、それどころか洗礼を受けるものは『神』であっても同室することは許されない、ここまでは分かるか?」
「はい、大丈夫です」
「過去にこの教えを守らずに洗礼を受けた他教徒が洗礼の間に入って数刻しても出てこないことがあったのだ、この意味が分かるか?」
「いえ……どうなってしまったんですか?」
「真っ黒こげだったらしい、それからというもの必ずこの教えを守るように徹底されるようになったのだ」

 なるほど、それが本当なら確かに教えは守ったほうが良いだろう。

「分かりました、そう言っておきますね」
「言っておく? 何を言ってるんだね」
「あ……いえ、言葉の綾ですよ、僕が入る時に虫一匹入らないように注意します」
「ふむ……まぁ良いでしょう、それでは洗礼の間に入るように、そして心を落ちつかせたら部屋の中央に置かれている水晶に手をかざすのだ、そうするとステータスの刻印が体の何処かに刻まれるのだ」

 そうして洗礼の間に入ると肌がピリピリするような感覚に襲われた。

「ん?」

 そしていつも間近に感じていた気配が全く感じられなくなってしまった。

「みんな……いないか」

 この部屋には僕一人、少しだけ心細いのだが少しの時間の辛抱だ。

「それじゃあ水晶に手をかざすんだったな」

 …。

 ……。

 ………。

「あれ? 何か起きるんじゃないのか?」

 そのまま数分の間、呆然としていると突如として洗礼の間の扉が開かれ――。

 司祭が室内の状況を理解するやいなや突然大声て喚き始めた。

「なんだ! 孤児院の神童だと期待してみれば結局魔力の色は全色無し、完全な無能だったとは……!」
「お待ちください、確かにこれは普段から魔法を使っておりました、水を生み火を生み光を生み、困窮していると見せかけた孤児院に微々たるものですが財を齎したのを、私はこの目で見ていたのです」
「そうは言うが、この結果はなんだ? 水晶に示された魔力適正はどの色も全て0ではないか、まさか貴様……こいつとグルになって教会に仇なすつもりか?」
「滅相もございません、そんなつもりは爪の先ほどもありません……、つきましてはいつも通り『廃棄』ということで……」
「それしかないだろうこんな無能、ここ数年この地が魔活化しているという報告を受けていたからこそ期待して赴任してみたらこの結果か……、まったく無駄足だった」
「……申し訳ありません」
「――さて? 不用品はさっさと廃棄するしかない……麻痺魔法パラライズ

 その言葉と同時に僕の全身が金縛りにかかった……ような状態となり思うように動けなくなったってしまった。

 そんな僕は抵抗できないまま司祭と院長に抱えられると、目隠しをされ先ほど教会に行く時よりも明らかに乗り心地の悪い、馬車か荷馬車かはわからないが、とにかく何かしらの乗り物に乗せられて移送されたのだ。

 そうして何処かに着くと目隠しを外されたのだが、その時かけられた言葉に状況の悪さを認識させられた。

「よく来たな産廃野郎、これからは奴隷としてせいぜい役に立ちやがれ」
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