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第十章
危険な寝椅子が二脚
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「これで各部の角を削り丸くします」
「ぶつかった時に相手を負傷させたらよくないでしょう?」
レンジャースさんが説明しムルトさんが補足した。しかしその言葉を聞いてもリストさんの震えは収まらなかった。まあ、目の前で剣呑な刃先が回転する訳だし。
「ええい、動くな! 手先が狂うじゃろ」
「ショーキチ殿! ショーキチ殿!」
リストさんが俺に助けを求める。
「なんですか? 大丈夫ですって、眼を摘むって天井のシミを数えている間に終わりますよ」
「はて? シミなどありましたかな?」
レンジャースさんが装置を止め天井を見渡す。てか突っ込む所そこじゃねえよ!
「勇気を出す為に手を握ってて欲しいでござる……」
「はぁ」
なんか本当に歯医者さんめいてきたな。俺が一歩前に出ると、しかしリストさんは首を横に振った。
「拙者ではないでござる!」
「じゃあ誰の? レンジャースさん?」
いやでもそれだと作業の邪魔だしなあ。
「ナリスでござる!」
「ああ……」
俺とナリンさんがナイトエルフをおびき出す為に打った芝居――エルフの青年ナリスと人間の青年ショーのBL的関係――にリストさんは未だご執心らしかった。
「あの、ナリンさん」
「はい?」
俺はレイさんの新しい標的となって眼鏡を試されていたナリンさんに声をかけた。
「リストさんがまたナリスをやって欲しいそうです。怖がって作業ができないんで、一つ協力してあげて下さい」
「えっと……はい」
ナリンさんは躊躇いながらもこちらに近寄り、ダリオさんに一言断りを入れて帽子を手に取った。
「ショーキチ殿、こちらへ」
そして髪をまとめて帽子へ押し込みながら、俺を別の寝椅子の方へ連れて行く。
「横になって瞼を下ろして下さい」
「え? はい、こうですか?」
なんとなく迫力に負けて言われた通りにする。
「どうした、ショー? 眠っているのか?」
突然始まったぞ!? 眼を閉じてるので分からないが何かが俺の顔に触れた気がする。
「ふふ、似合うじゃないか」
「「わーっ!」」
エルフ女子達の歓声が響き、眉間に圧力を感じる。って君たちこれたぶん、ナリン……ナリスさんの眼鏡が俺の顔に置かれただけやろ?
「さあ、今のウチに」
「はいはい、動かないで下さいねー」
恐らくジノリさんが指示しレンジャースさんが応え、ジジジっと何かが何かを削る音が続いた。
「まだ起きないか。もしかして、寝たフリか?」
ナリスさんの手が俺の前髪をかきあげる。寝たフリも何も……演技指導された通りにしているだけですが?
「起きないなら……キスするぞ?」
「してみろよ」
「「わーお!」」
一際、大きな歓声が上がった。てか今の俺じゃないし!
「まさか本当にしないよな?」
と
「今の腹話術、誰の仕業だ?」
と確かめる気持ちで俺は薄目を開けた。
眼鏡を湯気で曇らせながらもこっちを凝視するムルトさん……ではないし、彼女の足にしがみつき片手で眼を隠すジノリコーチでもない。
リストさんはあっちの寝椅子の上で気を失いそうだし、レンジャースさんは作業中。となると……ダリオさんだった。レイさんとシャマーさんが彼女に向けて親指を上げている。まさか彼女が……。
「言ったな?」
言ってません! が、ナリスさんは寝椅子の上で俺に覆い被さるような姿勢になり顔を近づけてくる。
「きゅ~」
リストさんが完全に意識を失った。
「あ、死んだ。まあこれで作業はし易くなりますわな」
レンジャースさんは冷酷にそう呟いてドリルで研磨を続ける。
「大丈夫ですか!?」
俺は大声でそう叫び、大袈裟に身を起こしてそちらへ駆け寄る。起き上がる際にナリスさんを押しのけるには非常に気を使った。
「ちょいちょい! 興ざめやでショーキチ兄さん!」
「そんなこと言って! リストさんが心配でしょ。ねえムルトさん?」
俺はリストさんが横たわる椅子の側で眼鏡を拭くムルトさんに賛同を求める。
「……ちですわ」
「あ、そう、破廉恥ですよね! こんな所で、演技とは言え男同士のラブシーンなんて」
「解釈不一致ですわ!」
はい? 言葉の意味が掴めない俺を押しのけ、ムルトさんが眠るリストさんに掴みかかった。
「どうしてナリスが攻めですの!? 衆人の前ではクールで主導権を握っているナリスが、二人きりの時だけはショーを主とする関係こそ善でしょうに!」
そのまま意識の無いリストさんの身体を激しく揺さぶる。
「おおう、ムルトさん揺らされると手元が狂うぞい!」
「そうですよムルトさん落ち着いて! 誰か止めるの手伝って!」
「ええい、気を失ってないで起きなさい!」
俺とレンジャースさんが作業の安全を守る為に必死な一方、残った女子たちは
「ムルトは数学オタクたがら、かけ算の前後に厳しいのよ」
「この解釈不一致が、ウチらナイトエルフと地上のエルフさんが仲違いした原因なんやて」
「まあ! そうなんですね」
「勉強になるのう」
と盛り上がっていた。
結局、俺独力でムルトさんを抑えレンジャースさんが作業を終えるのに30分ほどかかってしまった……。
「ぶつかった時に相手を負傷させたらよくないでしょう?」
レンジャースさんが説明しムルトさんが補足した。しかしその言葉を聞いてもリストさんの震えは収まらなかった。まあ、目の前で剣呑な刃先が回転する訳だし。
「ええい、動くな! 手先が狂うじゃろ」
「ショーキチ殿! ショーキチ殿!」
リストさんが俺に助けを求める。
「なんですか? 大丈夫ですって、眼を摘むって天井のシミを数えている間に終わりますよ」
「はて? シミなどありましたかな?」
レンジャースさんが装置を止め天井を見渡す。てか突っ込む所そこじゃねえよ!
