D○ZNとY○UTUBEとウ○イレでしかサッカーを知らない俺が女子エルフ代表の監督に就任した訳だが

米俵猫太朗

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第二十三章

信頼と不安と

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「出してくれ!」
 言っても叶わないだろうが、俺は監獄の冷たい檻にしがみつき外へ向かって叫んだ。
「……ふん」
 鉄の枠と同じくらい冷たい、蛇の様な目で獄吏が俺を睨み吐き捨てる。それもその筈、この牢屋番のゴルルグ族さんは見た目がほぼ蛇だ。さっきまでの入国審査官さんがかなり人間寄りだったのと対照的だ。
「お前のような人間にはそこがお似合いだ。よく冷えた床に座って破廉恥な己を悔やむが良い。おおっと!」
 そう言うと獄吏は両手を伸ばし俺の首からは翻訳アミュレットを、胸ポケットからは眼鏡を奪い取った。
「これらからは魔力値を検出しているな。没収しておこう」
 その手に首飾りがあるからか、マジックアイテムの力でまだ彼の言葉は理解できた。だがこの先、俺の言葉は通じない様になるだろう。あとそれらの魔力を感知して、誰かが助けにくる可能性もなくなる。
「待ってくれ! 違うんだ! あれは俺ではなくレ……」
 レイさんが仕向けた事だ、と口にしかけて慌てて言葉を切る。例え事実だとしても、彼女のせいにするのは大人として情けない。
「あれは……俺がキチンとしてなかったからだ……」
 そう呟いたがもう言葉は通じないし届かない。俺は床に胡座をかき、これからどうしたものか? を考える事にした。
 まずここ、牢獄について。壁も床も地味な鼠色で塗り固められ、部屋にあるのはトイレ用と思わしき穴とその周囲の背の低いついたて、そして薄い毛布だけだ。椅子も机もなく床に直接座り、眠るしかないだろう。
 大きさはワンルームマンションを一回り小さくした感じか。しかし前述の通り何もないのでかなり広く感じる。窓はなく壁の一面だけがかなり隙間の狭い鉄格子で――ゴルルグ族も収監する可能性がある事を考えたら当然だな。彼ら彼女らは非常に細い――その一画がドアになっていてそこから出入りする様になっている。食事を提供する為の小窓などはなく当然、鍵はしっかりと施錠されている。
 続いて時間だ。見える範囲に空も時計も無いが、腹の空き具合から行って今はまだ昼過ぎ。そもそもここは長期収容する施設ではないようだし、運が良ければ夜までに自由になれるかもしれない。
 ここ、ゴルルグ族の街グレートワームは社会レベルも科学レベルも高い。裁判制度なども整っているだろうし、通信技術も発達している。速やかに処分が決まって罰金を払って釈放されるか、エルフ王家からの公的通信が入って外交的圧力や手腕で解放されるか。
 まあ何と言っても罪状は『ブルマン蟲の密輸』であって、危険物や薬物の類ではない。ただの嗜好品飲み物だ。隠蔽を疑われなかったら、その場で追加の関税でも払って済んでいた可能性がある。
「うん、考えてみればそんなに深刻しんこくになる必要は無かったな」
 申告しんこくの方は必要だったけどね! と心の中でボケてみて自分がそこそこ平常心になれている事に気づく。やはり周辺を良く観察する事が冷静になる秘訣だな。
「シャマーさんなんか試合中も良く見てるもんなあ」
 俺はフィールドの外で横から見ているから俯瞰の視点で全体を眺められるが、彼女は試合のただ中にいながらDFラインとチーム全体を掌握している。あの冷静さと観察眼は見習いたい。
「試合以外でも頼りになるしなあ。アドリブ力もあるし」
 まあそのアドリブ力が悪戯方面で発揮されるのは困りどころだけど……と考えた所である事実に思い至った。
 恐らく彼女は今の俺の現状をチームと本国に報告してくれている筈だ。普通に考えれば、貰ったお土産に持ち込み申請が必要な物品があったが申告漏れがあって一時逮捕された、くらいの説明で十分だろう。
 だが相手はあのシャマーさんだ。そのアドリブ力を、事態を混乱させる方へ発揮する事を好むトリックスター道化師。彼女がそんな簡単な報告で満足するとは思えない。きっと面白おかしい方向に話を膨らませて――俺が無修正のポルノ雑誌を持ち込もうとしたからとか、税関職員の女性に色目を使ったとか――言いふらすに違いない。
「しまった!」
 彼女だけが頼りだったとは言え、流石に信頼し過ぎた。自由と全権を与えて解き放って良い存在ではなかった。
「すみませーん! 誰かいませんか!?」
 俺は檻をガンガンと叩いて声を張り上げた。手遅れかもしれないが、早々にシャマーさんを呼び出して釘を刺しておく必要がある!
「おーーーい! 誰かーーー!」
 言葉は通じないが、大声で呼びかければ流石に様子くらいは見に来るだろう。そう信じて騒いで数分、思惑通り二本……もとい二名のゴルルグ族がやってきた。
『騒がしいぞ! いったいなんなんだ!?』
『あ、こいつ! 女物の下着とブルマン蟲を密輸しようとしたヤツですぜ!』
『しかも下着は連れてた女房のとは違うブツで!』
 二名、と言って良かったのか。現れたのは両方とも体色は緑、全身に鱗が生えたゴルルグ族としてはオーソドックスな見た目ではあったが、片方は一つの身体から二つの頭が生えている、アカリさんサオリさんと似たタイプの蛇人間だった。
「おお、来てくれてありがとうございます! ところで弁護士に電話……なんてまあ、あるわけないんですけど、何か外部と連絡を取る権利とか面談の希望者とか無いんですか?」
 俺は言葉が通じないなりに、誰かに呼びかけるポーズや誰かが歩いてきて自分へ会うジェスチャーをやって見せた。
『コイツは何を言おうとしているんだ?』
『ふむふむ……。何かを遠くに伝えると、誰かがやって来る、か?』
『分かった! 今回の件が広まると、女房と浮気相手が鉢合わせしてしまう! って意味じゃないっすか?』
 途端、話し合っていたゴルルグ族たちが一斉に笑い出した。否、たぶん笑い出したんだと思う。
「いや笑い事じゃなくてですね! ちょっと確認だけでもしてくれませんか?」
 俺は真剣みを出すために泣きそうな顔をして、彼らの後ろを指さした。
『はっはっは! 必死だな!』
『連れていたのは利発そうなエルフでしたけどね?』
『じゃあそれが愛人? ってやつで女房の方が怖いんだろうな!』
 それでも三つの蛇頭はしばらく笑いながら話し合っていたが、やがて一つが安心しろ、と言うように俺の肩を叩いた。
『まあまあ。来たら早めに教えてやるよ!』
『普段から両方を公平に愛してやればいいんだよ!』
『いやでも人間って俺たちみたいに分かれてなくて、アレが一本しか無いらしいぜ!』
 たぶんではあるが優しい顔と声をかけてゴルルグ族は去っていった。その身振りだと何か確認して伝えるとか、両天秤のバランスを上手く保つとかを意味しているようだ。もしかしたら要望が伝わったのかもしれない。 
 俺はひとまず安心して、牢屋の床に座り直した。その後、思わぬ訪問者を迎える事になるとも知らずに……。
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