D○ZNとY○UTUBEとウ○イレでしかサッカーを知らない俺が女子エルフ代表の監督に就任した訳だが

米俵猫太朗

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第三章

孤独のコーチ

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「フヒッ、あ、どうも」
 ナリンさんを茂みに残して俺は1人、立ち上がりグランドに近寄った。厳しい表情のGKコーチと練習が中断して怪訝な顔の選手達を前に、なるべく無害そうな顔と声を出す。つい、入ってはいけない所まで潜入してしまった、ちょっと愛が多過ぎてモラルが足りないサッカーマニアのフリをしてみる。
「なんか凄い練習だなーって。邪魔したんなら帰ります。じゃあ」
「待って。そちらの女性は?」
 気付かれていたか。俺が囮になってそっとナリンさんを逃がすつもりだったのに。しかし木々に潜むエルフに気付くって相当だぞこの猫!?
「ごめんさない、ニャイアー。近くで観たかったものだから」
 ナリンさんはそう言いながら優雅に立ち上がった。はて? いま呼びかけたのはGKコーチさんの名前か?
「ニャリン! 雪割りの花、僕の星! どうしてここに!?」
 そのGKコーチは一飛びでナリンさんの前に着くと、素早く片手をとってその甲にキスをした。
「ああ、なぜ君の芳しい香りに気付かなかったんだ……臭いが混ざっていたせいだな!? お嬢さんたち、ちょっと外周を走っておいで!」
 GKコーチは俺、そして練習を強制中断させられたGKたちを順に睨んで叫んだ。
「あっ! せっかくショーキチ殿に練習をみせにきたのに……相変わらずね、ニャイアー」
 彼女――名前はニャイアーで間違いないようだ――はそう言われてやや耳を垂らしたが、すぐ気を取り直していった。
「ニャリン、『ショーキチ殿』てのはもしかして?」
「ええ、そちらの男性。サッカードウエルフ代表の監督に就任されたショーキチ殿です。クラマ殿のように地球からやってきて、サッカードウに詳しくて優しくて凄くかっ……賢いのよ!」
「あ、どうも。ショーキチです」
 馬鹿みたいに同じ挨拶を繰り返し、握手用にそっと右手を延ばす。
「ふん」
 だがその右手は握られることなく中をさまよった。
「私は彼に雇われてコーチと個人マネージャーをしているの。今は二人で視察旅行の最中よ」
「にゃにい!」
 今度も一飛びだった。ニャイアーさんは瞬時に俺に近づくと、さまよっていた右腕を掴み上げアームロックし俺を半宙づりにして低い声で詰問する。
「おい、貴様! どんな汚い手を使ってニャリンとそんな契約をした! ニャリンは優美で可憐で引っ込み思案なんだぞ! それを独占して引っ張り回して……」
 俺を引っ張り吊しているのは君だけどね! てか近くで観るとマジて背が高くてイケにゃんさんだ。いやその背の高さで吊られると痛いけど!
「があああ。痛っイイ、お……折れるぅ~」
「ニャイアー、やめて!」
 あ……やめて! それ以上いけない、とナリンさんの代わりに心の中で呟く。
「ショーキチ殿とはエルフサッカードウ協会を通して公正な契約を結んでいるわ! 彼はエルフ代表の為に全力で働いてくれているし、個人的にも私に色々、大人な事を教えてくれているのよ」
 ナリンさんは大慌てでニャイアーさんを止めに入ったが、むしろ火を点ける結果となった。
「にゃ!? 『色々、大人な事』にゃとぉ!?」
 ナリンさん、言い方~!
「違います違います全部サッカーの事です。大人な事とは大人のサッカーの事で、大人のサッカーとはつまり時間を考えてリスクを獲るとらないが分かるとか、割り切って引いて守るとかの選択が正確とかそういうので」 

 俺は痛みや緊張下においても滑らかに舌が動く特殊な訓練を(コールセンターで)受けています。よい子は真似しないでね!
「そうにゃのか~? お前、ニャリンにいかがわしい真似とかはしていにゃいよな?」
「してません! 視察中の宿泊部屋も別々ですし!」
 王城の客間で同じ空間で寝たとか、スワッグステップの馬車の中で雑魚寝する事もあるとかは言わないでおこう。
「ですよね、ナリンさん!」
「ええ。ショーキチ殿、は、してません」
「にゃ……!」
 ニャイアーさんは呆然として俺を地面に落とした。
「ニャリン、まさか……その様子は……」
「……? あー痛かった~」
 色々と引っかかりがあったものの、俺は安定した地面と、痛みから解放された事を噛みしめていた。同時にもの凄い勢いで自分の脳味噌が回転するのも感じる。
「ニャリン、一個だけ聞かせてくれ。君は今、幸せなのかい?」
「えっ何を突然に!? でもまあ……ええ、幸せよ。日々多くの事を学べているし、それをエルフ代表に反映させて代表をもっと強いチームに変えていく手応えみたいなものも感じているし」
 そう言って頂けると監督冥利に尽きる。が、俺は監督だけでなくGMでもあるのだ。その内なる総監督が行動する時はにゃうだ! いや、ナウだと告げていた。
「ふっふ~ん。気になりますか、ニャイアーさん?」
「はあ?」
 気落ちし尻尾まで垂れ下がったニャイアーさんが力なくこちらを見た。

「ナリンさんの事が気になるなら、ずっと近くで見たらどうですか? エルフ代表ならスタッフの席が一つ、空いてますよ」
 ピンクのベストを着て胸を反らしたいオードリーの春日気分だ。
「にゃにぃ!?」
「GKコーチの席が、ね」
 正確に言えば今のエルフ代表では暫定的にナリンさんがGKコーチをしている。というかちょっとだけやって今はユイノさんの自主練状態だ。しかしナリンさんの本職は恐らくセットプレーやオフェンスのコーディネイトだし、人数が増えたらコーチ陣のまとめ役もお願いすることになる。そうなるとGKコーチの兼任は辛い。のでその座は簡単に、空く。
 そしてニャイアーさんは恐らくリーグ屈指のGKコーチだ。少ししか観ていないがあの練習強度、本人の身体能力の高さ、フェリダエ族としてのポテンシャル……全てがトップレベルだ。彼女の様なコーチの元で、ユイノさんたちを育てたい。
 そんな事を考えながら、俺はニャイアーさんの反応をそっと待った。
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