D○ZNとY○UTUBEとウ○イレでしかサッカーを知らない俺が女子エルフ代表の監督に就任した訳だが

米俵猫太朗

文字の大きさ
447 / 700
第二十五章

乱入の代償

しおりを挟む
「ゴルルグ族代表5番、得点機会の阻止でイエローカード。ペナルティキックをエルフ代表に与えます。エルフ代表監督、許可を得ないピッチへの乱入と治療行為によりレッドカード。退場です」
 呆然としている俺に、ベノワさんが優しい声で言った。いやそんな内容でドラゴンの話し方で、優しいとかどうとか分かるのか? という感じだが確かに優しさを受け取ったのだ。
「それはそれとして治療行為は認めます。スタッフをお呼びなさい。彼女の様子はどうです? やはり漏ら……」
「あ、いえ、大丈夫です。リーシャさん、あとちょっとだけ這ってピッチの外へ行こうか? 腰でこれを巻こうね?」
 俺は審判さんに適当に返し、ジェスチャーでリーシャさんに問いかける。反則タックルを喰らった時の衝撃から復活した彼女は俺に目で返事し、片手で腰の布を抑え片手を地面に置きながらエンドラインの向こうまで四つん這い、いや三つん這いで進んで行った。
『監督、リーシャはどうだ?』
「ショーキチ殿! どういう状況ですか!?」
 ベノワさんの身振りを受けてから駆けてきたザックコーチとナリンさんがその場へ到着してそれぞれに問う。
「プレイは続行不可能ですけど、大惨事ではないです」
 引っ張っても仕方ないのですぐに正直に伝える。
「つまり漏らしてないです。でもオムツの吸水素材が破けて飛び散って、なんともグチャグチャで。引き上げるしかないですね」
 俺がそう伝えるとナリンさんは素早くザックコーチに通訳しつつ、疑問の表情を浮かべた。あ、彼女たちには言ってなかったなかな?
「えっと、ルーナさんのアイデアで特殊なオムツ改造ナプキンを念のために穿いていたんですよ。でタックルを喰らった際に、それが破裂してパンツの中からそとから……」
 俺は布を持ち上げた時に目にした様子を思い出しながら言った。排泄物にしてはやけに綺麗で臭いもない軟体物が、リーシャさんの太股あたりに垂れている風景を、だ。
『コレがクッションになったから痛みはそれほどなんだけど……気持ち悪くて無理……』
 リーシャさんがその気の強そうな眉を顰めて何か言った。恐らくだが、珍しく弱音を吐いているのだろう。森の奥深くで獲物を追う時は垂れ流しながら狩りをするハンターも、スタジアムで下腹部に謎の素材を張り付けてサッカードウを続けるのは難しいようだ。
「それと、俺も退場です。指示は……出したらダメみたいです。すみません、後はお任せします」
 続けるのが難しいと言えば、俺も退場を喰らって指揮をとり続けるのは無理だった。しかも審判さんが近くで目を光らせており、この場で何か助言を残すのも許されない様だ。
「そんな! 無体であります! 本来なら自分たちが……」
 ナリンさんが悔しそうに呟く。彼女の言う通りフィールドの選手がそっち方面の意味で危険を迎えたら、ナリンさんかニャイアーコーチが飛び出す予定であった。しかしナリンさんはザックコーチを抑え、ニャイアーコーチはエルエルを呼びに行って帰ってきた所だった。俺が行くしかない状況だったのだ。
「はい、行きますよー」
 ナリンさんには、審判さんへの抗議も俺とのやりとりもさせるわけにはいかない。俺は大袈裟に宣言しながら、リーシャさんと共にピッチの外周を回ってコンコースへ向かった。
 恐らくPKで逆転だし、リーシャさんの代わりにエルエルが入る。そうすれば守備固めで逃げきれる筈だ。そう予想した俺は演技ではなく本気の笑顔でスタッフと別れの挨拶をかわしピッチを後にした。

 控え選手用の別室で待っていたユイノさんは、普段のノンビリした性格からは考えられない程の暗い顔をしていた。
「大丈夫ですよ、リーシャさんはオムツが破れただけで」
 そう言えば親友想いであるのも彼女の特徴の一つだったな、と思いながら俺は控えGKに声をかける。ここはもうピッチから遠いので、魔法のアミュレットが俺の言葉を通訳して伝えてくれた筈だ。
「監督、それがね……」
 安心させるニュアンスが伝わってなかったのか、それに応えるユイノさんの表情は曇ったままだった。
「どうしたのユイノ?」
「PK、リストさんが失敗しちゃった」
 リーシャさんの問いにユイノさんが簡潔に答える。
「えっ、嘘でしょ!? ああっ、せめて私が蹴ってから交代すれば良かった……!」
「リーシャさんそれは無理でしょ!? いやそれよりユイノさん、どういう状況で?」
 悔しそうに壁を叩いてそう言うリーシャさんにツッコミつつ、俺はユイノさんに説明を求めた。因みに状況的に無理なのは当然だが、
「ファウルを受けた選手はそれで得たPKを蹴らない」
という取り決め――ファウルを受けた選手は冷静さを失いがちだし、身体の何処かを痛めている事もある。故に失敗する可能性があるので、できるだけ蹴らしたくない――もチームにはあるので、このFWリーシャさんはどのみちPKを蹴れなかったのだが。
「キッカーはすんなりリストさんに決まって、気合い十分って感じだったんだけど……。あ、あっちの部屋の魔法板がもいっかい、リプレイ流すかもしれない。一緒に見よ?」
 ユイノさんは説明を始めたが、早々に放棄して俺たちに自分の目で確かめる事を求めた。なんだ? 何か言い難い事でもあったか?
「じゃあ。リーシャさん、まだ大丈夫?」
「うん。見てから着替える」
 俺はリーシャさんが気持ち悪さにまだ耐えられるか聞いたが、彼女は気丈にも俺の心配を一蹴した。それならば口下手なユイノさんから詳細を聞くより見る方が良かろう、と監督もFWも納得し、俺たち三人は隣の部屋へ移動する事となった……。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

入れ替わり夫婦

廣瀬純七
ファンタジー
モニターで送られてきた性別交換クリームで入れ替わった新婚夫婦の話

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

処理中です...