身近であった怖い話 短編集

中川四角

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早く入っておいで 

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 私は安定してずっと霊感があるタイプではありません。たまに視えて、しばらく全然視えなくなって、何事もなく月日が過ぎて大人になって霊感が無くなったと思い込んでいました。

大人になると視えなくなって、視えていたことすら忘れてしまうと言う事をよく聞いていたからでもあります。

これは、中途半端な霊感があった頃の私が失敗した話です。

 そう、あれは就職して、初めての社員旅行で有名な温泉地に行った時のことでした。私達、新人の女子6人で大部屋1部屋で、私と同じ年の子3人と、1つ年下の子と、もっと若い子でした。

新卒と言っても短大、専門学校卒等で年齢はばらばらでした。

全員個性的な感じで、なんだか合わないような気もするのですが、面白いもので意外とバランスを保って上手くいっている感じでした。

社員旅行の日はお天気も良くバスでの旅行は楽して、宿のお料理も美味しかったです。私たち新人の女子でお風呂に入り、部屋でゆっくりしていました。

社員旅行は私の彼の誕生日の翌日でした。

「私、昨日彼氏が誕生日で家に来ると思ってたので彼の為に大きいケーキを買ってあったのにドタキャンされて、その大きいケーキ1人で全部食べた。」

「何してるん?ははは。」

「今日社員旅行だから、食べちゃわないと1人暮らしだからさ。」

「痩せの大食いだー。」

そんな話をして、みんなで笑っていた記憶があります。

私と同じ年の子が2人と1つ年下の子が、夜遅くに、もう一度お風呂に入ってくると言いだし、いってらっしゃいと言って、残った私達は電気を消してお布団に潜り込んで眠る事にしました。

私は昔から寝つきが悪く、しばらく起きて居ました。他の2人はわりと直ぐに寝てしまったようでした。

すると、入り口のふすまの向こうから女の子が泣いている声がしました。

露天風呂に行った3人に1人だけ年下の子が混ざっていたから、年下の子が帰って来たのだと思いました。他の2人はすごく仲良しなので、
話に入れなかったとか、気がつよい子に何か言われたとか?かなあ?と思ったのです。

なかなか、年下の子は部屋に入って来なくてそんな所にいたら湯冷めしてしまうと思いました。

「早く入っておいで、」

私はそう声をかけてしまったのです。すると、ふすまは空くことなく、なんと鳴き声だけが部屋の中へ入ってきてしまいました。

一 うわっ、怖い。ああ、やっちゃた。やってしまいました。

私な迂闊な事をしたと後悔しましたが、既に金縛りにあっていて動けません。声も出ません。


私が1番ふすまに近い所に寝ていました。

近づいて来る。どんどん近づいて来る。そして、鳴き声は大きくなってきました。

私は隣で寝ている1番年下の子に何とかして手を伸ばし起きてもらおうと必死でした。手は動きません。届きそうで届かないもどかしさと、早くなんとかしないとと言う怖さがありました。

2人の名前を呼んでいるつもりが全く声になっていません。

旅先でこんな事になったのは初めての体験でした。

声はもう私の隣あたりまで来てしまいました。

なんとかもがいていると、一瞬手が動いたので、隣の子を揺さぶりました。

「ん?どうしました?」

眠そうにその子が起きて聞いてきたので、私は声を振り絞ると、

「電気、つけて。」

と小さな声が出ました。

一 やった。

もう1人の子も起きてくれて、電気がついた瞬間、鳴き声がパタッとやみました。

私が2人に事情を話すと、電気はつけて寝ようと言う事になりました。1人が怖がって、テレビもつけておこうと言う事になりました。

いつの間にか他の3人も帰って来て朝を迎えました。

「何で昨日電気とテレビまでつけたまま寝てたん?」
と次の日、あの場にいなかった子たちに聞かれ事情を話すと、後日旅館について調べてくれて数年前に女1人旅で来た人に何があったらしいとだけ教えてくれました。






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