D○ZNとY○UTUBEとウ○イレでしかサッカーを知らない俺が女子エルフ代表の監督に就任した訳だが

米俵猫太朗

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第十九章

早風呂早飯芸のうち

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 部屋は言った通りかなり高層階の角にあり、片方のベランダに内風呂、逆のベランダにグランドを見下ろせるバルコニーがあった。
「おお、暖かい! どうやってここまでお湯を上げているんだろ?」
 俺は荷物を置いてまず内風呂に近づき、大きなかめに満たされたお湯に手を浸した。
「エルフなら魔法、ドワーフなら機械……ゴブリンは?」
 なんとなく世界史の授業で習った、産業革命前後の児童虐待的な労働風景――狭いトンネルで少年が小さなトロッコを引っ張っている絵――が頭を過ぎったが、鉱石じゃないんだし非効率的だ。
 そもそも、人員というかゴブリン員は俺達貸し切り客アローズご一行の晩ご飯の準備に総動員されてる筈だしな。
「と、いけね! 用意しなきゃ!」
 今すぐ熱い湯に浸かって身体を伸ばしたい欲求を抑えつけ、俺は夕食ミーティングで使用する資料の準備にかかる。
 これが選手なら身体が資本だし女性でもあるしお風呂を優先するんだけど、俺は悲しき野郎で監督なのだ。そうでなくとも今回は移動に時間を奪われ作戦会議や練習の時間は少ない。万全の状態で選手たちに方針を伝えたい。 
 俺はゴブリンチームの最新の試合映像を観ながら要点をまとめる作業を開始した。

 以前の視察旅行で把握している通り、ゴブリン代表チームは狂気的なまでの攻撃志向だ。それは1部リーグに昇格しても変わらない。なにせ今季開幕戦で王者フェリダエ相手でもそれを貫き通した位だし。まあ負けたけど。
 で攻撃志向攻撃志向と言うけれどその実態はどんなものか? という話を俺達コーチ陣は選手たちへ伝え、対抗策を講じなければならない。
 まずゴブリン代表のサッカードウを観て素人でも分かるのは、
「守備陣の攻撃参加」
だ。
 攻守分担が割とハッキリしているこの異世界サッカードウにおいて、ゴブリン代表は珍しくDFも攻撃をする。ボランチに相当する位置の守備的MFもがんがんシュートを撃つし、SBはWGのように前線のサイドに現れ、攻撃に厚みを加える。例のゴブリンスイーパー、いやゴブリベロのカーリー選手も本来の仕事を放り出ししばしば最前線でフィニッシュを狙う。
 次に目立つのが
「サイド攻撃」
だ。
 ゴブリン代表の選手たちは全体的に小兵で、DFの上からヘディングを叩き込むとか手で押さえ込みながら一歩先でシュートを放つとかいったプレイは得意ではない。むろん、たまに狙わないではないが成功する事は少なく、時に跳ね返され時に守備の分厚い場所を回避してサイドへサイドへと移動していく。
 相手チームとしては
「よし、サイドへ追いやったぞ」
と一安心でもする所だが、見ると守備陣に対してゴブリンの方が圧倒的に多い。慌てて守備を一名カバーに走らせると、その外側に更にゴブリンが!
 更にそのカバーに……と繰り返す間に補充が追いつかない時が訪れ、フリーで前に走り込むゴブリンにパスが渡り、そこからゴールへまっしぐら! というのが典型的なパターンだった。
 そして三番目に……
「ノックしてもしもーシ! 監督、おるカ?」
 考え込む俺に、部屋の外から声がかかった。女将のアンさんだ。
「はーい?」
「飯の準備ができたゾ! 宴会場『艶母間エンボマ』に集合ダ!」
 おお、もうそんな時間か。
「分かりました! すぐ行きまーす!」
 宴会場は食事をとるだけでなく、大きな魔法のスクリーンで映像を見たりして作戦会議もできるようにして貰っている。女将の癖は強いが良い宿なんだよな。
「ありがとうございます。選手達はもう?」
 俺は廊下に出てアンさんに礼を言いつつ、皆の様子を訊ねる。女将も流石に屋内では狼に乗っていなかった。
「オウ! だいたい揃ってたナ!」
 ほほう。人間と違わずエルフ女性も長風呂が多いと聞いた気がするが、サッカードウの選手ともなると手早い身支度も慣れたものなのかな。ありがたい。
「道は分かるカ?」
「ええ、案内図もありますし」
 女将の問いに答えながら、ポケットに魔法の眼鏡があるのを確認する。図があっても文字が読めないと分からない可能性もあるからね。
「じゃあ行ってこイ! ワテは仕事に戻るでナ!」
「はい」
 俺達はそう言って別れ、それぞれのルートへ進んだ。

「ああ、艶母の間で『エンボマ』か。なんつー名前を宴会場につけるんだか」
 案の定、途中で道に迷った――これだけ複雑に階段と廊下が入り交じっているのだから仕方ない。条件が同じでも、自分の部屋に行く時はただ登って行くだけでいずれ着くから問題なかったのだが――俺は、館内の案内図を見て思わずそう呟いた。
「でも待てよ? ゴブリンって種族として多産だから、大地母神崇拝と言うか安産型のでっかいお母さんを神聖なモノとしてあやかっているのかもしれん」
 そう考えた俺の推測はさほど外れでもないらしく、到着した宴会場の廊下に面した壁には一面、ふくよかなゴブリン女性――たぶん――が半裸で横たわっている肖像が描かれていた。
「なんか七福神の何人かを吸収合併したみたいな空気があるなあ。ありがたやありがたや」
 俺は日本人らしくその絵に手を合わせ拝みながら艶母間の襖を開けた。

 そしてその場の風景に思わず天を仰いだ。
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