D○ZNとY○UTUBEとウ○イレでしかサッカーを知らない俺が女子エルフ代表の監督に就任した訳だが

米俵猫太朗

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第十章

山崎ま〇よしさんの名曲

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「次、赤ボールです!」
 ナリンさんがそう宣言してボールを投げ入れる。
「お! あれ知ってる! デス90でやったよな!」
 その風景を見てステフが嬉しそうにいった。デス90では彼女にも協力頂いた投げて貰ったが、割と気に入っているようだった。
「そうだね。ただあっちはフルコートでやるから全体的な走力やスタミナあとぶっちゃけ根性が重視されるけど、こちらは狭いエリアで行うから短い距離でのダッシュや身体の反転、判断力が要求されるかな」
 俺がそう言うとスワッグが得心いったように頷いた。
「なるほど~。狭い場所でバタバタしているからトリカゴと言うんだぴよ?」
「う~ん、たぶんそうかな? 気づいたらそう言うようになってたから分からないや」
 そのプレイスタイル的にクライフのバルサ辺りがやりだしたっぽくもあるけど、ひょっとしたらもっと昔からかもしれない。
 いずれにせよこの練習でバルセロナのように素早いプレスを行い、逆に自分たちはそれを回避できるようになって欲しいと思ってはいる。
 まあ実の所この世界のサッカードウはまだ未発達で、広いスペースで交互に一騎打ちを行うような牧歌的なものではあるけどね。だが俺達のチームがそこにプレスや集団戦術を持ち込めば、いずれ戦場はもっと殺伐としたモノになってしまう筈だ。
 そうなった際に有利なのは先に準備していた方だ。だからこそアローズは今から練習しているのである。
「あれあれ! ほら、やっぱりフリーマン!」
 ステフが指さす先で、レイさんが大きく足を広げながら跳躍し、エリアから飛び出しそうなボールをつま先でトラップした。そして後ろ回し蹴りのようなキックでヨンさんにパスを送る。
「いやステフが言ってるのは『クライング・フリーマン』でしょ? まあ確かに今の動きは池上○一さんぽかったけどさ」
 むしろ飛んでるから『フライング・フリーマン』か?
「レイさんの設定は『自由な選手』で、どっちのチームにも所属してるし所属してないとも言えるやつでね。彼女はプレスには参加せず動きも制限されず常にボール保持側について、どっちのチームもボール所持時は自由に使って良いんだ。トランプゲームのジョーカーみたいなもんだね」
 トランプ、こちらの世界にはないがステフには通じるだろう。
「ほえー。なんでそんな事するんだ? ここでもレイちゃんだけ特別扱いか?」
 ステフはニヤニヤといやらしい笑みを浮かべながら言った。
「確かに特別扱いだよ。ステフの考えてるような意味じゃなくてね。レイさんはドリブルでもパスでも頭抜けていて、攻撃の要となる。だからみんなには常に彼女の位置を探す癖を付けて欲しいんだ。なんなら攻撃の時だけではなく、守備している時もね」
「いつでも捜しているぴい~♪ どっかに君の姿ぴよ~♪」
 スワッグがまた絶妙なタイミングで歌い出した。
「いつでもなのか?」
「ああ。サッカーはターン制のRPGじゃなくて、攻守の状態が定かでない上に瞬時に入れ替わるものなんだ。だから守備が成功してターンが終わりました、さあ今度は攻撃です、じゃあどう攻撃するか考えましょう……ではなくて。守備をしながら攻撃の事を用意してないといけない、ってスポーツでね」
 これは逆もまた然り、攻撃時も守備の準備をしておかないといけないという事も指すが、ステフにそこまでは説明しない。
「ふーん。しっかしレイちゃん責任重大だな」
「まあ、今の所はね」
 攻撃の構築を一人の選手の個人技やアイデアに頼る、いわゆる属人的なやり方は本当の所あまり良くない。その個人の調子に左右されるし対策はされ易いし最悪、いなくなる事もあるし。
 だが一つ、ドワーフ戦まで時間がなくて組織的な攻撃をつくるまで手が回らない。二つ、レイさんはまだ知られていないのでそう簡単に対策されない。三つ、むしろレイさん頼みだと思われるくらいがちょうど良い。以上の理由で今回は彼女におんぶだっこで行く事にしたのだ。
 それに練習などを見たところ、このやり方は上手く行きそうだ。なぜなら昨シーズンまでのエルフ代表は『固く守ってカウンター。それをスムーズに機能させる或いは引いて守る相手を崩す時は、カイヤさんのアイデア頼み』なチームだったから。
「大事な女、女と書いてひとと読ませる、なんだな」
 あの穏和で他者を和ませる性格を持ちながら、相手を欺く知性とテクニックを持つカイヤさんの事を思い出している最中にステフが言った。
「う、うん」
 ぎくり! どちらの事を言われているか分からないまま頷く。
「じゃあより一層、気合いを入れて護衛しないとな!」
 良かった、レイさんの事だ。今は心を読まれてなかったらしい。俺は少しほっとしながらため息混じりに言う。
「あーびっくりした~」
「何がだ?」
「護衛の仕事のこと、忘れてなかったんだ」
「忘れるもんか!」
 ステフは心底、心外だ! といった風に叫んだ。
「お前だってそうじゃないか?」
 何のことだよ? とは聞き返せなかった。代わりに言ったのは別の事だ。
「ここまでの説明でステフも理解できた?」
「え? ああ、まあまあな。なんでそんな事を気にするんだ?」
 あたしは選手じゃないんだぞ? とステフは続ける。
「いやさ。監督の仕事って本当に『説明して納得させる』て事が大半なんだよ。もちろん権力とか威光で無理矢理やらせるタイプもいるけどさ、本人が納得して行動する方が良いし」
 良い監督はやはり言葉に力を持っているもので――『○○語録』とか本が出てたりもする――選手を動かす事も上手い。それに俺は元名選手から監督になった、て訳でもないのでやってみせて指導する事もできない。だから尚更、『説明して納得させる』というのが大事なのだ。
「なんだまあ、苦労してんだな、お前も」
 たまにその苦労を増やす方向で暗躍してないかステフさん? と思ったが一応、同情されたみたいなので黙る。
「あ、でも『フリーマン』は違くない?」
「え? どこが?」
「だって『マン』って言ってるけどレイちゃんは男でも人間でもない」  
 おっとそこを弄られると色々と面倒だぞ? 俺一人の問題でもないし。
「じゃあなんて呼べば良いんだ?」
「うーん」
 二人して腕を組んで考え込む。ふと隣を見るとスワッグが
「君のほかに、大切なものぴーよー♪」
とあの曲のクライマックスを気持ち良さそうに歌っていた。
「いつでも捜しているんだから、『まさやん』てのはどうだ?」
「『まさやん』か……」
 ステフの提案に捜してるのと捜されているので逆じゃないか? とかそれ本当に大丈夫か? とか疑問符は浮かびまくるが他のアイデアは思い浮かばない。
「じゃあそれで行こうかな……。コードネームっぽくもあるし」

 かくしてアローズでは今後、フリーマンやフリーロールの事を『まさやん』と呼ぶことになった。
「まさやんに繋いで!」
とか
「まさやんもっと動いてボール貰って」
とかみたいに。
 あとシュートやタックルを失敗した時に
「諦めずにもう一度やろう!」
と声かけする際につい、
「ワンモアタイム! ワンモアチャンス!」
と呼びかける癖がついてしまった……。
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