「勇気を出す為に手を握ってて欲しいでござる……」
「はぁ」
なんか本当に歯医者さんめいてきたな。俺が一歩前に出ると、しかしリストさんは首を横に振った。
「拙者ではないでござる!」
「じゃあ誰の? レンジャースさん?」
いやでもそれだと作業の邪魔だしなあ。
「ナリスでござる!」
「ああ……」
俺とナリンさんがナイトエルフをおびき出す為に打った芝居――エルフの青年ナリスと人間の青年ショーのBL的関係――にリストさんは未だご執心らしかった。
「あの、ナリンさん」
「はい?」
俺はレイさんの新しい標的となって眼鏡を試されていたナリンさんに声をかけた。
「リストさんがまたナリスをやって欲しいそうです。怖がって作業ができないんで、一つ協力してあげて下さい」
「えっと……はい」
ナリンさんは躊躇いながらもこちらに近寄り、ダリオさんに一言断りを入れて帽子を手に取った。
「ショーキチ殿、こちらへ」
そして髪をまとめて帽子へ押し込みながら、俺を別の寝椅子の方へ連れて行く。
「横になって瞼を下ろして下さい」
「え? はい、こうですか?」
なんとなく迫力に負けて言われた通りにする。
「どうした、ショー? 眠っているのか?」
突然始まったぞ!? 眼を閉じてるので分からないが何かが俺の顔に触れた気がする。
「ふふ、似合うじゃないか」
「「わーっ!」」
エルフ女子達の歓声が響き、眉間に圧力を感じる。って君たちこれたぶん、ナリン……ナリスさんの眼鏡が俺の顔に置かれただけやろ?
「さあ、今のウチに」
「はいはい、動かないで下さいねー」
恐らくジノリさんが指示しレンジャースさんが応え、ジジジっと何かが何かを削る音が続いた。
「まだ起きないか。もしかして、寝たフリか?」
ナリスさんの手が俺の前髪をかきあげる。寝たフリも何も……演技指導された通りにしているだけですが?
「起きないなら……キスするぞ?」
「してみろよ」
「「わーお!」」
一際、大きな歓声が上がった。てか今の俺じゃないし!
「まさか本当にしないよな?」
と
「今の腹話術、誰の仕業だ?」
と確かめる気持ちで俺は薄目を開けた。
眼鏡を湯気で曇らせながらもこっちを凝視するムルトさん……ではないし、彼女の足にしがみつき片手で眼を隠すジノリコーチでもない。
リストさんはあっちの寝椅子の上で気を失いそうだし、レンジャースさんは作業中。となると……ダリオさんだった。レイさんとシャマーさんが彼女に向けて親指を上げている。まさか彼女が……。
「言ったな?」
言ってません! が、ナリスさんは寝椅子の上で俺に覆い被さるような姿勢になり顔を近づけてくる。
「きゅ~」
リストさんが完全に意識を失った。
「あ、死んだ。まあこれで作業はし易くなりますわな」
レンジャースさんは冷酷にそう呟いてドリルで研磨を続ける。
「大丈夫ですか!?」
俺は大声でそう叫び、大袈裟に身を起こしてそちらへ駆け寄る。起き上がる際にナリスさんを押しのけるには非常に気を使った。
「ちょいちょい! 興ざめやでショーキチ兄さん!」
「そんなこと言って! リストさんが心配でしょ。ねえムルトさん?」
俺はリストさんが横たわる椅子の側で眼鏡を拭くムルトさんに賛同を求める。
「……ちですわ」
「あ、そう、破廉恥ですよね! こんな所で、演技とは言え男同士のラブシーンなんて」
「解釈不一致ですわ!」
はい? 言葉の意味が掴めない俺を押しのけ、ムルトさんが眠るリストさんに掴みかかった。
「どうしてナリスが攻めですの!? 衆人の前ではクールで主導権を握っているナリスが、二人きりの時だけはショーを主とする関係こそ善でしょうに!」
そのまま意識の無いリストさんの身体を激しく揺さぶる。
「おおう、ムルトさん揺らされると手元が狂うぞい!」
「そうですよムルトさん落ち着いて! 誰か止めるの手伝って!」
「ええい、気を失ってないで起きなさい!」
俺とレンジャースさんが作業の安全を守る為に必死な一方、残った女子たちは
「ムルトは数学オタクたがら、かけ算の前後に厳しいのよ」
「この解釈不一致が、ウチらナイトエルフと地上のエルフさんが仲違いした原因なんやて」
「まあ! そうなんですね」
「勉強になるのう」
と盛り上がっていた。
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